お金があるとどうしても、それを目当てにした的外れの女性たちが近寄ってくることがある(写真:buritora/PIXTA)

婚活市場で、年収の高かったり資産があったりする男性は人気だ。加えて、住んでいる場所、見た目、年齢、職業などでも人気の度合いは変わってくるのだが、お金があるとどうしても、それを目当てにした的外れの女性たちが近寄ってくることがある。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、毎回1人の婚活者に焦点を当てて、苦悩や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、“経済力のある47歳の男性の婚活記”を記しながら、「結婚とお金」について考えてみたい。

お金ありも人柄もいいが、結婚に至らない理由

昨年の今頃、日本の南西に当たる観光で有名な島から飛行機に乗って、矢島恒夫(47歳、仮名)が、面談にやってきた。大きな手提げ袋の中からチョコレートやクッキーの大箱を出すと、言った。

「つまらないものですけど、お土産です。皆さんで食べてください」


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「まあ、こんなにたくさん! ありがとうございます」と私が言うと、純朴な笑顔を向けてきた。身長が高くふくよかな体型。いかにも人のよさそうな雰囲気の男性だった。

「ここ3、4年、結婚を本気で考えるようになって、婚活を始めたんですが、なかなかいい出会いがないんですよ。土地柄、周りは結婚が早い。身近で候補者を探すことには限界を感じまして、全国の女性を対象にお見合いをしようと。私との結婚を考えてくれる女性がいるなら、飛行機に乗って日本全国、どこにでも会いに行こうと思っています」

物腰は柔らかかったが、決意は硬いようだった。そして、こんなことも言った。

婚活期間中は、そこに使うお金は惜しみません」

聞けば、地元での商売がうまくいっていて、年収も1000万円近くあるという。さらに海沿いにリゾートマンションを2棟所有し、その賃貸料金も入ってくる。それ以外にも株の配当が毎年あるようだった。

入会の手続きを済ませ、お見合い写真をスタジオで撮影して、恒夫の婚活がスタートした。

普通ならこれだけの条件が揃っていれば、お見合いはいくらでも組めるのだが、恒夫の場合は結婚したら女性が島に移り住まなければならない。観光開発され、独自の食文化もあり、中心地は都会と変わらない繁華街になっているが、女性側も遠方に嫁ぐには、相当の覚悟がいる。

北の地で生まれた女性が、親や友達と別れて南の地に永住をするのは一大決心だ。また、都会で生まれ育った女性の場合、島での暮らしを現実のものとして捉えたときに、二の足を踏んでしまうだろう。

そんな中でも恒夫は果敢に申し込みをかけていき、昨年の8月までは毎月いくつかのお見合いをしていた。しかし、2、3回のデートを終えると交際終了となり、結婚に結びつく相手にはなかなか巡り会えずにいた。

ところが、9月に入ってからはサイトで申し込みをかけることが少なくなった。気になったので、「お見合いの申し込み、どんどんしましょうね」と連絡を入れていたのだが、「はい、申し込みします」という返信は来るものの、お見合いをすることもなく、昨年は終わってしまった。

年が明けて、九州で1つ、お見合いが組めた。それを終えたら、東京に来るという。久しぶりなので時間をたっぷりとって面談をすることにした。

紹介見合いで来た女性の非常識ぶり

事務所にやってきた恒夫は、また紙袋いっぱいのお土産を持ってきてくれた。

「毎回同じようなものですけど、皆さんで食べてください」

どこまでも人がよく純朴だ。しかしこれが、婚活市場ではあだとなってしまったようだった。

恒夫はソファに腰をかけると、この4カ月間にあった出来事を語り出した。サイトでのお見合いを休んでいたのは、知り合いに紹介をされた女性たちと会っていたからだという。

「3人と会いました。それがもう散々な目に遭って」

まず9月に会ったのは、都内の一流ファッションブランドに勤める女性。東京に住む恒夫の伯父が加入している保険のセールスレディからの紹介だったという。

「初めてのときは、伯父さん、その女性、私の3人でホテルのラウンジで会いました。都会的な雰囲気を持ったオシャレな人で、“こんな人と結婚できたらいいな”と思いました。男は、やっぱりきれいな人には弱いですからね」

