韓国の不買運動の影響で営業を終了したユニクロ店舗(写真・中央日報エコノミスト)

韓国で2019年に発生した日本製品不買運動が発生、最大の被害者的な存在になったのがユニクロだ。不買運動に加え、新型コロナウイルス感染症による影響で業績が悪化している。

ユニクロを運営するファーストリテイリングが10月16日に発表した決算によれば、2019年度(2019年9月〜2020年8月)の純利益は前年比44.4%減となる903億円となった。売上高は同12.3%の減収となる2兆0088億円。日本メディアは、同社の売上高と純利益がともに減少したのは17年ぶりのことと報道している。

ファーストリテイリングは業績不振の理由をコロナ禍のためと説明している。日本をはじめ海外市場で一時的に店舗を閉めたため、売上高と利益が大きく減少した。特にユニクロ事業では韓国での売り上げが急減しため、営業損失が拡大したという。同期間、韓国を含むユニクロの海外事業の売上高と営業利益はそれぞれ17.7%、63.8%減少した。

ファーストリテイリングは国別での業績を明らかにしていないが、業界では韓国だけで数百億ウォン(数十億円)の赤字となったと見ている。2019年7月に韓国で始まった日本製品不買運動が、同社の実績に悪影響を与えたとの見方だ。韓国の消費者は、日本が半導体関連部品などに対する韓国への輸出管理規制の強化が、韓国での元徴用工問題に対する報復措置だとみており、このような日本の姿勢に強く反発、これが不買運動へとつながった。

知名度の高さがユニクロ不信の理由?

2005年に韓国に進出したユニクロは、2015年から4年連続で売上高1兆ウォン(約9000億円)を突破するなど、力強い成長を続けていた。しかし、不買運動のあおりを受けて、2019年の売り上げは前年比30%減少した。2019年8月辞典で191カ所あった売り場数は、現在166カ所。特に2020年8月の1カ月間だけで9カ所を閉じた。

なかでもソウル市江南地区の一等地にあった3階規模の大型店舗である江南店も閉じたことが、いかに業績が下がったかを象徴している。2007年にオープンした同店は、一時期この地域の商圏のシンボルだった。閉店直前までは、3階から2階に売り場を減らしてなんとか営業を続けていた。ユニクロの姉妹ブランドである「ジーユー」(GU)は、2020年5月に3カ所の売り場をすべて閉じた。2018年9月の上陸以来、わずか2年だった。

ユニクロへの打撃がほかの日本ブランドと比べて大きかったのは、韓国でも知名度が高かったためだ。それゆえ、不買運動のやり玉として真っ先に挙げられた。特に2019年7月、ユニクロの岡崎健・グループ上席執行役員兼最高財務責任者(CFO)が「韓国の不買運動は長く続かない」と発言したとされ、それが知らされて以降、不買運動が激化した。

業界関係者は「ユニクロの幹部があんな失言をしたので不買運動が盛り上がったのは間違いない。失言が、ユニクロ=日本を代表する企業との認識がさらに広がったから業績悪化につながったとみている」と言う。

韓国では7000億ウォン(約647億円)台を売り上げていたアパレルブランド・デサントの状況も厳しい。2000年に韓国に進出したデサントは、10代、20代の世代を中心に高い人気を得ている。特に中学、高校の男子生徒の間では爆発的な人気がある。しかし、不買運動で状況が悪化した。デサントコリアの売上高は6156億ウォン(約568億円)で、前年の7270億ウォン(約671億円)から15%の減収となった。また、営業利益は87%の減益となる90億ウォン(約8億4000万円)だった。

デサントコリアは2019年9月から4カ月間、韓国内約750カ所の売り場に対し120億ウォン(約11億3000万円)を投じててこ入れを図った。不買運動による被害を最小化するためだった。2020年3月にも、コロナ禍で状況が厳しい売り場に対し、賃貸料や人件費対策として30億ウォン(約2億8000万円)を追加している。

悪影響あっても売り場数を増やしたデサント

しかし、状況の打開・好転には力不足だった。結局デサントは、2020年8月に8〜13歳向けの子ども向けカテゴリーの専用売り場をすべてなくした。ロッテや新世界、現代といった韓国内主要百貨店とショッピングモールなどにある47の専用売り場を、通常の売り場へ統合させている。

デサントは2016年8月に、デサントブランドとして子ども向けカテゴリーを立ち上げた。子ども向け市場が拡大し、2018年からは専用の売り場を設けて事業を展開していた。このカテゴリーの2019年の売上高は200億ウォン(約18億4600万円)台に達していた。専用の売り場はなくしたが、子ども向けカテゴリーを販売する売り場は、2019年の252カ所から今年は258カ所と増えている。

