<度重なる中国軍艦の無断侵入、レーダー探知を避けるため自動識別スイッチオフで通航していた確信犯ぶりをフィリピン国軍は指摘>

領有権論争をめぐって緊張が続く南シナ海の周辺で、中国が強気の行動を繰り返している。フィリピン国軍は8月14日、中国海軍の軍艦計5隻が7月と8月にフィリピンの「内海」に位置するシブツ海峡を無断で通航したと発表した。

シブツ海峡は国際航行に利用されており、あらゆる国の船舶は沿岸国の平和や秩序を害さない限り、他国の領海を通告や許可なしで航行できる「無害通航権」を有している。ただし軍艦の場合は沿岸国に事前に通告するのが慣例で、中国はその慣例を守っていなかった。しかも、中国の軍艦はレーダーで探知されないよう自動識別装置のスイッチを切っていた上に、直線でなく曲線の航路を取ったことから「無害」とは言えないと、フィリピン国軍は主張している。

中国の軍艦がフィリピン領海に通告なしで侵入するのは今回が初めてではない。7月22日には駐フィリピン中国大使の趙鑑華(チャオ・チエンホア)がロレンザーナ国防相に対し、軍艦が通航する場合は事前通告を行うよう中国海軍に指示する、と約束したばかりだった。

<本誌2019年8月27日号掲載>

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※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。

ジェームズ・パターソン