その日の別れ際に、「今度お食事に行きませんか」と誘うと、「はい、ぜひ」という返事が返ってきた。連絡先を交換して別れ、その2週間後に再び上京してデートをした。

「都内のドイツ料理のお店でランチをしました。私が過去に何度か行ったことのある店を予約したんです。待ち合わせがお店の前だったのですが、12時直前に、『仕事で遅れます』という連絡が入ってきた。『待っていますよ』と返信したものの、どのくらい遅れるかはわからなくて、来るか、来るかと待っていたら、40分近く遅刻してきました。私は立ちっぱなしですよ。で、来たときに少しムッとしたんですが、食事をしたら会話は楽しかった。そこで、次に会う約束をして、その日は別れました」

次のデートは翌月に入ってすぐだった。前回は自分が店を選んだので、「どこか行きたいお店があったら、そこにしましょう」と、店選びを任せた。すると、都内の天ぷら屋を指定してきたので、そこを予約した。当日地図を頼りに行ってみると、店の前に看板が出ていない。潜り戸を入って行くと、カウンターだけの小さなお店で、知る人ぞ知る超有店だった。

「雰囲気だけで高級な店だとわかりました。案内された予約席で待っていたのですが、時間になっても来ない。その日も30分遅刻をしてきました。その間、お店の人に『すいません』と謝りっぱなし。で、待っている間はやることがないので、メニューを見せてもらおうかと思ったら、その店にはメニューがないっていうんです。すべてがお任せ。ドリンクメニューはあったのですが、初めて見るような銘柄のお酒ばかりが載っていて、どのお酒にも値段が書いてありませんでした」

やっと女性が現れ、天ぷらのコースがスタートした。野菜、キノコ類、魚介のコースが一通り終わると、「この後は、よろしかったらお好みでご注文ください」と板前が言った。すると、彼女は、高級食材の天ぷらを、5、6品追加注文したという。最後にご飯とお新香とお味噌汁でしめて終了。そして、お会計となった。

「レジでお金を払おうとして、びっくりしました。5万円でいくらもお釣りが来ない金額だったんです。慌ててカードで支払いをしました」

また、食事を終えてからカフェでお茶をしたのだか、そのときの会話に、憤慨と脱力を感じたという。

「『私は、この先5年くらいは結婚する気はない』っていうんです。43歳の女性が、ですよ! で、『そういう私を待ちきれなくて2股かけるなら、それでもかまわないですよ』と。結婚相手を真剣に探している。だからお見合いしたんじゃないのか! これじゃあ、ただのメッシー君じゃないか!!  あ、メッシー君なんて、もう死語ですかね」

そして、その食事以来、恒夫はバカらしくなって彼女には連絡を入れなくなった。すると、向こうからの連絡もなく、自然消滅的に関係が終わった。

「生活費は30万円ください。あなたは通い婚で」

“天ぷら女性”との関係が終わった頃、知人から同じ島に住む42歳の女性を紹介された。彼女は島で生まれ育ったが、東京で就職。その後結婚をし、子どもを2人授かった。しかし、旦那が浮気をして離婚。子どもを連れて島に戻ってきていた。

「会ったときから、すごく積極的な女性でした。結婚の具体的な話をしてきて、『あなたさえよければ、すぐに結婚してもいい』と。だけど、話を詰めていくうちに、何か言ってることがおかしいと思うようになって」

彼女は今仕事をしていて、毎月20万円の収入がある。別れた元夫から毎月10万円の養育費が振り込まれていて、1カ月30万円で生活をしている。再婚したら、元夫からの養育費もストップするだろう。仕事を辞めて専業主婦になりたいので、生活費を保証してほしい。

「つまりは30万円を毎月家に入れろということですよね。それは私の今の経済状況ならできる。でも、彼女が言う結婚生活というのが、『今の暮らしは変えたくないから、私と子どもたちは今の家に住むので、あなたは週末に私たちの所に通ってくる週末婚にしましょう』と。さらに、『もしも2人の間に子どもが生まれたら、私と子ども3人は今の場所で暮らして、あなたは通い婚を続けてください』って言うんです。こんなバカげた話がありますか?」

