【杉山 仁】BABYMETALはサポメン“鞘師里保”の加入でどこへ向かうのか 新たな伝説が始まる

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新生BABYMETALを見たか

10月11日に発売された最新アルバム『METAL GALAXY』がアメリカのビルボードチャートで初登場13位にランクイン――。1969年に坂本九が記録した14位を56年ぶりに上回り、日本人女性アーティストとしての史上最高位を更新したBABYMETAL。彼女たちが11月16日から、最新アルバム発売後初の日本ツアー『METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN』をさいたまスーパーアリーナと大阪城ホールで開催する。

2019年10月11日にカリフォルニア州イングルウッドで開催された「METAL GALAXY WORLD TOUR LIVE」 photo by gettyimages

【写真】BABYMETALの圧倒的パフォーマンス

結成当初は「アイドル」と「メタル」を組み合わせた斬新なコンセプトから、「一発屋なのか本物なのか」とも言われていたBABYMETALだが、今年で9年目を迎え、日本、そして世界を代表するアーティストの一組になっている。このタイミングで、グループのこれまでを改めて振り返ってみたい。

BABYMETALは、もともと2010年に学校や部活動をテーマにした成長期限定ユニット・「さくら学院」の「重音部」としてスタートした。メンバーの年齢は結成当時、SU-METALが12歳、MOAMETAL、YUIMETALが11歳。2013年以降はさくら学院から独立したグループとなり、ライブでは“神バンド”と呼ばれる超絶技巧のバンドを従えてアイドル/メタル双方のプロフェッショナルが手を取り合うアーティストとして進化を遂げていった。

左から、YUIMETAL、SU-METAL、MOAMETAL photo by gettyimages

「ソニスフィアの奇跡」

その最大の特徴は、もともと熱心なメタル・リスナーだったプロデューサーのKOBA-METAL氏の影響による本格的なメタルサウンドと、本物のアイドルならではの華のあるパフォーマンスのハイブリッドであること。誰も体験したことのない斬新な音楽性/パフォーマンスによってメタリカのラーズ・ウルリッヒやジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードを筆頭にメタルの重鎮からの支持も厚く、BABYMETALの人気を世界に伝えることとなった。

2014年7月5日「Sonisphere Festival」photo by gettyimages

中でも大きな転機になったのは、『Summer Sonic 2013』に出演したメタリカのラーズ・ウルリッヒが彼女たちのライブを観たことなどが経緯のひとつとなり実現した、「ソニスフィアの奇跡」と呼ばれる2014年のイギリスの音楽フェスティバル『Sonisphere Festival UK』での出来事だ。

この年のヘッドライナーはメタリカ、アイアン・メイデン、ザ・プロディジーの3組。シーンのレジェンドや本格派が多数出演するゴリゴリのメタルフェスに、1stアルバム『BABYMETAL』リリース後、まだ高校生と中学生だったBABYMETALが出演した。

硬派なメタル・リスナーが集まるフェスとあって、ラインナップ発表当初は現地のファンの間で賛否両論が巻き起こった。さらに、注目度の高さを受けて主催者側が当初予定していた3000〜5000人規模のステージから、急遽6万人規模のメインステージに出演を変更。アイドルが本場のメタルフェスに出演するという経験は、さながら「敵地」に乗り込むようなものだったかもしれない。

途方もないプレッシャーだったと予想される。だが、パフォーマンス中にモッシュピットが生まれたり、終演後にアンコールを求める声が上がったりするなど、本場の観客を圧倒して大成功を収める。こうした出来事をきっかけに、イギリスはメンバーの「第二の故郷」と呼べる場所になった。

2014年7月5日「Sonisphere Festival」photo by gettyimages

成人を迎えて…

この「ソニスフィアの奇跡」が世界的なブレイクの発火点となり、以降は海外での活動がさらに広がる。これまでにレディー・ガガやレッド・ホット・チリペッパーズ、KORNらの本国でのツアーの前座を務めたほか、自身の海外ツアーの規模も拡大。同時に、2016年にリリースしたメタルの多様性を詰め込んだ2ndアルバム『METAL RESISTANCE』も日本のアルバム・チャート1位だけでなく、アメリカで39位、イギリスで15位を記録し、日本人女性アーティストによる各国の記録を塗りかえていった。