業界関係者は「子ども向けカテゴリーをすべてなくしたのではなく、通常の売り場と統合して運営するようにした過程で一部の店舗にも展開されることになったため、結果的に売り場が増えたのだろう。それでも状況は厳しいが、地方や新たな商圏での需要が拡大しており、売り場数にはそれほど変動がなかった」と説明する。

「NOジャパン」のシュプレヒコールを挙げる不買運動でユニクロとデサントを取り巻く状況は厳しいままだが、一方で善戦している日本企業もある。ABCマートがその筆頭格だ。

ABCマートコリアの2019年の売上高は5459億ウォン(約504億円)で前年比6.7%の増収、営業利益は376億ウォン(約35億円)で前年比11.9%の減益となった。それにもかかわらず、ABCマートは日本人・日本法人が発行済み株式の50%以上を持つ主要消費財企業で、かつ決算を公開している7社のうち、唯一売り上げを伸ばした。、ユニクロやデサント、韓国ミニストップ、キャノンコリアコンシューマイメージング、無印良品、ロッテアサヒ酒類などはすべて減収となった。

ABCマートコリアは、日本のABCマートが株式の99.96%を持つ企業だ。国内でスニーカーや運動靴などを販売しており、靴の流通業界ではシェアトップ。売り場数も2019年に253カ所、今年は276カ所に増やした。ソウルでは売り場を4カ所減らしたが、首都圏の京畿道で14カ所増。また済州島で4カ所、釜山と江原道でそれぞれ3カ所出店し、結果として売り場は増えている。

ABCマートは日本本社のABCマートの商標権などに対するロイヤルティーを支払っている。2010年に25億ウォン(約2億3000万円)ほどだった支払金額は毎年増額し、2018年には82億ウォン(約7億6000万円)となった。2019年も81億ウォン(約7億5000万円)を支払っている。

激しい不買運動にもかかわらずABCマートの業績が堅調だったのは、「日本の会社」だとはそれほど知られていなかったためだ。靴の流通業界関係者は、「不買運動が激しかった2019年夏にも、ABCマートの売り場は来客が絶えなかった。ユニクロとは違い、ABCマートが日本企業という事実を知らない消費者は少なくない」と指摘する。ABCマートがナイキやアディダス、ニューバランスといった多くの世界的ブランドを販売していることも、日本企業というイメージを薄めているかもしれない。

無印良品は2020年6月、ソウル市江南地区にある店舗を移転し、売り場面積を広げた。844平方メートルだったそれまでの売り場を2.5倍の2003平方メートルとしている。無印良品は2019年の売上高が前年比9.8%減収となる1243億ウォン(約115億円)、営業利益は同193.4%の減益となった。赤字転落から正面突破を図る起爆剤として、移転・拡大させたと業界関係者は見ている。

売り場統合、ソウル以外の商圏を狙う

無印良品側はオープン当時、「売り場にはソウル市内の有名ベーカリーをテナントとしていれ、他にもローカルフードを販売するなど食料品に特化したことで、江南地区の象徴的な売り場になる」と意欲的だった。それから4カ月、江南店は多くの客で賑わっている。

無印良品の全体の売り場数は前年比2カ所増の40カ所。同社側は、「200カ所を超える売り場を持つ他社と比べ、売り場数が少なかったことが不買運動による被害を相対的に抑える結果になった。不買運動による悪影響はあったが、進出当時から事前調査に時間をかけて慎重に売り場を増やすやり方を取ってきた」という。この関係者は「日本の会社ではあるが、韓国内の他の売り場と連携して多様な飲食を展開する戦略で、消費者側のニーズをつかんでいく」と述べた。

不買運動の最大の被害者であるユニクロは、今後、大規模売り場を展開していく戦略のようだ。すでに今年、4カ所をオープン。うち3カ所が大型店となっている。

新規大型店の売り場規模は1320平方メートル以上で、2007年から運営している旗艦店・ソウル江南店の約990平方メートルを超える。ほかの店舗も2090平方メートル、1478平方メートル、1624平方メートルと大規模だ。すべてが大型ショッピングモールにテナントとして入っている。ソウル市内の小規模店を整理し、地方に大型店舗を開く戦略だ。競争が激しいソウルを離れ、新たな商圏への進出に力を入れていく。

ユニクロ関係者は「消費者のニーズと商圏の消費トレンドを反映させながら売り場の統廃合や新規出店を図り、効率的な運営に努める。家族単位での訪問客が多いショッピングモールに進出したことを考え、成人用はもちろん子ども、ベビー向けのラインナップも整理・拡充して顧客ニーズをつかむ」と述べた。

(2020年11月2日号)