真顔でこの話をする女性を前に、“この人との結婚はない”と判断した。

「私の商売は地場産業。地元に根ざしている仕事なので、今住んでいる所を離れるわけにはいかない。もっと自由に身動きが取れればいいのかもしれないけれど、家業だし、今の仕事で今の収入を得ているのだから、仕事を変わるわけにはいかない。『だったらあなたが私のところに通ってくる通い婚ですよ』と言われても、それには納得できませんよ。生活するためのお金を出すのは私なんですから」

“30万円通い婚女性”との縁が終わった頃、今度は大学時代にお世話になった教授から、縁談を持ちかけられた。相手は43歳の女性。

「『相手の女性に渡す“釣書”を作りなさい』って、言われました。パソコンで打ったものは、正式じゃないからダメ。和紙に毛筆で、住所、氏名、生年月日、職歴、家族構成などを書く、昔ながらの身上書。和紙と筆ペンを買って、一生懸命に書きましたよ。そして、写真を添えて、教授に渡したんです」

それから、数日後に、ホテルのラウンジで、その女性とお見合いをした。

「会っていろいろな話をしていくうちに、『あなたは、真剣に婚活をされているみたいだから、私はふさわしくないと思う』と言い出したんです。“え、ええーっ?”と思って」

結婚を真剣に考えてのお見合いではなかったのか。

「彼女が言うには、『今ある資格を取るために勉強中だし、マネーセミナーにも出かけている。私が探しているのは、結婚相手ではなくて、一緒に食事をしたり、お互いを高め合ったりする話ができる友達だ』と。じゃあ、なんであんなキチンとした釣書を欲しがったのか? おそらく教授の勘違いだったと思うのですが、もう骨折り損のくたびれ儲けって、このことですよ」

恒夫はここまで話すと、大きなため息をついた。

「何でしょう。40代で独身の女性って、キャラが濃い人が多いというか。まずは自分の生活があって、そこに結婚を組み入れようとしている。何から何まで自分本位。まずは自分の生活があって、その次が男性との生活なので、上から目線の人が多い気がしました」

そして、こんなことも言った。

「よく婚活記事の中に『今回の男性は、食事をしたら割り勘で幻滅した』っていうのがありますよね。私は、女性と食事をして、一度も割り勘にしたことはないです。でも、割り勘にしたくなる気持ちもわかりますよ。結婚を真剣に考えてもいないのに、人に紹介されたからと言って、ご飯を食べにくる。ならば、男のほうも、半分請求したくなりますよね」

とはいえ、ここで婚活をやめてしまったら、結婚もなくなってしまうことは恒夫もわかっていた。

「失敗しても続けていくしかないと思っています。あと、こちらが“結婚”“結婚”と前のめりになっていると、変な人を引き寄せてしまう。結婚をチラつかせれば、おいしいものが食べられる、とか。あと、籍だけは夫婦だけれど、お金の出どころにされてしまうような結婚はしたくない。焦る気持ちもあるんですが、一つひとつが経験だと思って、これからは相手のことをしっかり見ていきます」

お金に対する価値観から見える人間性

確かに結婚に焦りすぎると、相手を見る目が曇る。また、焦りが相手にわかってしまうと、そこに付け込まれる。男女逆パターンで、結婚に焦っている女性の中には、男性から“結婚”という言葉をチラつかされて、体の関係になり、遊ばれたり、金品を貢がされたりすることもある。

男女が付き合うときや結婚するときには、お金の問題は常について回ることだ。お金に対する考え方や使い方には、その人の人間性が透けて見える。

どんなに見た目がタイプだったとしても、奢られることを当たり前だと思ったり、お金を平気で要求したりしてくるような人は、そういう人間性なのだと認識したほうがいい。もちろん、その人のためにお金を使うことが喜びであると言うのなら、それはそれでいいのだが。

どういう結婚相手を選ぶかは、最終的には個人の選択だ。