スムースな回り方をするエンジンとして世の中に認知されてきた

 地球温暖化の防止対策として、二酸化炭素の排出削減が叫ばれ始めてからしばらく経つ。自動車の排出ガスも大きな要素のひとつで、率先して二酸化炭素削減化を進めるヨーロッパ市場で、2030年頃を目処に化石燃料からから電気エネルギー、つまりEV化への完全移行が積極的に進められているのが現状だ。

 こうした状況で大きな潮流となった技術トレンドが「ダウンサイジング」である。排気量を下げることで二酸化炭素の絶対排出量を抑えよう、という考え方である。しかし、排気量の引き下げは、直接的にエンジンパフォーマンスの低下を意味する行為でもある。排気量を小さく抑えながら、出力/トルクを確保するにはどうしたらよいか? その答えが過給機の装着だった。

 具体的には、排気量を下げる手法として、8気筒は6気筒ターボへ、6気筒は4気筒ターボへ、4気筒は3気筒ターボへという具体策が採られてきた。少シリンダー化のメリットは、エンジン本体を軽量、コンパクトにすることができ、部品点数を少なく抑えられることからコストダウンや信頼性の向上、さらに可動部の接触面積が小さくなることから摩擦損失を小さくでき、効率の向上を図ることができるといった点にある。

 一方、デメリットとしてはエンジンの回り方に関する質感の低下が挙げられる。いわゆる上質な回り方といった問題で、高次の慣性力、慣性偶力までバランスする直列6気筒が長く支持されてきたのはこのためである。逆に言えば、V8、V6、直列4気筒といったシリンダーレイアウトが、回転バランスを良化させるため、クランシャフト(軸位相も含めて)や付加物(バランサーシャフト等)で対策を施してきたことはよく知られるとおりだ。

 こうした工夫、改良により、これらのシリンダーレイアウトは実用エンジンとして熟成されてきたが、ダウンサイジングが声高に叫ばれたころから、それまであまり例を見なかった形式が実用化されるようになってきた。直列3気筒エンジンである。力のつり合いの問題から、奇数のシリンダー数が実用化されてこなかったことは歴史が示すとおりだが、直列5気筒(2基組み合わせたV10)を見てもわかるように、直列6気筒(V12)にはおよばないものの、スムースな回り方をするエンジンとして世の中に認知されてきた。

3気筒はけっしてバランスの悪いレイアウトではない

 では、ダウンサイジングのなかで増えてきた直列3気筒はどうか、という問題なのだが、たしかに直列4気筒と比べて不利な方式である。4サイクルエンジンの場合、機関の運転の基本となるのはクランクシャフト2回転、すなわち720度で、4気筒エンジンの場合は180度クランクで基本をバランスさせることができるのだが、3気筒エンジンの場合は240度(クランク角としては120度)ごとの爆発となるため、スムースさの点ではどうしても不利になる。だからといって、アンバランスという意味ではなく、体感的にスムースさを欠く回り方と感じられる、という意味である。

 ただ、ほかのシリンダーレイアウトでも同じだが、ある程度回転が上がってしまえば、滑らかな回転と感じられるようになるのは、3気筒の場合も同じである。むしろ、燃焼コントロール(インジェクションシステムや点火制御)やエンジンマウントといった周辺技術によって、かなり改善効果が見込める問題でもあるのだ。

 ともすると3気筒エンジンは安っぽい、と見られがちなようだが、これは回転上昇感やエンジン音の問題ではないかと思う。最近の3気筒エンジンは、環境性能やエコノミー性を重視した設計であるため、エンジン自体を軽量、コンパクトに仕上げることは必須となるため、ヘッドまわりが肉薄となり、エンジンによっては燃焼音や機械音が耳に付く場合もあるようだ。しかし、これはエンジン個別の問題で、3気筒だからという言い方にはつながらない。

 あくまで、エンジンの回転バランスから言えば、シリンダー数は多いほど滑らかな回り方となる。小排気量クラスで多く見かける3気筒エンジンだが、それまでの4気筒と比べてどう感じるかという話である。極低回転時や低回転域からの回転上昇で滑らかさに欠けるという基本特性は、いま触れたような周辺技術による対策で、かなり改善されている。それに、2気筒と比べれば上質な回り方であることも忘れてはならないだろう。