個性的なカラバリと洗練されたデザインが特徴の富士通「LIFEBOOK CH」シリーズ。その2022年冬モデルが12月中旬に発売した。従来モデルで好評だった部分はそのままにCPUやディスプレイなどの基本性能をブラッシュアップして、より使いやすい製品に進化している。

店頭向けにはCore i5-1240P搭載の「LIFEBOOK CH75/G3」、Core i7-1260P搭載の「LIFEBOOK CH90/G3」という2つのモデルを用意するが、今回はLIFEBOOK CH90/G3を使って外観や使い勝手、パフォーマンスなどを詳しく紹介していこう。

富士通クライアントコンピューティングの「LIFEBOOK CH」シリーズ。今回は写真のLIFEBOOK CH90/G3を試していく

13.3型モバイルPCに新色クラウドブルーが登場

富士通のLIFEBOOK CHシリーズは、13.3型ディスプレイを搭載しながら1kg前後の重さを実現した薄型軽量モバイルノートPCだ。

従来モデルはPCとしては珍しいカーキやダークシルバー、ベージュゴールド、モカブラウンなどの個性的なカラバリで注目を集めたが、2022年冬モデルでは、そのうちカーキとダークシルバーが省かれ、代わりに新色のクラウドブルーが追加された。

新しいクラウドブルーは、その名の通り淡い水色と明るいグレーが合わさったような独特の色合いが特徴。冷たさと温かさ、硬さと柔らかさといった相反する質感が同居しているような不思議な佇まいが印象的だ。

新色クラウドブルーは、淡い色のためビジネスシーンで使ってもあまり違和感はない。スーツにもジーンズにも合わせやすく、幅広いシーンで活躍しそうだ

天板や底面にはマグネシウム合金が使用されており、筐体の軽さと剛性の高さを両立している。本体サイズは幅298×奥行き210×高さ17.5mmで、質量は約998g。後述するように従来より画面の情報量が縦に少し増えたにもかかわらず、前モデルと変わらないサイズ感で外出先などにも気軽に持ち出して使用することが可能だ。

天板と底面の素材はマグネシウム合金が採用されており質感が高いのも魅力的

底面中央には滑り止めのゴム脚(バー)を搭載。ネジ穴は少なく、すっきりとした印象だ

インタフェースは前モデルとほぼ同じで、本体左側面にはHDMI出力端子とThunderbolt 4 USB4(Gen3)Type-C端子、マイク・ラインイン・ヘッドホン・ラインアウト・ヘッドセット兼用端子が、本体右側面にはThunderbolt 4 USB4(Gen3)Type-C端子とUSB 3.2 Type-A端子が搭載されている。

前モデルはHDMI端子が出力だけでなく入力にも対応していたが、新モデルでは出力のみとなったのは少々残念。なお、Thunderbolt 4端子はいずれもUSB Power DeliveryとDisplayPort Alternate Modeに対応しており、市販のUSB充電器やモバイルバッテリーで本体を充電したり、外部ディスプレイに映像を出力したりできる。

本体左側面にはHDMI出力端子とThunderbolt 4 USB4(Gen3)Type-C端子、マイク・ラインイン・ヘッドホン・ラインアウト・ヘッドセット兼用端子が搭載されている

本体右側面にはThunderbolt 4 USB4(Gen3)Type-C端子とUSB 3.2 Type-A端子が搭載されている

モバイルバッテリーで本体を充電できるのは便利

付属のACアダプターは65W出力のもの。市販のUSB充電器も65W以上の出力なら、本体を使用しながら同時に充電することが可能。バッテリー駆動時間が約19.5時間と長いのも魅力的

ディスプレイやタッチパッドがより使いやすく

LIFEBOOK CHの画面サイズは従来と同じ13.3型だが、アスペクト比が16:9から16:10に変更されている。解像度もフルHD(1,920×1,080ドット)からWUXGA(1,920×1,200ドット)となり、縦方向の情報量が少しアップ。これによって作業スペースが広がり、縦長の文書や写真の編集がしやすくなった。

13.3型WUXGA(1920×1200)解像度の液晶ディスプレイを搭載している

Webページも従来だとタスクバーで隠れてしまう部分まで表示されるため、若干ではあるがスクロールの手間が省けてページの内容を把握しやすくなっている。

液晶パネルは広視野角で色再現性も高く、写真や映像を臨場感たっぷりに再現することが可能。微妙な色の違いも見分けやすく、写真の補正や加工などのクリエイティブ用途でも使いやすく感じた。

ちなみに従来モデルはディスプレイの左右と上部ベゼルが細い3辺狭額だったが、新モデルは下部ベゼルも細い4辺狭額になっている。それにともない下部ベゼルにあった「FUJITSU」のロゴが省かれ、見た目にもかなりスッキリとした印象になった。

キーボードは従来同様にかな刻印のないシンプルで美しいデザイン。キーピッチは約19mm、キーストロークも約1.7mmと余裕があり、変則的なサイズのキーもないためタイピングは非常にしやすい。カーソルキーの配置に段差がついていて、他のキーと区別しやすいのも好印象だ。

ディスプレイは水平に近い角度まで開けるようになり、膝の上に置いて使うときでも画面を見やすい向きに調節しやすくなった。打ち合わせなどで向かい合った相手に画面を見せたいときなどにも役立ちそうだ

