年齢を重ねるにつれ、食事に気をつかうようになったという方も多いのでは? 生活情報誌のライターとして活動するやまざきさちこさんは、昨年脳出血を経験したことで食生活など見直したそうです。そこで今回は、その経験から学んだ「無理しない減塩法」についてつづっていただきました。

薄味ではものたりない!引いたら“たす”でおいしく減塩

「私は元気」「血圧は正常範囲」…。そんな思い込みから昨年、脳出血を起こしてようやく自覚した高血圧症。40〜50代の更年期に急増すると知り、“高めの血圧”を甘く見ていたと反省しきりです。

高血圧の予防改善には、毎日の食生活の「減塩」が必須と医師にもいわれました。面倒くさがりで、食べることが好き。無理なく習慣化するために、私なりに試している減塩の工夫をお伝えします。

●あっさりした味つけを好むようになったけれど…

厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、成人の1日あたりの食塩摂取目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。ただし、高血圧の予防や改善には成人男女ともに、日本高血圧学会では1日6g未満、世界保健機関(WHO)では1日5g未満という目標を掲げ、厚生労働省も生活習慣病の予防には「1日6g未満」を推奨しています(※1)。

年齢とともに、あっさりした味つけを好むようになったとはいえ、料理をするときの感覚でいえば、1日で小さじ1ほどの食塩量は「これだけ?」というのが本音です。実際には食塩以外にも塩分を含む調味料や加工品はたくさんあって、外食も入れたら計量なんて無理!

とはいえ、日本人の食塩摂取量の平均は男性10.9g、女性9.3g(※2)。意識しないと、塩分過多になりがちなのは否めません。

●だし食材やスパイスをたして、コクと風味をアップ

まずはシンプルに、料理の塩分を含む調味料をいつもの半分くらいまで減らしたのですが、どの料理もあっさりしすぎてものたりない…! そこで、材料に「だしがよく出る食材」を積極的に使うようにしました。

肉や魚介類はもちろん、根菜やキノコ、干し野菜などの乾物はその代表です。だしのうま味で、薄味でもしっかりコクが出ます。

さらに、昨今ブームの「スパイス」も活用しています。炒めものによく使うのは、クミンやコリアンダー、花椒、粉山椒、バジルなど。好みはありますが、独特の香りや辛味、苦味、清涼感で、減塩しても料理の風味がアップします。

とくに、便利でお得なのが「カレー粉」。数十種のスパイスがブレンドされ、減塩カレーをつくれるほか、いつもの料理にもサッと混ぜられます。すべてカレー風味にはなりますが、複雑な香りと辛さで味が引き締まり、満足感も出ますよ。

●「酸味」は減塩の強い味方。カリウム補給に海藻も常備

同じく、減塩でぼやけた味は「酸味」をたすと、さっぱりとしてほのかな塩けも引き立ちます。和食にはしょうゆに合う米酢やレモン、ユズなどの絞り汁を。中華には真っ黒な鎮江香酢(ちんこうこうず)、洋食にはフルーティーなバルサミコ酢をよく使います。

風味により、タレやソース、ドレッシングに多用すると、市販品よりずっと減塩できます。

また、脳出血で入院中、医師によくいわれたのが「カリウム」を不足させないこと。カリウムは体に必要なミネラルの一種で、ナトリウムを排出しやすくして、塩分のとりすぎの調節に役立ちます(※3)。

果物や野菜など幅広い食品に含まれますが、常備におすすめなのが海藻類。メカブ、モズク、ワカメなどは、サラダや酢のものにしやすく、ぬるぬるした水溶性食物繊維もとれてヘルシー。毎日のカリウム補給に食べています。

●加工食品は「食塩相当量」の表示をチェック

最近は調味料に限らず、スナック菓子やレトルト食品にも「減塩」「塩分カット」の文字が。一般的な商品も、パッケージの裏面に注目。2020年4月に義務化された「栄養成分表示」には、カロリーなどと並んで「ナトリウム量/食塩相当量」が記載され、商品選びの目安になります。

50代からは、もはや「減塩」は当たり前なのかもしれませんね。そんな軽やかさで、工夫を楽しみながら減塩習慣を身につけ、元気な未来につなげていきたいものです。

1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版、ナトリウム 4生活習慣病の重症化予防より

2 厚生労働省「国民健康・栄養調査」令和元年版より

3 厚生労働省 e-ヘルスネット/カリウムより