そのドリブルは、どのレベルまで通じるのか。チャンピオンズリーグ(CL)級なのか。そのベスト16以下級か、ベスト16超級か。三笘は、先述したように、世界との競争心が低そうに見える川崎を卒業し、一刻も早く欧州に行くべきだろう。5月で24歳。大卒なので、年齢的にはすでに遅いくらいだ。こう言っては何だが、三笘が川崎からいなくなれば、Jリーグの優勝争いは混沌とする。この柏戦も、三笘がいなければ、引き分けだったと思われる。

 大卒か高卒か。欧州でプレーすることを考えれば、この差は大きい。三笘がいま、大卒2年目ではなく、高卒2年目の19歳なら、久保建英と同じ学年だ。可能性は無限大に広がっていたはずである。間もなく24歳という年齢が恨めしく感じられる。

 今季のJリーグでは高卒2年目の選手も脚光を浴びている。目下、3試合に出場して4ゴールを決めている荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)だ。ポジションは4-4-2の左サイドハーフ。ザックリと言えば三笘と同じだ。さらに言うならば、ドリブルが巧い点も共通している。低重心で、足元からボールが離れない柔軟性溢れる滑らかなドリブルだ。

 しかし、ドリブル得意なウインガーである三笘に対し、荒木はドリブルが得意ではあるがウインガーではない。サイドより中央でボールを受けることが多いので、ドリブルを披露する機会は必然的に減る。鹿島の4-4-2は4-2-「2」-2的で、荒木のポジションはその「2」の左だ。ウインガーというより万能型のアタッカー。攻撃的MFと言ってもいい。三笘との違いはそこになる。荒木は総合的な技術に秀でたマルチな選手として出場している。

 鹿島で先輩に当たる土居聖真もこんな感じだ。ドリブルも上々。パスも巧い。どのポジションも器用にこなすセンスも光る。だが、スペシャリストではない。代表チームに呼ばれたとき、あるいは他のチームに移ったとき、最も光り輝くポジションはどこなのか、分かりにくい選手。はまりにくい選手だ。

 三笘と荒木。年齢的に前途洋々なのは荒木だが、欧州で活躍しやすいのは三笘だ。荒木はもっとドリブルができる環境でプレーした方がいい、とは個人的な感想だ。サッカー界では「技術は腐らない」は通説となっているが、ドリブルは例外だ。試合でドリブルを使う機会が減ると、ドリブルはその分だけ下手になる。荒木が持っている技術の中で、最も貴重な武器はドリブル。三笘を見ていると、とりわけそう思うのだ。