年始に立てた目標や計画が、早々に頓挫するのはなぜでしょうか(写真:EKAKI/PIXTA)

早いもので、2021年も1カ月が過ぎようとしています。「一年の計は元旦にあり」と言いますが、すでに年始に立てた目標や計画が頓挫した人も多いのではないでしょうか。

「考える技術」がテーマのベストセラー『パン屋ではおにぎりを売れ』の著者・柿内尚文氏に「新年に目標を立てても挫折しがち」な理由を分析してもらった。

目標実現の壁となる「挫折3兄弟」

2020年はコロナ禍で思っていたことができなかったので「2021年こそは!」と意気込んでいる人も多いと思います。

ただ、年の初めに「1年の計画」を立てても、その実現率はかなり低いそうです。すでに心当たりのある人は多いのではないでしょうか。

では、なぜ実現しないのか。それは目標実現を阻害する「挫折3兄弟」が存在しているからです。

挫折3兄弟とは「頑張る」「飽きる」「忘れる」です。

えっ、「飽きる」と「忘れる」はなんとなくわかるけど、「頑張る」も?と思うかもしれませんが、「頑張る」はかなり挫折の原因になります。

仕事の現場ではよく「頑張ります!」という言葉を耳にします。「頑張る」は通常はポジティブな言葉として使われていますよね。

「頑張る」の定義はデジタル大辞泉によれば、

1. 困難にめげないで我慢してやり抜く
2. 自分の考え・意志をどこまでも通そうとする

とあります。

「我慢して」「意志をどこまでも通す」というのはなかなか強い言葉です。たいていの人は「我慢が嫌い」「意志がそんなに強くない」のではないでしょうか。僕もそうです。なので、頑張り切れないことがよく起きます。つまり「頑張る」という言葉には挫折のにおいがプンプンしているわけです。

自分は意志が強くない、我慢は嫌いと思っていても、人は最初はけっこう頑張りがちです。

スタート時はモチベーションが高いので、ついつい頑張ります。でも意志が急に強くなるわけではなく、我慢も嫌いなので、結果、途中で挫折の可能性も高まるのです。

では、「頑張る」で挫折しないためにどうしたらいいのでしょうか。

挫折しないための「ミニ努力」と「目的ずらし」

ひとつは「ミニ努力」です。例えば目標が「ダイエットに成功する」であれば、いきなり食べる量を我慢して減らすとか、無理にハードなトレーニングをすることはせず、「我慢のない範囲」「無理のない範囲」でできることをしていきます。

例えば出勤のときに最寄りの駅まで歩いているとしたら、そのうち100mは走ってみるとか。そういうことを続けていく中でだんだんと習慣化が進み、気づけば我慢を感じることなくダイエットがうまくいく生活に変わっていくわけです。

ここで「ミニ努力」というワードを紹介しましたが、これは僕の創作ワードです。話は少しそれますが、言葉を自分オリジナルで考えることは、その言葉の意味を自分ゴト化するのにとても役立つ方法なのでおすすめです。拙著『パン屋ではおにぎりを売れ』の中で「キャッチコピー法」として紹介しています。

話を戻します。「頑張る」で挫折しない2つ目の方法は「目的をずらす」です。

例えば、「歯磨き」を頑張ってやっている人は少ないと思います。歯磨きはなぜ習慣化できたのか。それは「歯を磨かないとさまざまなリスクがある」という理由だけでなく、「歯を磨くと口の中がすっきりする」というように目的をずらしている部分もあります。本来歯磨き粉にいろいろな香りは必要ないそうですが、それをつけているのは「スッキリ感」を作るためで、その「スッキリ感」が歯磨きを挫折せずに習慣にできている大きな要因なんだと思います。

再びダイエットで考えてみます。

運動でやせようと思った場合、慣れないことをするとやっぱりきついですよね。ではどう目的をずらせばいいのか?

例えば目的を「最高にうまいビールを飲む」にずらしてみるのはどうでしょうか。「最高にうまいビールを飲む」ためにトレーニングをするわけです。

ここで大切なのは、トレーニングをした報酬やごほうびにビールを飲むというロジックではなく、最高にうまいビールを飲むためにトレーニングをするというロジックにすることです。

食事の量を減らすのであれば、こんなずらしはどうでしょうか。

「最高においしい夕食を食べるために、ランチを抑える」

なんかこれならできそうじゃないですか。こうやって、目的をずらしながら自然と習慣を変えていくことでダイエットに成功する可能性が高まるわけです。

出世したかったら「上司攻略ゲーム」をする

ここで出てきた「ずらす」という考え方も拙著の中で紹介している「考える技術」のひとつです。課題を解決する方法として「ずらす」はかなり使える方法です。

ずらすときに大切なことは目的を「楽しいもの」「ワクワクするもの」「気持ちいいもの」にするという点です。ずらす目的も我慢を強いられるものだったり、意志が必要なものにしてしまうと元も子もありません。


例えば、「出世する」という目標を立てた場合、社内で引き上げてもらうためには上司の協力が必要です。ではもしあなたが上司のことを苦手だったとしたら。そんなときにも「ずらす」は使えます。上司をゲームのキャラ化して、目的を「上司キャラ攻略ゲームでいい点数を取る」にずらしてしまうのです。

上司キャラを攻略するために、上司の能力やスキルを観察し、ノートに能力分析を書き込みます。上司キャラをビジュアル化してみるのも臨場感が出ていいと思います。そしてあなたオリジナルの上司攻略ゲームを作り上げていくのです。「話しかけたら1点」「仕事の相談をしたら3点」というように点数を決め、加点方式で点数を積み上げていく。ゲームを続けていくと、自然と上司との関係がよくなり、結果、出世にも結び付く可能性が高まるわけです。

2021年は目標達成ができるよう、ここで仕切り直して、頑張らない方法をぜひ身につけてください。