なぜ「メロディ信号」は減った? 紛らわしさ防止で擬音に変化 今後はスマホ通知も増えるか

写真拡大 (全2枚)

「通りゃんせ信号」絶滅の危機! なぜ減少?

 歩行者側の信号が青になると「通りゃんせ」や「故郷の空」などの目の不自由な人などに対して渡るタイミングを促す曲(メロディ)が流れるのを聞いたことがある人もいるかもしれません。
 
 しかし最近ではメロディではなく「ピヨピヨ」や「カッコー」といった擬音を流す信号機に変わりつつあるようですが、なぜなのでしょうか。

「メロディ式信号機」減少している? (写真はイメージ)

 歩行者側の信号が青になったときに流れるメロディの正式名称は、「視覚障害者用付加装置」といいます。

【画像】「UFO信号」ってなに? 各地に存在するへんてこな信号機の画像を見る(15枚)

 これは視覚障がいを持つ人が青であることに気づき、横断歩道を渡りやすくするために信号機に付属する装置から流れています。

 警察庁のホームページによると、この視覚障害者用付加装置が整備された音響信号機の設置場所は、視覚障がいを持つ人の利用頻度が高い、盲学校やリハビリテーションセンター、役所など公共施設を含む地域に優先的に設置されています。

 設置がはじまった当初は、さまざまな音の種類が存在したようですが、利用者から全国で統一してほしいとの要望があり、1975年に有識者や視覚障がい者団体などからなる委員会で検討がおこなわれました。

 さらにアンケート調査などもおこなった結果、「通りゃんせ」と「故郷の空」、さらに「ピヨピヨ」「カッコー」の擬音式が選ばれたといいます。

 そんな音響信号機ですが、2022年3月末現在、全国で2万838基(メロディ式307基・擬音式2万531基)が設置されており、約99%が擬音式(警察庁調べ)。

 2017年3月の同データでは、全国で約1万9500基(メロディ式約340基・擬音式約1万9100基)設置されていたことから、音響信号機は増加傾向にあるものの、メロディ式は減少していることがわかります。

 では、なぜ「通りゃんせ」や「故郷の空」などのメロディ式が減少しているのでしょうか。

 日本身体障害者団体連合会は過去に、「音響式信号機への要望として『異種鳴き交わし方式はわかりやすい』や『音響信号機の音について統一してもらいたい』、『擬音式に統一することは賛成である』といった意見が寄せられています」と公表。

 さらに警察庁は2003年10月、「道路横断時の方向性が明確で、誘導性も高い擬音式の『異種鳴き交わし方式』の整備を進める」という内容の通達を出しています。

 これらの意見や通達により、メロディ式は徐々に姿を消し、「ピヨピヨ」・「カッコー」の擬音式が主流となりつつあります。

改良を続ける音響信号 「ハイテク技術」の登場で「廃止」の可能性も

 数を減らしつつある「通りゃんせ」や「故郷の空」などのメロディ式信号機ですが、代わりとなる「異種鳴き交わし方式」とは、どのようなものなのでしょうか。

 異種鳴き交わし方式は、視覚障がいのある人をより安全に誘導するために、交差点の両岸で違う種類の音「ピヨ」と「ピヨピヨ」、「カッコー」「カカッコー」など、音の時間をずらして鳴らす方式です。

 この方式のメリットについて、信号機メーカーの日本信号の担当者は、「視覚障がいを持つ人は聴覚が発達しているため、異種鳴き交わし方式の音の鳴り方と鳴るタイミングの違いから進行方向を把握でき、横断歩道を渡りやすくなります」と話します。

 メロディ式信号機が少なくなった背景には、このような音響信号機の改良がなされた結果だともいえます。

通信技術を用いた交通弱者向け「高度化PICS」も登場 「音響信号機」の代替手段となるか

 しかし一方で、先出の担当者は音響信号機について「住宅密集地などで夜間などは、メロディ式であっても擬音式でも、『うるさい』といったクレームは変わらずあります」と話します。

 メロディ式も擬音式も「音が鳴る信号機」であることに変わりはなく、装置が設置された交差点周辺に済む住民からすると、青になるたびに音がなることを気にする意見もあるようです。

 このこともあり、音響信号機では夜間は音を鳴らすのをやめたり、必要なときだけ鳴るように押しボタン式にするなどの対策が取られています。

 さらに近年では、音響信号機の代わりとなる技術も登場しています。

 警察庁によれば、2020年度から歩行者信号の情報をBluetoothなどの通信によりスマートフォンと接続し、信号の状態を確認できる「高度化PICS」という技術の運用を開始。

 日本信号は高度化PICSに対応した日本初のスマートフォンアプリ「信GO!」を提供開始しています。

 このアプリでは、信号が青か赤かを判断することができるほか、押しボタン式信号では遠隔で操作できたり、青の時間を延長できる機能も備えています。

 先出の日本信号の担当者は高度化PICSについて「今後は代替手段となるかもしれません」と話しています。

 騒音問題が生じる音響信号機と比べて、さらに多様な機能を持つ高度化PICS技術が普及していけば、メロディ式や擬音式を問わず、音響信号機自体が消滅していく可能性もあるかもしれません。

※ ※ ※

 なお、2003年以前に設置された音響信号機では、装置の更新がされていなければメロディ式が残っている可能性もあります。

 2023年もまだ、「通りゃんせ」や「故郷の空」を聞きながら、横断歩道を渡れるかもしれません。