ハイビームの使い方を誤っているドライバーが増えている?

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夜間により遠くの範囲を照らすことができるハイビーム。視界が悪くなる夜間において、より早いタイミングで障害物や歩行者を見つけることができるので、安全に繋がります。

ハイビームで照らされた方はかなり眩しいと感じるため、市街地や他車がいる場合は使用しないなどシチュエーションによって使い分ける必要があります。

しかし、近年このハイビームの使い方が適切でないドライバーが増えているという声をチラホラ耳にします。

交通教則ではハイビームの使用を推奨

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ハイビームが増えた大きな理由として、交通教則にハイビームに関する事象が明記されたことが挙げられます。

例えば、警察庁のホームページには、2017年からハイビームの使用を推奨するような文章が記載されています。(以下警察庁のホームページより一部抜粋)

・前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

・交通量の多い市街地などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。

警察庁HP 第6章 危険な場所などでの運転より

・夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにして、落下物や交通事故などにより停止した車を少しでも早く発見するようにしましょう。

警察庁HP 第7章 高速道路での走行より

教則で明記されている、警察もハイビームの使用を推奨しているという認識が広がり、「ハイビームが正しい」という認知が広がった可能性はあるでしょう。

文章からは「基本的にはハイビームを使用し、他車に迷惑が掛かる場合はロービームを使いましょう」といった意味にも聞こえます。

しかし、眩しいハイビームが増えたように思うのは、これだけが理由ではありません。

運転支援システムの普及も影響か

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ハイビームが増えたのは、オートハイビームなどの運転支援システムの普及も影響しているでしょう。メーカーによって名称が異なりますが、対向車や先行者などを検知した場合に自動でハイビームからロービームへと切り替えるというシステムです。

また、上級車種の中にはハイビームを点灯しつつも前走車や対向車など、照らしてはいけない部分だけ照らさないといった「アダプティブヘッドライト」(これもメーカーによって名称が異なります)を採用している場合もあります。

しかし、これらの運転支援システムも絶対というわけではないために、前走車や対向車などの照らしてはいけない部分を照らしてしまうこともあります。

不必要な部分を照らしてしまった場合は、ドライバーが自らロービームに切り替えるべきですが、オートハイビーム任せにしていて、なかなか気づかないドライバーも少なくありません。

「車が自動で調整してくれているから大丈夫。自分は迷惑をかけていない」と思い込み、眩しいハイビームのクルマが増えたという声が多くなってきたものと思われます。

一番眩しい思いをしているのは歩行者かも

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交通教則での推奨や、運転支援システムの進化によってハイビームの使用が増えてきましたが、眩しさの被害を最も被っているのは歩行者でしょう。

歩行者の後ろから追い抜く形でハイビームを照射しながら走行する場合は、歩行者にとってあまり迷惑が掛かりません。しかし、歩行者へ向かう形でハイビームを照射しながら走行する場合、歩行者は眩しいと感じてしまいます。

ハイビームを照射しているとき、目の前に歩行者がいる場合は、ロービームに切り替えるべきです。

しかし、オートハイビームでも歩行者を認識してロービームに切り替えてくれるものは少ないうえ、歩行者がいたからロービームに切り替えるというドライバーも少ないように感じます。

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また、道路交通法において運転者には、他人に危害を与えないような運転が義務付けられているので、ハイビームで歩行者の目をくらますとこれに違反する場合があります。

ハイビームを使用したり、オートハイビームを使用したりすることは安全に繋がりますし、夜間運転時の疲労度も少なく済みます。

しかし、ハイビームからロービームに切り替えなければならない状況があること、各種運転支援システムが絶対でないことを理解しておくべきです。適切に使用し、安全に夜間運転を行いましょう。