タイム・マネジメントとは、自分へのデリゲーション。人への仕事の依頼の仕方とセルフ・マネジメントの仕方は同じ/フランクリン・ プランナー
タイム・マネジメントといえば、時間を効率的に使い、より短い時間で、より多くの成果を上げるというイメージですが、実際には、どのようなやり方で、どのように優先順位をつけ、どのように時間配分をするか、つまり、どうすれば仕事や用事をより高いクオリティで、しかも短時間で成し遂げるかということになります。
また、よく「生産性向上のために」という言葉もよく使われますが、そもそも生産性向上とは、単純により多くのものをという意味ではなく、生み出す付加価値を増大させるということです。つまり、生産性向上とは価値を上げることになります。
そうすると、タイム・マネジメントの目的というのは、効率を単に上げるかではなく、価値を増加させる、効果をもたらすことにほかなりません。
デリゲーションを行う際に気を付けるべきポイント
仕事をする際、ほとんどの仕事は1人で完結できるものではありません。部下や他部門の担当者、上司、協力会社など、様々な人たちと仕事を行うことになります。タイム・マネジメントで行うべきタスクも同様です。1人でやり遂げることよりも、他人と協業するほうがむしろ多いぐらいのはずです。
実際、あなたのタスク・リストにも、「○○さんに連絡」「○○社とコスト交渉」「○○様にヒアリング」といった、自分だけで処理することのできないタスクがかなりあるはずです。
こうした、他者に依頼することを「7つの習慣」では、「デリゲーション」と呼んでいます。
自分一人では解決できないとき、または、部下や相手の成長やチームとしての成果を考えた場合、「デリゲーション」が必要となりますが、スティーブン・R・コヴィー博士は、著書『7つの習慣』のなかで、「使い走りのデリゲーション」と「全面的なデリゲーション」として紹介しています。
「使い走りのデリゲーション」とは、「これをこういうやり方でやりなさい、これをこうしてほしい、とにかく手を動かしてほしい」というような依頼の仕方です。この方法だと、期待したものから大きく外すことはありませんが、期待以上のものはできません。また、やる気が出るはずもないのでいやいや仕事をされることになりますし、その仕事による成長も期待できません。したがって、「使い走りのデリゲーション」の効果は自分の代わりに誰かがやっただけです。
一方、「全面的なデリゲーション」では、手段ではなく結果を重視します。 得たい結果、目的を明確に伝え、手段は任せる人が自分で決め、結果に責任を持ってもらいます。そのときに、大事にしたいことがあります。
次の5つについて明確にしておく必要があります。
・望む成果:何をいつまでに達成するのか、手段ではなく、達成すべき成果について共有する
・ガイドライン:守るべきルール、規則。手段は決めていいとはいえ、なんでもいいということではない。守るべきことを共有する
・リソース:結果を出すために必要な資源、人員、コスト、技術、パートナーなどを共有する
・報告:進捗の報告のタイミング、方法を決めておく
・評価:成果はどのように評価するか、評価後の対応について決めておく
デリゲーションもセルフ・マネジメントも決めるべきことは同じ
もうお分かりだと思います。コヴィー博士は、その人の成長やチーム全体のことを考慮したうえで人に仕事を依頼するときは、これらの5つの事柄を決め、お互いに共有しておくことが重要だと言いますが、これは何も人に仕事を依頼するときに限ったことではありません。
自分でやるときも同じです。仕事を自分に依頼しているわけです。共有する必要がないだけで、この5つの事柄は、当然決めておくべきことです。その仕事の目的、狙い、完成のイメージ、実現したら得られることなどを明らかにしたうえで、仕事に取りかかる必要があります。
ということは、人にまともに仕事を振ることができない人は、自分で行う仕事も同じようにやっているということになります。
むしろ、人に仕事を依頼するときは、丁寧に行うものです。相手から「出来上がりのイメージを教えてください」「評価のポイントは何ですか」「リソースを教えてください」など、聞かれることも多いはずです。特に普段からあまりコミュニケーションがない人との場合は、慎重になるものです。
自分で行う場合は、誰も指摘してきませんし、仕事の報告や評価に対して指摘を受けることもありません。その分、自分に対して甘くなる可能性が高くなります。
コヴィー博士の言う「全面的なデリゲーション」のポイント【望む成果、ガイドライン、リソース、報告、評価】を今一度確認し、自分の仕事に当てはめて考えることは、仕事を組み立てるうえで、とても大切なことです。