コロナ騒動の余波を受ける外食も一律ではない。サイゼリヤは中国の店舗休業が打撃、鳥貴族は自助努力で健闘している(写真:サイゼリヤは風間仁一郎、鳥貴族は記者撮影)

新型コロナウイルス禍で、街は自粛ムード一色。個々の企業も輸出・内需問わず、かつてない打撃に見舞われている。

そうした中、3月16日発売の『会社四季報』(2020年2集春号)では、全上場企業3778社に対し、担当記者が新型コロナウイルスの影響や企業業績の進捗状況などを総力取材。独自の業績予想を立てている。

前号の1集新春号とまったく異なるのは、今号では記事中に「肺炎」の記述がある企業が663社にものぼったことだ。約5.7社に1社の割合となった。感染拡大が止まらない未知のウイルスを恐れ、消費者に身近な外食企業の業績にも深く影を落としている。

中国の店舗休業が直撃したサイゼリヤとゼンショー

外食不振を象徴する1つが、低価格のイタリアンを国内外でチェーン展開するサイゼリヤだ。国内の店舗では、2019年12月に発売した「アロスティチーニ(ラムの串焼き)」や「田舎風やわらかキャベツのスープ」といった新商品がヒットし、今年1〜2月は前年比で既存店客数が3〜4%伸びる好調だった。


ただし、サイゼリヤが稼ぐ営業利益のうち約45%は、海外の店舗によるもの。海外で運営する411店舗のうち、上海133店、広州118店、北京80店(いずれも2019年8月末時点)と、大多数の店舗を中国に構えている。

そうした中国の店舗は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1月下旬の春節以降、大半の店舗が休業に追いこまれた。2月最終週から順次営業を再開しているものの、平常時のような客足は見込めないだろう。「売上高や利益への影響はまだ不明」(IR担当者)とするが、サイゼリヤの業績に急ブレーキがかかっていることは確実である。

また中国で「すき家」412店舗を運営するゼンショーホールディングスも、「グループ全体で国内外約9800店舗あるため、全体業績に与える影響は小さい」(広報・IR担当者)としながらも、2月は約140店舗を休業したうえ、外出禁止令の影響によって営業中の店舗も客足が激減したという。

もちろん、まさに国内で、新型コロナウイルスが強烈な逆風となっている外食チェーンも存在する。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスである。

ロイヤルホールディングスは売上高の45%を外食事業が稼いでいる。ただ、実は利益を最も稼いでいるのはホテル事業。「リッチモンドホテル」のブランドで、全国41のビジネスホテルを展開する。ホテル事業が売上高に占める割合は22%にすぎないが、利益面では外食事業の1.5倍を稼ぎ出しており、要の事業になっている。

リッチモンドホテルのメイン顧客は、出張で利用するビジネスパーソンなどのリピート客だ。「インバウンドの宿泊客の割合は1割台」(ロイヤルホールディングス)で、訪日客の激減による稼働率への直接的な影響は、ほかのホテルと比較すると軽い。とはいえ目下、多くのホテルが値下げに走っているため、宿泊単価の相場が下がっている。リッチモンドホテルも追随して、宿泊単価を下げざるをえず、収益を圧迫している状況である。

だがしかし、コロナウイルスの逆風にめげず、業績が上ぶれしそうな外食企業もないではない。居酒屋チェーンの鳥貴族だ。

鳥貴族では、2017年から2018年にかけて店舗数を急速に拡大しすぎたことや、2017年10月に「全品280円均一」から「同298円均一(税抜き)」へと値上げしたことが引き金となって、客数が長らく低迷。業績も落ち込んでいた。

そのため2018年後半から新規出店を凍結、自社の店舗同士で顧客を食い合って不採算となった店舗を閉鎖、既存店の客数回復に力を注いだ。それまで年2回に絞っていたメニュー改定も、だし巻き卵などの月替わり商品を投入するようにし、食材の国産100%も積極的にアピールした。

あえて上方修正せず、計画据え置いた鳥貴族

値上げから2年が経過したこともあり、既存店の客数は2019年11月から2020年2月にかけて4カ月連続で前年を上回る。加えて、部門ごとの採算管理を徹底するアメーバ経営を導入し、店舗単位での食材や人員配置を効率化したことで、利益も劇的に回復している。

3月6日に発表した2020年7月期の中間期決算(2019年8月〜2020年1月)では、営業利益が13億5800万円(前年同期比3.8倍)となり、年間で13億円を見込む会社計画を中間期だけで超過する好進捗だった。


コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

鳥貴族の場合、企業の宴会利用というよりも、仲間内での少人数での利用がほとんど。主要顧客は若年層のため、「足元で客足への影響はそれほど大きくない」(広報・IR担当者)とするが、「新型コロナウイルスによる影響が最悪となった場合でも達成可能な数字」として、通期での売上高や営業利益は期初計画を上方修正せず据え置いた。

以上、『会社四季報』では、業界を取り巻く激変ぶりを丹念に取材、総合的に吟味し、1社1社、独自の業績予想を立てている。サイゼリヤ鳥貴族についても、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、妥当と考える業績予想を打ち出した。ほかにも、「気になるあの企業」の業績予想がどうなっているか、ぜひ自身の目で確かめていただきたい。