インターネット上で買い物をするユーザーは、無料の返品オプションを好むものですが、返品した商品がどうなっているかまで把握している人は少ないはず。そこで、カナダの公共放送局であるCBCの調査報道番組マーケットプレイスが、顧客のふりをして購入した商品を返品し、返品した商品がどのように扱われているのかを追跡調査しています。

Hidden cameras and secret trackers reveal where Amazon returns end up | CBC News

https://www.cbc.ca/news/canada/marketplace-amazon-returns-1.5753714

CBCは新規の顧客のふりをしてマーケットプレイス上でバックパックやオーバーオール、プリンター、コーヒーメーカー、テント、子どものオモチャ、家庭用品などの12個の商品を購入し、その中に隠しカメラと位置情報を追跡するためのGPSを仕込んで返品しています。CBCが返品した商品を追跡したところ、多くのマーケットプレイス商品が返品時にそのまま破棄されていることが明らかになっています。

返品した12個の商品のうち、CBCの記事が公開された時点で返品した商品が再びAmazon上で販売されたのは4個のみだそうです。返品した商品を追跡する調査が行われたのは数カ月前ですが、一部の商品はAmazonの倉庫に保管されたままで、その他はすでに埋め立て地で廃棄処分となっています。



CBCが返品した合皮製のバックパックは、オンタリオ州ミシサガのAmazon倉庫からトロントにある廃棄物処理場までの経路を追跡することができたそうです。なお、CBCが把握しているケースだけでも、毎週少なくともトラック1台分の返品された商品が廃棄されており、多い時にはトラック3〜5台分もの商品が廃棄されているそうです。

CBCは「返品された商品の一部は埋め立て処分されるでしょう。そして、100%リサイクルされることはありません。それは不可能です」と記し、返品された商品がリサイクルされることはないと断言しています。



新型コロナウイルスのパンデミックによりEC需要はますます増加しており、カナダでは数カ月でEC市場の売上が2倍以上に膨れ上がっています。

ニュージャージー州のラトガーズ大学でサプライチェーン管理と環境政策について研究しているケビン・ライオンズ氏によれば、オンライン上で購入された商品の30〜40%が返送されているそうです。一方で、実店舗で購入した商品の場合、その数は10%未満にまで減少します。

また、小売業における返品プロセスの合理化を専門とするテクノロジー企業のOptoroによると、毎年4000億ドル(約42兆円)相当の商品が小売業者に返品されており、アメリカでは50億ポンド(約230万トン)もの廃棄物が発生していると推測されています。



この調査結果に対し、Amazonのグローバルマーケティングやチーフコマース戦略を担当するジェイソン・ゴールドバーグ氏は、顧客が必要以上に多くの商品を購入し、不要なものだけを返品するように促す販売戦術が「環境とビジネスに悲劇的な影響を及ぼしました」と主張しています。また、EC市場の小売業者にとって「製品の返品を効果的に処理することは非常に困難で費用がかかるオペレーションであり、返品された商品の半分が新品として販売できれば幸運です。大量の商品を清算・改修・リサイクル・埋め立てなどの手段で処分する必要があります」と述べ、返品された商品の多くが新品として転売することは不可能であると述べました。

加えて、Amazonの上級広報マネージャーであるアリッサ・ブロニコウスキー氏は、マーケットプレイスの調査はAmazon側の調査と矛盾すると述べており、「過剰在庫と返品在庫の大部分は、商品の状態に応じて、他の顧客や清算人に転売されたり、サプライヤーに返品されたり、慈善団体に寄付されたりしています。安全や衛生上の理由などで、製品の再販・寄付・リサイクルが不可能な場合がありますが、これが発生する件数をゼロにするために懸命に取り組んでいます」とCBCに対して語っています。なお、CBCはAmazonに返品された商品の何%が廃棄処理されているかを尋ねていますが、回答は得られなかったそうです。

一方、フランスのテレビ調査によれば、Amazonの返品在庫や過剰在庫の数十万点が廃棄処分されているそうで、Amazon側の主張と食い違う結果となっています。