親子の確執を綴った著書が話題を呼んだ青木さやかさんが、母親問題の作品を多く手がける漫画家・田房永子さんと初の対談。家族との距離感や、自分の心と体との向き合い方など、「40代をしなやかにポジティブに過ごすヒント」について大いに語っていただきました。

青木さやかさん×田房永子さんのスペシャル対談

田房永子さん(以下、田房):私、青木さんが『徹子の部屋』でお母さんとの関係をお話しされているのを観て、泣いてしまったことがあるんです。その頃、親との関係について語るときは自分の立ち位置をはっきりさせないといけないのかな、と迷っていたんですね。考えも親との関係もどんどん変化していくけれど、読者や視聴者は「絶縁中です」「親が嫌いなら嫌いでいい」ときっぱり言うことを求めているんじゃないかと思っていて。

でも青木さんは「母のことは好きだけど拒絶したい気持ちもある」と迷いを迷いのまま話していて、とても感激しました。

青木さやかさん(以下、青木):ありがとうございます。私も、立ち位置をはっきりさせないといけないとずっと思っていました。でも難しいんですよね。タレントであると同時に“一個人”でもあって、変化していくわけですから。だから、あるときからそれをやめて、本当にそのとき思っていることを言うようにしたんです。

結果、テレビでは非常に使い勝手の悪いタレントになったと思いますが(笑)。そういうふうに、年齢を重ねて我慢できることとできないことがはっきりしてきたような感じがありますね。

●本当のことしか言わない、と決めたらラクになりました

田房:今は母と連絡もとるし、会おうと思えば会えるようになりました。仲よくするのはやっぱりエネルギーがいるので年に何度かしか会わないですが、そういうふうに気持ちが変わったのは時間をかけたからだと感じてます。

30代は親への恨みと怒りで苦しかったのが、40代になってその感情を認めてあげられるようになったことで着実に変わったな、と。

青木:田房さんの本を読んでいると、親のどういう部分がイヤでなににストレスを感じているのか、とてもよく理解していらっしゃいますよね。私はそれをあまりわかっていないまま来てしまったんです。だから今、もう少し自分を知ろうとしています。私はどういう性格でどんなことが嫌いで、どういう場合にコミュニケーションがうまくいかなくなるのかを学び始めたら、少し楽になってきました。

●世間とのズレを調整するのが20代まで。40代は自分とのズレを見直す時期

田房:最近、上の世代の方の働き方が気になるようになってきました。というのも40代に入って「私はもう中堅のポジションなんだ」と急に意識するようになったんですね。
30代までは、20代の新人の頃と変わらず「みんなから吸収しなきゃ」という感覚でいたんです。でも最近、20代の同業の方とやりとりをしていて、教えを乞われる側なんだと気づいて衝撃を受けました。青木さんもそういうことはありますか?

青木:すごくわかります! 30代は「わからないから教えてください」がギリギリ通用したけれど、40代も同じ気持ちでいると周りがぽかんとしてしまうんですよね。現場でいちばん年上のときもありますし、若手だなんてもう絶対言えないなって。

田房:多分、自分では堂々としているくらいがちょうどいいんでしょうね。そうすると周囲からは落ち着いて見えるんだろうなと。

青木:そうなんですよね。「ちょっとスベっちゃってすみません」みたいに振る舞うと、みんなが反応に困ってしまう(笑)。年齢と人づき合いでいうと、私は40代になってから、だれに対しても敬語で話そうと決めたんです。親しくなると世話を焼きたくなる性格なんですが、好きでやっていたはずなのに、「感謝してくれない!」と爆発しがちだったんですね。母が亡くなって私自身も病を得たときに、自分を180度変えて生き直しをしようと思って。人との距離を適切に保つために、娘にも後輩にも基本的に敬語で話すようになりました。

発売中のESSE2月号では、ほかにも青木さん、田房さんが考える「40代でやるべきこと」や読者からの悩み相談まで、たっぷり伺っています。ぜひご覧くださいね。