「Alternative Press Music Awards 2016」photo by gettyimages

その出来事から、今年で5年。BABYMETALにも様々な変化が訪れている。まずは、メンバーの成人。結成当初は学生だった彼女たちも成人を迎え、現在ではアーティストとしてより成熟した魅力を表現するようになっている。もともと凛とした強さを感じさせるようだったSU-METALのボーカルはますます表現力豊かになり、MOAMETALのダンスにも可愛さだけでなく、可憐さや力強さが加わっている。

そしてもうひとつ、大きな出来事となったのが、MOAMETALとともにダンス面でグループを支えてきたYUIMETALの脱退だ。2017年の12月以降、体調不良のため公演を欠席していたYUIMETAL は、2018年10月19日にグループの脱退を発表した。

その間、BABYMETALはサポートダンサーを迎えてツアーを敢行し、2018年12月のオーストラリアの「Good Things Festival 2018」出演を最後に、一度ライブの場から姿を消すことになる。

“アヴェンジャーズ”召喚

そして2019年6月に横浜アリーナで行われた2019年最初のライブ『BABYMETAL AWAKENS - THE SUN ALSO RISES -』にて、今後は“アヴェンジャーズ”と呼ばれる3人のサポートダンサーから公演ごとに1名が召喚され、メンバーとステージを共にすることが発表された。アヴェンジャーズのメンバーは、さくら学院の2019年度の生徒会長を務める藤平華乃、さくら学院OBの岡崎百々子、そして元モーニング娘。の鞘師里保。新体制での初のライブとなる当日に登場したのは、鞘師里保だった。

「Glastonbury Festival 2019」左から鞘師里保、SU-METAL、MOAMETAL photo by gettyimages

鞘師里保といえば、高いダンス力によって、モーニング娘。がフォーメーションダンスを生かした路線に舵を切るきっかけをつくったエースのひとり。日本の別事務所出身のメンバーがサポートに加わるというなかなか前例のない出来事は大きな話題となった。もちろん、SU-METAL、MOAMETALとともに鉄壁のトライアングルを形成してきたYUIMETALの代役は誰にとっても高いハードルとなる。そのため、当初は歓喜の声と同時に、戸惑いの声も上がっていた。

とはいえ、鞘師はSU-METALの広島アクターズスクール時代のスクールメイトでもあるメンバー所縁の人物であり、BABYMETALが2019年に出演したイギリス最大のロックフェスティバル『Glastonbury Festival』などでもエネルギッシュなダンスで大舞台を乗り切っている。「彼女が2人と並ぶと違和感がある」との声もないわけではない。だが、鞘師らアヴェンジャーズの存在は、神バンドとともにBABYMETALのライブを支える存在になっていくことが期待される。

また、さくら学院の在校生/卒業生ではない鞘師の起用によって、BABYMETALのファン層がまた新たな広がりを見せているのも印象的だ。もともと「BABY」と「METAL」という一見相反する要素をひとつにして人気を集めてきたBABYMETALは、メンバー自身のインタビューでも語られている通り、本来価値観が異なる様々な人々を繋ぐ力を持っている。鞘師里保の起用は、グループのそうした魅力を改めて感じる機会でもあるように思う。

広大な音楽ジャーニーへ誘う

BABYMETALは最新アルバム『METAL GALAXY』でも、これまで以上に様々な要素を取り入れている。この作品には、スウェーデンのサバトンのヨアキム・ブローデンやアーチ・エネミーのアリッサ・ホワイト=グラズ、アメリカのポリフィアのティモシー・ヘンソン&スコット・ルペイジ、タイのラッパーF.HERO、そしてギターソロで参加したB'zの松本孝弘といった様々なミュージシャンがゲスト参加している。

photo by gettyimages

また、音楽的にも「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」でのトランス、「Shanti Shanti Shanti」でのエスニック風味、「↑↓←→BBAB」でのフューチャーベース、「BxMxC」でのトラップのフロウ(リズム、韻)を使ったラップなど、古今東西のクラブ・ミュージックやヒップホップ、民族音楽といったメタル以外の要素を積極的に取り入れて、銀河のように広大な音楽ジャーニーを繰り広げている。こうした広がりは、BABYMETALにかかわる人々の広がりの結果でもあるのかもしれない。

11月16日からスタートする『METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN』は、鉄壁の神バンドとアヴェンジャーズによるサポート体制で、最新アルバム『METAL GALAXY』をリリースした今のBABYMETALならではの魅力を感じられる機会になりそうだ。