犬が支えてくれた冬の畑仕事。雪が降っても温もりを感じた
ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第53回は「犬と過ごした2022年の師走」についてです。
犬と共に過ごした、2022年の師走
乗り慣れた軽自動車、助手席に座る犬。見慣れようと日々新鮮にかわいく思う。
2022年も終わりに近づく年の瀬、私たちは山に向かっている。ちらりと犬の横顔を見てはやわそうな頬を人差し指でつついてみる。おお、もふもふの冬毛に指先が想像以上に沈む。換毛期を終えた冬の犬は全身が真綿に包まれているようにやわらかい。
犬の感触にじんわりと安らぎを覚える。するとなんだか怒涛に過ぎていった12月が思い出される。
12月初週は11月半ばから引き続き柿の収穫をしていた。朝から昼飯休憩をはさんで夕方まで畑で収穫しているのだが犬もよくついてきてくれた。
「寒いし来たくないなら無理しやんとき」と犬には伝えているのだが、常に犬は準備万端なのだ。私が農作業用の長靴を履いていたら、犬も「出番か?」と言わんばかりにグ〜ッ! と伸びをする。
柿畑にいるとき亡くなった祖母を近くに感じられてうれしい。遠い昔、祖母が植えたイチョウの木が黄金に輝いているからだろう。
柿の収穫を終えればネーブル、そしてネーブルの収穫を終えれば八朔の収穫が待っている。
八朔の収穫も後半に差しかかった12月23日、雪が降り積もった。早朝の冷気が漂う台所を起こすようにストーブを点ける。居間で犬も目を覚ましたがうつらうつらとしていて起き上がる様子はない。まるくなっている犬の胸元に手を入れたらカイロのように温かい。こうして犬の温もりを手に分けてもらえるところ、私が冬を好きな理由。
久々の積雪に気分が上がって雪だるまをつくった。さてここで問題です、私はなにをイメージしてこの雪だるまをつくったでしょうか!
答えは2023年の干支である『ウサギ』です。でもSNSにウサギと書かずに写真を載せたらピカチ○ウや犬と言われて笑ってしまった。そう思って見るとたしかに犬の影かと思うほどに似ているかも。
●犬サンタさんからもらったプレゼント
そして大雪の2日後は12月25日、Happy Holidays! 2022年も私や家族を支えてくれた犬にミートケーキをプレゼントした。
犬のサンタクロースになるつもりが、用意したケーキをおいしそうに食べてくれる姿に私の方がプレゼントをもらった気持ちになる。犬がサンタクロース 本当はサンタクロース。
そして懸命になって、八朔も無事に採り終えた。八朔畑でもよくついてきてくれたね。畑には人用と犬用のおやつを両方持っていって休憩を取るときは一緒に食べていた。
人間だけでなく犬がいてくれるとそれだけで作業が捗る気がする。それは母も思うらしくて「気持ちに張りが出て、楽しく収穫できるよなぁ。家でひとりにさせてたらやっぱり気になるし」と言って、グゥグゥ眠る犬を見て笑った。
師走と呼ぶに相応しい1か月の回想を終え、ちょうど山に到着した。
いつも通り柵内に入ってリードを離せばブゥン! とエンジンを吹かして走り出していく! もうあんな遠くまで…。犬の走りっぷりは見ていて爽快で気持ちがいい、心にたまった澱が浄化されていくときすらある。ちいさな頃から私の内にどうしようもなく寂寞とした部屋があるのだが、今はそこでタッタッタッ…と犬の爪音が弾んでいる。
たくさん遊んでくれて、たくさん包み込んでくれた山に一年の感謝を告げて、そしてこっちに走ってくる犬に両手を広げる。
犬、私の灯。どうか2023年もきみが笑って過ごせますように。
第1回〜12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載した『inubot回覧板』(扶桑社刊)。こちらも犬の魅力が満載なので、ぜひご覧ください。