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EV普及で課税方法も見直しに

EV(電気自動車)対する税の見直しが本格的に検討されるのか?

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2022年10月26日夕方から翌27日にかけて、大手メディアで「EVの税のあり方」に関する記事が複数出た。


トヨタがスバルと協業で開発したEV「bZ4X」    シャッターストック

その中には、「走行距離に応じた税負担が検討される可能性」などにも触れているものがある。

一連の報道は、10月26日午前10時から約2時間に渡り開催された、政府の第20回税制調査会・総会での審議を受けてのものだ。

一般的には、政府税調と呼ばれる会議体であり、大学教授、地方自治体の首長、メディア関係者、労働組合関係者、コンサルティング企業関係者など合計46人の委員と特別委員で構成されている。

政府税調での議論の取りまとめは、政府に答申として示される形だ。

つまり、政府税調は、日本における今後の「税のあり方」に対して大きな影響力があるといえる。

そうした国の重要な会議で、EVに関する議論があったのだが、議論の内容は具体的にどのようなものだったのか?
 
同会議で財務省をはじめとした関係各省庁から提出された資料は、内閣府のホームページで公開されている。また、審議の模様は期間限定で動画でアップされている。

これらの情報をもとにして、「EVの税のこれから」について考えてみたいと思う。

現在の税制では「減収」明らか

財務省が示した資料では、最初に現在の「自動車の係る課税関係」を図式化して説明している。

それによると、クルマの種類を、ガソリン車、ディーゼル車、LPG車、軽自動車と表現し、課税される段階について、「取得」、「保有」、「利用」という3つを「車体課税」と表現する。


3代目トヨタ・プリウスはエコカー減税やエコカー補助金の追い風を受けヒットした。    トヨタ

さらに、「走行」について、燃料に係る課税として分類している。

そのうえで、「車体課税・燃料課税の税収の推移」を示した。

車体課税は、2007(平成19年)の3.4兆円から2022(令和4)年には2.7兆円へと約8000億円の減収となっていることが分かる。

減収の主な要因は、2009(平成21)年に「エコカー減税」を導入した時点で、3.0兆円まで下がり、その後に2010(平成22)年と2012(平成24)年に税率を引下げたことで、それ以降の税収は2.5兆円から2.6兆円の間で推移するようになっている。

次に、燃料課税についても2007(平成19)年の4.2兆円から減収傾向となり、2020(令和2)年から2022(令和4)年の3年間は3.2兆円で下げ止まっている状況だ。

これは、ハイブリッド車の普及や内燃機関の燃費向上などにより、ガソリン使用量が減ったり、また、コロナ禍となり社会経済活動がやや停滞したことなどが影響していると見られる。

税金としての歳入が減少する一方で、道路の新設・維持補修・点検などや、交通安全対策などでの、国や地方自治体の支出が増える傾向にある。

エコカー減税や自動車税見直し?

このように、すでに自動車関連の課税を財源とする支出が歳入を超えているのだが、今後は電動車がEVへ大きくシフトすることが予想されるため、これまでのような「燃料課税」の方法はでは税収確保がさらに難しくなることが予想される。

それだけではなく、「車体課税そのものを変える必要があるのではないか?」という国側の考えに対して、参加した委員と特別委員からは概ね、そうした方向を支持する声が多かった印象がある。


排気量1000ccはトヨタ・パッソのクラスだ。

そのやり取りに対して、SNSなどではユーザーが疑問を投げかけている。

政府税調でのやり取りを聞いていると、環境対策としてEV普及を推進することは重要だが、支出として道路の維持・補修を考慮するうえで、(一般的に)重量が重いEVを優遇させるだけではなく、全体としてバランスを取るようにするべき、という流れだ。

つまり、国税である自動車重量税における「エコカー減税」の見直しが必要であること。

また、都道府県税である自動車税についても、現在は「グリーン化特例」で(多くの地域で)75%減税としているが、そもそもEVはエンジンがないことで、自動車税の区分として「総排気量1000cc以下」に組み込まれていることについても、見直す可能性があるということだろう。

「モノ中心」から「社会中心」へ

最後に私見を述べたい。

全体像としては、「モノ中心」から「社会中心」への、根本的な税体系の転換が必然だと思う。


日産サクラと三菱eKクロスEV    宮澤佳久

これまでの車体課税は自動車税、自動車重量税、環境性能割(旧・自動車取得税)という「モノ中心」だった。燃料課税も「モノの数」によって左右されてきた。

一方、これからは、「移動の目的(通勤・通学・通院・レジャー)」、「移動の種類(時間・場所『都市部・地方部・中山間地域』・乗用または商用/公共交通機関の枠をこえた所有か共有)、そして「使用するエネルギーの種類(化石燃料由来・再可能エネルギー)」など、「社会中心」のさまざまなパラメーターを複合的に解釈した税体系に変わるべきだと思う。

その中には、例えば交通に関する料金を税体系化した「交通税」という考え方も出てくるのではないだろうか。

日本自動車工業会や日本自動車連盟からは国に対して、海外と比べて日本の車体課税が高いことに対する是正や、複雑化している自動車関連課税の簡素化に対する要望が出ている。

だが、そうした要望は、まだ「モノ中心」の範囲にとどまっている印象がある。

100年に1度の自動車産業大変革においては、「モビリティの税」という観点で、デジタル化(DX)をフル活用した、根本的な税体系の見直しが必要だと感じる。