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「ベネッセすごい!チャレンジ1年4月号に入ってたんだって」。

ベネッセの提供する通信教育講座「進研ゼミ小学講座」に子どもの新型コロナウイルスワクチン接種反対のチラシが同封されていたとするツイートが3月22日、話題となりました。

投稿主はその後ツイートを削除しましたが、ベネッセに「ツイート内容は事実ですか」と尋ねる人も出ており、「こどもちゃれんじ編集部」の公式ツイッターが「ご心配をおかけしてまことに申し訳ありません。進研ゼミ小学講座ではこうしたビラを封入指示している事実はございません」と複数リプライする事態となっている。

また、「進研ゼミ」のプロモーション用アカウントも同日、以下のように注意喚起している。

「【ご注意ください】昨日21時頃より、弊社発送教材に新型コロナウイルスのワクチン等に関するチラシが同封されていたとの投稿がされていますが、当社ではこのようなチラシの制作や封入はおこなっておりません。何卒ご注意ください」

今回のようにベネッセが制作・封入していないにもかかわらず、「入っていた」とツイートする行為は、法的に問題ないのでしょうか。清水陽平弁護士に聞きました。

●「ベネッセ側に本来必要がなかった業務を行わせている」

--現在ツイートは削除されていますが、ベネッセがコメントを出す事態に発展しています。法的な問題はどう考えられますか。

経緯としては、投稿者の入っているグループLINEに「チャレンジ1年4月号に同封されていた」という内容とともに、チラシの写真が掲載されたことから、これをTwitterに転載したということのようです。

このような経緯からして、投稿した本人としては、自身の考えに近いものがあることを知らせるための情報提供として行ったもの、という認識ではないかと想定されます。

しかし、今回のツイートは、客観的にはいわば「デマ」であったということができます。これによってベネッセ側が、そのような事実はない、という発表をしたり、電話での問い合わせ等に対応をしている状況があるようです。そのため、ベネッセ側にとって本来必要がなかった業務を行わせていることになります。

そして、ツイートという形で行っており、威力を用いているわけではないため、偽計業務妨害罪が問題になると考えます。

--わざと投稿したわけでなくても、業務妨害に当たるのでしょうか。

本人にとっては「業務を妨害してやろう」という意図がなくても、投稿自体は意図的に行っていること、本当ではないかもしれないとも思っていることが、前後の投稿から読み取ることができるため、未必の故意は認定できると思われます。

デマ投稿について刑事事件になった有名な事例としては、「熊本地震でライオンが脱走した」というデマが投稿されたもの(偽計業務妨害罪・起訴猶予処分)、東名あおり運転をめぐって「被疑者の勤務先はここだ」という趣旨のデマが投稿されたもの(名誉毀損罪・罰金)などが指摘できます。

いずれも軽い気持ちから投稿されているものですが、重大な結果が生じていることが分かると思います。

また、刑事上の問題だけではなく、民事上も名誉毀損などの問題が生じ得ます。

Twitterに投稿するということは、グループLINEなど閉じたコミュニティの中でのやり取りではないということを、改めて認識しておく必要があります。不確実な事項を拡散するような行為はリスクがあることだと考えるべきでしょう。

【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第3版(弘文堂)」などがある。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp