2022年12月4日、LFS池袋にて『グランブルーファンタジーヴァーサス(GBVS)』の公式大会「GBVS Cygames Cup 2022 Autumn」の決勝大会が開催されました。予選は11月19日、20日にオンラインで行われましたが、決勝大会はオフライン。今大会で6回目(Specialも含む)ですが、オフラインは初めてです。

さらに、Steam版とPlayStaition版(PS版)の2つのトーナメントを用意。1日で2つのプラットフォームの大会を行うのも初の試みでした。Steam版は74名の参加者、PS版は171名の参加者があり、それぞれのプラットフォームの予選を突破した各8名が決勝大会に進出します。

Steam版で優勝したのはひのきの棒選手、PS版で優勝したのはレン選手でした。

PS版で優勝したレン選手(写真左)とSteam版で優勝したひのきの棒選手(写真右)

レギュレーションは、ダブルエリミネーション方式のBO3(2勝勝ち抜け)で、ウィナーズファイナル、ルーザーズファイナル、グランドファイナルはBO5(3勝勝ち抜け)です。グランドファイナルは、ウィナーズ側の選手が勝利すれば優勝、ルーザーズ側が勝利するとリセットとなり、グランドファイナルリセットが行われ、これに勝った選手が優勝です。

そのなかで、両方のプラットフォームでファイナリストになったのがレン選手。Steam版ルーザーズとして、PS版ウィナーズとして残り、唯一、ダブル優勝の可能性がありました。

当日はSteam版から行われました。ウィナーズサイドからひのきの棒選手が勝ち上がり、ルーザーズサイドからはレン選手がコマを進めます。グランドファイナルでは、レン選手は一度勝利し、リセットまで持ち込みますが、最後はひのきの棒選手が勝ち残り、優勝を果たしました。

Steam版のグランドファイナルはひのきの棒選手とレン選手の対戦

リセットで追い込まれるも、きっちり勝ちきったひのきの棒選手

PS版では、レン選手がウィナーズファイナルを制してグランドファイナルへ進出します。これでレン選手はSteam版に続き、同日大会で連続グランドファイナルを戦います。2位以上が確定しているので、最低でもダブル2位での成績が残せます。

PS版のウィナーズサイドは早い展開が続きますが、一転、ルーザーズサイドはもつれます。全大会優勝のたこ選手をはじめ、gamera選手やdebagame選手、とろろ選手とトッププレイヤーが名を連ねています。さらにウィナーズサイドからバギー選手、れっと選手、ヤマナ選手が降りてきて、より激戦区となったルーザーズサイド。そのなかでグランドファイナルの進出を決めたのはとろろ選手でした。

PS版のグランドファイナルはレン選手(写真左)ととろろ選手(写真右)の対戦

ルーザーズの激戦を制したとろろ選手ですが、グランドファイナルではレン選手がリセットを許さず、そのまま優勝を決めました。同日の同タイトルのプラットフォーム違いの大会で、1位と2位を獲得したのはかなりの快挙と言えます。

先述した通り、Steam版はルーザーズサイドからの勝ち上がりでリセットまで行ったので、1日に実施したのは9試合。ワンデイトーナメントだと、そのくらいの試合数は珍しくありませんが、ファイナリストという山場が2回あるうえ、これだけの試合数をこなしたレン選手。精神力を使い果たし、疲労度もかなりのものだったのではないでしょうか。

Steam版の準優勝のあと、PS版の優勝を決めたレン選手

大会後には、それぞれの優勝者からコメントをいただきました。そちらも紹介します。

――ひのきの棒選手、Steam版の優勝おめでとうございます。

ひのきの棒選手(以下、ひのき):「GBVS Cygames Cup」はベスト8まで進出することが多かったんですけど、これまでは5位が最高順位でした。ようやく今回勝ちきることができてうれしいです。

