関連画像

写真拡大

弁護士らでつくる団体が4月20日、日本大学前理事長の脱税事件など一連の不祥事をめぐって、同大学の第三者委員会が発表した調査報告書の評価を発表した。

この団体は「第三者委員会報告書格付け委員会」。調査報告書を格付けすることで、第三者委員会の質や社会的評価の向上を目指している。

今回はB評価が2人、C評価が2人、D評価が4人と判断が分かれた。発足以来25件の「格付け」の中で、もっとも評価のバラつきが大きい部類だという。委員長の久保利英明弁護士は、F評価(評価不能)をつけた。

●組織の問題としてどこまで真因に迫れたか

高評価をつけた委員は、第三者委員会がアンケート調査で寄せられた学内の声を丁寧に紹介していることなどに着目。根本原因に日大の風土(同質性・上命下服)があげられている点も一定の説得力があると評した。

一方、低評価をつけた委員からは、根本原因の分析が「表層的」との声もあった。

たとえば、中央大学の野村修也教授は、私大の不祥事は通常、学内外の勢力争いの歪みに起因すると指摘。報告書では前理事長と元理事の個人的な問題に矮小化されており、「誰が支持し、利権を得ていたのかという構造の分析がないので、再発防止ができない」と語った。

評価不能とした久保利弁護士は、第三者委員会が発足した時点で、すでに3件が起訴されており、関係者や証拠へのアクセスが大幅に制限されていたと指摘。深度のある調査ができないため、評価も不可能と説明した。

「第三者委員会が優秀なら(組織が)自浄能力を発揮できるかといえば、そうではない。第三者委員会をつくるのにふさわしい時期や環境がある」(久保利弁護士)

久保利弁護士は調査担当者について、「気の毒」「(依頼を)断るべきだったのではないか」とも語った。

●2人に対しては厳しい事実認定

日大では、前理事長の田中英壽氏が脱税事件で有罪判決(懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円)を受けて確定したほか、元理事の井ノ口忠男氏も背任の疑いで逮捕・起訴されている。

今回の評価対象になった報告書は、大学が外部の弁護士に委嘱し、3月31日に公表されたもの。両氏によって、日大を「食い物」にする基本的な構図が作り上げられたなどと認定していた。