オマーンにホームで0-1と敗れた日本代表【写真:Getty Images】

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W杯アジア最終予選の初陣でオマーンに0-1敗戦、「文句も言えない完敗」と一刀両断

 森保一監督率いる日本代表は、2日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選初戦で、オマーンにホームで0-1と敗れた。

 7大会連続のW杯出場に向けて悪夢のスタートとなったが、この結果を受けて元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏が「Football ZONE web」に特別寄稿。低調な日本のパフォーマンスに、「近年の最終予選で最悪の負け方。見るべきものは何もなかった」と苦言を呈した。そしてMF柴崎岳とMF遠藤航が組むダブルボランチの低調ぶりとともに、森保一監督の修正力の欠如を疑問視。7日の中国戦で連敗を喫した際には、監督交代など改革の必要性を挙げている。

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 W杯アジア最終予選初戦のホームゲーム。グループBでは戦力的に上位とは言えないオマーン相手の一戦は、絶対に勝ち点3を取らなければいけない試合だった。

 蓋を開けてみたら、日本は酷過ぎた。選手のタレント、国際経験、チームとしての実績……すべてで上回っていると思っていたが、文句も言えない完敗。闘志も伝わってこない。近年のアジア最終予選で、最悪の負け方だった。

 試合後、「日本が押し込んでいた」と語っていた選手もいたが、どのあたりで押し込んでいたのか聞きたい。オマーンには明確な決定機を作られていたし、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で取り消しになったDF長友佑都のハンドの場面も、主審次第でPKという判定になった可能性は十分にあった。

 評価できる選手もいない。引き分けで終わることもできたかもしれないが、見るべきものが何もなかった。DF吉田麻也は「負けるべくして負けた」と話していたが、勝てる理由が見出せない展開だった。

 これまで1トップとしてチームを救ってきたFW大迫勇也のキープ力に対する批判の声もあるが、そもそも大迫にまともなボールが入っていないのが問題。フィールドでは中盤が最大の問題点だったと思う。柴崎と遠藤のボランチが、あまりに低調だった。チームに流れも作れない。決定機も作れない。攻撃のスイッチが入らない。

 柴崎は全くはまっていなかった。遠藤はボールを奪っていたが、その後のクオリティーに依然として課題を残している。10回ボールを奪っても、11回失っていたらマイナスでしかない。失点に絡み続けた東京五輪の3位決定戦メキシコ戦の悪い状態を、引きずっているように見えた。

負けは負けでも「負け方」というものがある

 ダブルボランチのクオリティーを見るにつけ、MF田中碧はなぜ招集しなかったのか。デュッセルドルフ移籍直後で新しい環境に適応させるという考えもあるが、柴崎が昨日のように低調な状況も考えられる。ゴールが必要な状況で、東京五輪でスイッチャーとして進化した田中を先発で使う、あるいは途中から柴崎と並べる選択肢もあったはず。欧州移籍市場の最終日も絡んだ代表戦で、メンバー選考の難しさもあったと思うが、田中という“引き出し”の不在が惜しまれた。

 サッカーの世界では、どんなチームでも負ける時は必ず来る。負けは負けとはいえ、負け方というものがある。何一つ収穫がない負けは、立て直すことが難しい。

 五輪の最後の2試合に続いて、森保監督は相手の監督との準備、采配で差をつけられてしまった。中4日で迎える中国戦で勝つことができれば、監督は課題だった「修正力」を示すことができる。

 だが、このままの状態で連敗してしまえば、7大会連続のW杯出場に向けて厳しい状況に追い込まれてしまう。中国が初戦でオーストラリアに負けたこと、そして、舞台が中立地カタールであることが現時点で最大の朗報だと思う。

 連敗なら改革が必要とされる。監督交代もあるかもしれない。日本を愛するサッカー人としては、ぜひ勝ってもらいたい。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。(Football ZONE web編集部)