――グランドファイナルまでで、キツかった相手はいましたか。

ひのき:予選の話なんですけど、初戦で当たったgamera選手戦ですね。2-1でなんとか勝てました。

ひのきの棒選手

――『GBVS』はいつからプレイされているのでしょうか。

ひのき:発売当初からですね。シーズン1からです。最初はローアインを使っていて、パーシヴァルに変えました。ナルメアが追加されてからはずっとナルメアですね。

――先ほどの試合では初戦とリセットの2試合目からカリオストロが登場していましたが、カリオストロも使用キャラなのでしょうか。

ひのき:カリオストロは個人的にお遊びで始めたキャラです。そこそこプレイはしていましたが、大会で出すには一部のキャラに被せで出すくらいかなって考えていました。そうしたら自分でも想定外の活躍をしてくれたんです。気持ち的にはちょっと複雑ですね。2年半も使ってきたナルメアには愛着もありますし、ナルメアで勝ちきりたかったです。

――ありがとうございました。では、レン選手にもお願いします。PS版の優勝、Steam版の準優勝おめでとうございます。

レン選手(以下、レン):長かったですね(笑)。これまでの大会ではあと一歩優勝まで手が届かなかったので、やっと優勝できました。

――今大会では唯一の2部門でのファイナリストとなりましたが、予選からの2週間はどのような練習をされていましたか。

レン:予選を勝ち抜いたときは、両方の結果を残せて良かったと思っていたんですけど、冷静になって考えてみたら、Steam版とPS版の両方を練習しなくてはならないんですよね。つまり、ほかの人の2倍練習が必要。しかも、ほかの人はトーナメントの相手が7人ですけど、私だけ14人なんですよ。

レン選手

――それで2部門ともグランドファイナル進出はすごいですね。勝ち続けることもですが、単純に試合数の多さだけでも大変さが伺えました。

レン:本当は両方優勝がドラマチックなんでしょうけど、まだ力がちょっと足りませんでした。まあ、自分ではどちらの結果も満足しています。ゲームをやり始めると100戦くらい普通にやってしまうタイプの人間なんですが、完全な集中モードであの連戦は初めてでした。体力的にも集中力としてもどこかで途切れてしまうのではないかと思いましたが、最後まで突き通せてよかったです。

――Steam版とPS版を練習していて違いを感じることはありますか。

レン:少しずつ違うところはありますね。機種によってどうしてもいつもの動きができなくなってしまいます。なので、立ち回りにしろコンボにしろミスは多くなってしまうので、そこはもう割り切っていきました。コンボの精度や起き攻めをしっかり考えるよりは、自分の読みと攻めの圧をどれだけ相手に与えていけるかを考えました。

練習は大変でしたけど、予選から本戦まで、2週間あったのは良かったですね。自分なりにやれた感はありましたし、確実に2週間前の自分よりも強くなっていると思います。

――ありがとうございました。

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今回の大会は、オフラインであることや、2つのプラットフォームトーナメントなど初めて尽くしでした。残念ながら有観客とはなりませんでしたが、それでも参加した選手は十分に楽しめた様子です。

今回の大会はプロ選手も参加していますが、オープンなトーナメントです。しかも、優勝賞品は記念盾と副賞で、賞金は出ていません。そのせいもあるのか、大会は終始和気あいあいとしていました。公式大会ながらコミュニティ大会に近い雰囲気でしょう。「GBVS Cygames Cup」は季節ごとの大会以外に「Special」もあり、そこでは賞金が出るので、いいバランスなのかもしれません。

『GBVS』はクロスプレイに対応していないので、それぞれのプレイヤーに大会参加する機会を設けるために、今回のようなダブルプラットフォームでの開催に至ったと思われます。ただ、クロスプレイが可能でも、マシン差が出てしまうことがあるため、ダブルプラットフォームでの大会をやる価値はあるでしょう。

最高スペックのマシンをすべての人が手に入れられるわけではありません。そのため、不利と思われるマシンでプレイしている人も少なくないでしょう。そういった人たちのためにも、プラットフォームごとの大会を開催するの価値があるわけです。

著者 : 岡安学 おかやすまなぶ eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas この著者の記事一覧はこちら