リーガで首位に立つレアル・マドリード【写真:AP】

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【識者コラム】選手ありきで発揮されるレアルの強さ

 スーペルコパ・デ・エスパーニャにレアル・マドリーが優勝した。

 リーグ優勝チームとカップ戦の勝者が対戦するスーペルコパが4チームのトーナメント戦に拡大され、2019年からサウジアラビアで開催されている。言ってしまえばリーグの集金マッチなのだが、強豪同士の対戦で注目度は高い。

 4チーム形式になってからは2019-20シーズンにレアルが優勝、20-21シーズンがアスレティック・ビルバオ、そして今回はその両者の決勝となりレアルが勝利した。相変わらずファイナルに強い。

 今季からカルロ・アンチェロッティ監督が指揮を執るレアルは、進境著しいヴィニシウス・ジュニオールの活躍はあるものの、メンバー自体はほぼ変わっていない。セルヒオ・ラモスが抜けた穴をダビド・アラバが埋めたぐらいだ。

 エンジンはルカ・モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロースのMFトリオ。これも数年間同じだ。そろそろ世代交代の時期ではあるわけだが、この3人を代えるのはなかなか難しい。レアルの補強は伝統的にコレクションみたいで、その時にスーパーな選手を獲ってきてチームを組み立てていく。戦術ありきではなく、まず選手ありき。そして、この方針で数多くのタイトルを手中にしてきている。

 モドリッチ、クロース、カゼミーロの代役はすでにいる。フェデリコ・バルベルデは半レギュラーで、カゼミーロの後継者には期待の10代、エドゥアルド・カマビンガが来た。ダニ・セバージョスもアーセナルから戻っている。ただ、ポジションはそれで埋められるにしても、機能性がモドリッチ、カゼミーロ、クロースとは違ってくる。戦術が人に依存しているので、人が代わればプレーぶりも自ずと変わってしまうのだ。

 しかも、この3人は1つのユニットとして人格を持っていると言っていいほどで、それぞれ個人としても素晴らしいのだが、3人揃ってこそ真価を発揮する。そしてこのユニットには何とも言えない品格が漂っている。

機能性、現代性はマンチェスター・シティとは対照的

 機能性、現代性ということではマンチェスター・シティとは対照的だ。

 シティは選手のポジションが入れ替わっても同じように機能する。選手が代わっても変わらない。実際には誰がやっても同じというわけではないのだろうが、戦術が先にあり、それを実現する駒として選手が機能していて、人が違ってもあまり影響を受けない。これはシーズンを戦い抜くうえでも大きなメリットだろう。

 一方、レアルは人に依存している。モドリッチもクロースもカゼミーロもいないなら、もはや別のチームだ。3人のテリトリーもはっきりしていて、シティのような頻繁なポジションチェンジもない。シティが最先端なら、レアルは旧態依然である。

 ところが、その旧態依然が独特の美しさを醸し出している。かつてのFCバルセロナにはシャビ、セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタにリオネル・メッシが加わる素晴らしいユニットがあった。レアルもカリム・ベンゼマを加えたユニットが美しいのだが、バルサのように4人が近接してコンビネーションを見せるというわけではない。モドリッチとクロースは左右のエリアを明確に棲み分けていて、カゼミーロは2人のバックアップだ。ベンゼマもメッシほど3人に絡まない。この互いの職域を弁えた感じがまた奥ゆかしかったりする。

 戦術はフィールドのすべてをカバーするには目が粗すぎる。機械的なマニュアルではなく職人の勘と技術に託すレアルのやり方は、説明はしにくいけれどもこれまでの実績からいっても1つの正解なのだろう。そしてなんとも言えない品格がある。熟成されたレアルの賞味期限はあとわずかだ。その儚さゆえもあってか、輝きと奥深さはとても魅力的に映る。(FOOTBALL ZONE編集部)