本格的に老後を考える50代。目の前の家計のことで頭がいっぱいで、将来必要な教育費や老後資金のことまで手が回らず、不安を抱えている人も多いのでは? そこでファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんに、悩みがちなポイントについて教えてもらいました。

<50代>学費の終わりが見え、老後資金にシフトチェンジする時期

「大学の学費は、少なく見積もっても子ども2人で収入の40パーセント、1人でも20〜30パーセントはかかる」と畠中さん。この時期は月の収支が赤字になり、貯蓄できないのは仕方ないと割りきって。ボーナスなども活用し、年間収支が赤字にならなければOKと考えるのもひとつの手。

教育費の終わりが見えたら、次は老後準備の始まりです。

「頭をきり替え、“年金暮らし”を意識しましょう。今から家計を少しずつ縮小していけば、老後を乗りきるやりくり力が身につきます。子どもが独立すれば手厚い死亡保障は必要なくなるので、保険を見直し、固定費を削減するのもおすすめです」

●学費を払っても年間収支が赤字にならないように!

50代の家計を圧迫する教育費。とくに、子どもの大学の学費があるうちは貯蓄はできないと思ってOK。ただし生活費の赤字は見逃しNG。年間収支が赤字にならないよう引き締めて。

●手厚い死亡保障は不要になるタイミング。保険は保障額と内容の見直しを

末っ子が高校生以上になったら、親の死亡保障額は減額を検討。貯蓄が十分あり、会社員の場合300〜500万円程度あればOK。自営業家庭は1000〜1500万円程度が目安に。

教えて!畠中さん「定年後に赤字家計になりそう…」

読者が畠中さんにお金の悩みを相談しました。

【相談者:山本紗世さん(仮名・埼玉県・50歳)】

夫(50歳)とすでに独立した長女(23歳)、私立文系大学に今年入学した長男(19歳)の4人暮らし。紗世さんは週3日アルバイト。夫は役職に就いていて収入に恵まれているが、約5年後には役職定年を迎え、収入が半分程度になる見込み。夫の財形貯蓄やiDeCoに加え、最近は紗世さん自身もつみたてNISAを始め、老後を見据えた準備をしている。

●老後破産のリスクをなくすには、どうすれば?

子どもの学費は学資保険と貯蓄でまかないながら、老後に備えて夫婦で毎月9万円貯蓄しているという50代夫婦の山本さん。

「学費があるなかで、天引き貯金を続けられているのはすばらしい!」と、畠中さんも感心します。ただ、気をつけたいのは「ゆとりがある世帯ほど、収入が減ったときに家計を圧縮するのが難しい」という点。

山本さんも「5年後、56歳で夫が役職定年を迎えると、給料もボーナスも減ると聞いています」と老後の不安を口にします。役職定年になると収入が4〜5割減ることを覚悟した方がいいとか。

「収入が減る前に、住宅ローンを繰り上げ返済し、残債を減らしておきましょう」と畠中さん。また、今はボーナスでうまく補填(ほてん)できている外食費やレジャー費も要チェック。

「ボーナスから補填するのではなく、月の予算に組み込んで赤字にならないようやりくりを。学費が終わったら、“年金暮らしの予行演習”を始めると老後破産を防げます」

●チェック1:手元の貯金が減るのが不安で繰り上げ返済にためらいがある

「役職定年でボーナスが減る前に住宅ローンをしっかり繰り上げ返済し、残債を減らして確実に定年までに返済できる状況をつくった方がいいですよ」と畠中さん。住居費の負担を減らせれば、収入が減っても家計へのダメージは最小限に。

●チェック2:外食とレジャー費のたりない分はボーナスから補填

年金暮らしでは、ボーナスがなくなるのが大きな変化。畠中さんいわく「50代になったら、年金生活を想定した暮らしにシフトし、“ボーナスからの補填”は卒業しましょう」

●チェック3:子どもの医療保険は1人当たり1500円の共済

子どもに代わり、医療保険を用意するのは親心。

「ただし、就職して3年ぐらいたち、月々の収支もわかる時期になったら、保険の契約や支払いは子どもが行うよう促して」(畠中さん)

●チェック4:やや高めの食費。年金暮らしを見据えて圧縮したい

「仕事がある日はとくに、冷凍食品に頼りがち。つくりおきやまとめ買いをした方がいいのかも」と山本さん。

「収入から考えると許容範囲ですが、年金暮らしの準備として、少しずつ減らしていきましょう」(畠中さん)

●チェック5:iDeCoやつみたてNISAで老後資金を貯蓄

夫は財形貯蓄やiDeCoで月5万円を積み立て、紗世さんはバイト代4万円をつみたてNISAに回している。「節税効果に着目し、制度をしっかり活用しているのがすばらしい」と畠中さん。給与から天引きという点も高評価。

老後に備える50代のQ&A

本格的に老後を考えはじめる50代だからこそ、悩みがちなポイントを解決!

●Q:住宅ローンの繰り上げ返済と老後資金の貯蓄、優先すべきは?

→A:遅くとも65歳までに完済できるようなバランスで計画を

繰り上げ返済で負担を減らすのはいいことですが、定年退職前の完済を無理に目指すのはおすすめできません。住宅ローンがなくなると節約の意欲をなくしがちですし、老後資金を減らしてしまうからです。繰り上げ返済を活用し、再雇用で収入が下がっても無理なく払える金額まで月々の負担を減らして、65歳までに確実に払い終えるのがベスト。

●Q:医療保険の見直しはどうすればいい?

→A:終身タイプ加入なら、そのまま継続がベター

加入している医療保険が終身タイプの場合は、そのまま継続すればOK。「60歳で満期を迎える」など高齢期に同じ条件で継続できない場合は、終身タイプの医療保険に入り直すことを検討して。ただし、年齢が高くなってから加入し直すと保険料はアップします。入院、手術、先進医療のみのシンプルな保障に絞るのがポイントです。

●Q:定年後、夫のこづかいを減額する“うまい方法”は?

→A:300万円をまとめて渡し、以降のこづかいはナシに

「収入が減ったから」という理由でこづかいを減らすと夫婦仲がぎくしゃくしがち。夫のプライドを傷つけることなく減額するには、退職金から300万円程度を渡し、「定年後のこづかいはここからやりくりしてね」と伝えましょう。まとまったお金があることで心の余裕が生まれ、月々のこづかいがなくなることを受け入れやすくなります。