キーボード面はアルマイト処理をしたアルミニウムが採用されており、剛性はかなり高い。キーを押したときのたわみも少なく使っていて安心感があった。

メーカーによるとEnterキーやShiftキー、スペースキーなどの端の方にある特殊キーは指の力に合わせて文字キーなどに比べ少し軽めに調整されているとのこと。実際に使っていても手指が疲れにくいのは事実で、長時間の文字入力も快適に行えた。

キーボードは標準的なJIS配列。キーピッチが約19mm、キーストロークが約1.7mmありタイピングしやすい。かな刻印が省かれ、キーの色が本体カラーと統一された美しいデザインが印象的。クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載する

キーボード奥にある電源ボタンは、今回のモデルよりWindows Hello対応の指紋センサーが内蔵され、事前に指紋を登録しておけばパスワードを入力せず指ひとつでログインできるようになった。

従来モデルの顔認証も便利だが、外出先ではまだまだマスクが必要となるシーンも多いので、指紋認証対応はありがたいポイントだ。

電源ボタンには、Windows Hello対応の指紋センサーが内蔵されている

タッチパッドは、従来のクリックボタンが独立したタイプから、クリックボタン一体型に変更されている。それによって操作スペースが広がり、スクロールやジェスチャーなどがやりやすくなった。

このほか、Dolby Atmos対応のステレオスピーカーやHD解像度で撮影できる約92万画素のWebカメラなどが搭載されており、音楽鑑賞や動画視聴、オンライン会議などに使用できる。スマホの音楽データをBluetoothで飛ばして本機のスピーカーで再生できる「スマホ音楽再生」や、AIで顔の肌質や大きさを補正してくれる「Umore」など、プリインストールアプリも充実している。

iPhoneやAndroidスマホの音楽データをBluetoothで飛ばして本機のスピーカーで再生できる「スマホ音楽再生」の画面

顔の肌質や大きさを補正してくれるAI メイクアップアプリ「Umore」もプリインストールされている

12コア16スレッドの第12世代Coreプロセッサで性能アップ

モバイル向けの第12世代Coreプロセッサは、プロセッサー・ベース電力が9Wまたは15Wの「Uシリーズ」と、28Wの「Pシリーズ」の2種類あり、薄型ノートPCの場合はCore i7-1260Uなどの末尾に「U」がつくUシリーズが採用されることが多い。Uシリーズは省電力な反面、Pシリーズに比べてコア数や性能が抑えられている。

LIFEBOOK CH90/G3の場合は、薄型軽量であるにもかかわらずPシリーズの第12世代のCore i7-1260Pプロセッサを採用していることが特徴。同CPUは高性能なPコアが4つ、高効率なEコアが8つ搭載された12コア16スレッドのプロセッサーで、コア数の多さから推測される通りマルチスレッド性能が非常に高い。複数のアプリを同時に実行するマルチタスクや動画のエンコードなどはとくに快適に行えるはずだ。

このほか、グラフィックスはCPU内蔵のIntel Iris Xeグラフィックスで、メモリは16GB(デュアルチャネル対応 LPDDR5-4800)、ストレージは512GBのSSD(PCI Gen4×4)という構成になっている。CPUに合わせてメモリやSSDも高速な規格が採用されており、足回りがしっかり強化されているのがわかる。

そこで、これらのパフォーマンスをチェックするため、「CINEBENCH R23」「PCMark 10」「CrystalDiskMark」などのベンチマークソフトでスコアを測ってみることにした。

まず、CPUの性能を測る「CINEBENCH R23」は、次の結果になった。

CINEBENCH R23の結果

やはりコア数が多いこともあってマルチコアのスコアが非常に高く、前モデルからは倍近くアップしている。シングルコアのスコアも1〜2割向上しており、かなり高性能。マルチスレッド処理に最適化されていないアプリもサクサク快適に動作しそうだ。

続いて、PCの総合的なパフォーマンスをチェックするため「PCMark 10」を実行してみた。

PCMARK 10の結果

快適に動作する目安は、基本性能を示すEssentialsが4100、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivityが4500、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationが3450となっているが、本製品はいずれも大きく超えている。普段使いはもちろんのこと、画像編集や映像編集などもある程度快適に行えることがわかる。

次に、ゲーム系のベンチマークソフトも試してみた。

ドラゴンクエストX ベンチマークソフトの結果

CPU統合型のグラフィックスのため重いゲームをプレイするのには向かないが、ドラゴンクエストX程度の軽いゲームであれば、フルHD解像度でもそこそこ快適にプレイできるのがわかる。

最後に、「CrystalDiskMark」でストレージの性能も測ってみた。

CrystalDiskMarkの結果

シーケンシャルリードが3600MB/s前後と非常に高速。PCI Gen4対応のSSDだともっと速度の出るものもあるが、本機のSSDでも一般的な用途には十分過ぎる性能だ。

据え置きでもモバイルでも使いやすいノートPC

薄型軽量ボディに第12世代Coreプロセッサーや13.3型WUXGA液晶ディスプレイなどを搭載した富士通のLIFEBOOK CHシリーズ。デザインやカラバリに目が行きがちだが、そのパフォーマンスはかなりハイレベルだ。

モバイル用途はもちろんだが、メインマシンとして据え置きで使っても十分満足できる性能を持っている。個性的なノートPCを探している人や、気軽に持ち運べる高性能なノートPCを探している人には、ぜひ注目してほしい製品だ。

洗練されたデザインと充実した基本性能が魅力的なLIFEBOOK CH