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ツイッターの検索で過去の逮捕歴が表示され人格権などが侵害されたとして、男性がツイッター社にツイートの削除を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は6月24日、削除を認めなかった2審判決を破棄し、ツイートの削除を命じた。

逮捕歴などの検索結果の削除をめぐっては、最高裁は2017年1月の決定で、個人のプライバシー情報が公表されない利益が、検索結果として提供する理由よりも「優越することが明らかな場合」(いわゆる「明らか基準」)に削除が認められるという判断基準を示している。

最高裁は今回、ツイッターに関して、検索エンジンよりも緩和した形での判断基準を初めて示した。判決のポイントや今後の影響について、インターネットの権利侵害問題にくわしい中澤佑一弁護士に聞いた。

●地裁と高裁は削除命令を出しやすくなる

--今回の最高裁判決をどのように評価しますか。

公平で正当な規範が示されたと受け取っています。

--逮捕歴に関するツイート削除について、これまで裁判所の判断はどのような傾向でしたか。

2017年のグーグル最高裁決定以降、裁判所は逮捕歴削除に関して非常に慎重でツイッターに対する事案でも慎重な判断が多くありました。中には、不起訴事案であるにもかかわらず削除を認めないものもありました。

--今後にどのような影響がありますか。

2017年のグーグル最高裁決定以降、削除を過度に抑制的に考えてきた下級審裁判所も、今回の判決を受けて、削除命令を出しやすくなると思われます。

また、削除すべきか否かの判断基準と考慮要素も明確になり、裁判実務はスムーズになると思います。

●ウェブサイト一般に適用される基準に

--ツイッター以外のSNSやサイトにも影響は及ぶのでしょうか。

この最高裁判決は、検索事業者以外のウェブサイト一般に適用される基準ですので、今後はこの判例の規範に沿って削除請求をすることになります。

2017年のグーグル最高裁決定以降、「明らか」基準を適用して削除を認めない例が多くあったため、より削除請求が認められやすくなると思われます。

--裁判長を務めた草野耕一裁判官は、3ページにわたり結論に賛成の立場で補足する意見を述べました。実名報道についての言及もあります。

実名報道について、メディア側は公益性などを主張しますが、補足意見では、実際はそのような公共性ゆえに求められているのではなく悪趣味な志向に応えているに過ぎない、ということが指摘されています。

実名報道による不利益がインターネットの普及によって爆発的に高まっています。警察やメディアは従前と変わることなく実名報道をしていますが、現在の実態に即して、そこまでの不利益を与えてまで行うべきことなのか、という観点から、今一度実名報道の意味を再検討する時期に来ているのだろうと思います。

なお、今回の判決を2017年のグーグル最高裁決定と比較すると、「明らか」という文言が削除されたのに加え、比較衡量の考慮要素として2017年が挙げた「記事等において当該事実を記載する必要性」が削除されています。

事実を記載する必要性は考慮しなくてよいということになり、補足意見だけではなく法廷意見も実名報道の必要性に疑問を投げかけているようにも思えます。

●判決全文

判決全文は最高裁HPに掲載されている。

【取材協力弁護士】
中澤 佑一(なかざわ・ゆういち)弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所名:弁護士法人戸田総合法律事務所
事務所URL:http://todasogo.jp