欲しいものが簡単に安く手に入る手段のひとつとして、当然の存在となっているフリマアプリ。今、もっとも30代女性に利用されている「メルカリ」の配信サービスが始まったのが2013年の7月ですが、その1年前、2012年の7月には、女子のためのフリマアプリとして「フリル(現ラクマ)」が登場。ファッション雑誌などの人気読者モデルがこぞって使い、それが宣伝にも繋がって爆発的にヒットし、「フリマアプリは、5年くらい前から“普通”に使っている」と振り返る人が多いです。これって、つまりフリマアプリの黎明期からということにほかなりません。

「フリル」では、主に20〜30代のファッションアイテムが個人売買されていました。新品タグ付きの未使用品や、1〜2回程度着用した程度の美品が定価の半額程度で買えたのは、読者モデルがファッションブランドの展示会で70%引きで購入したものだったり、人気アパレルブランドのスタッフが月のノルマで社販で買って着ないままのものだったり、タレント活動をしていて常に新しい服を着る必要のあった女の子たちが売り手に多くいたからと言われています。まさに、同世代の「欲しい」が安く手に入ったのです。

その頃、ひとり暮らしの働く20代女性のお宅に部屋の片づけ取材で尋ねたとき、肩掛けできる大型のショッパー3つに、タグ付きの服や靴がぎゅうぎゅうに詰め込まれていました。聞くと、「週末に少しずつフリマアプリに出品する」とのこと。彼女の場合は月に10着くらい売り、3万円〜5万円程度になるといっていました。

当時、マルシェや野外フリーマーケットも流行っていましたが、出店はタグをつけたりなど準備が大変なわりに、1日がかりで売っても、半分以上を持ち帰るなんてこともザラです。イベントとして楽しむ分にはとてもいいですが、収入面でおいしいかと言うとそうでもありません。スマホをポチポチとするだけで、あとは放置しておいて、売れたら対応すればいいというのは、忙しく働く女性にとっては便利極まりないですし、そのうえ、コンスタントに3〜5万円になるのですから、利用する人が増えるのも当然です。

せっかく買ったのだから、自分で着ればいいのにと言ったら「置いておくだけでじゃまだし、サンプルセールのときに試着しないで買っちゃったから、実際着たら似合わなかったり、そもそも着られない服もある」と笑っていました。お店で売っているレベルの品が半額以下……そんなお宝が、「フリル」にはたくさん登場したのです。

2012年は震災の翌年ということもあり、消費に関して、直接的被害には合わなかった働く30〜40代にも心理的に大きな影響がありました。浮かれずに地に足がついた生活をすべき、享楽的に散財せず安く買い物がしたいという気持ちもフリマアプリのヒットに関係があるでしょう。また、絆について考えさせられることも多かった時代。会ったこともない、見ず知らずの人とやりとりをして、その人からものを受け継ぐという行為に対して、暖かみや幸せを味わいやすかったというのもあるでしょう。

取り巻く状況がどんどん変わる、フリマアプリ業界

しかし、2015年のリニューアルに伴い、男性も利用可能に。女子の園だった「フリル」が荒れだしました。出品アイテムもそうですが、「誰か、自分の服を喜んで着てくれる人に買ってもらえるのが嬉しかったのに、その買い手が男性で、しつこく絡んできたりされて本当にイヤだった」など、イヤな経験をした人も出てきました。そのため、「フリル」から「メルカリ」にアプリを変えたという女子も多いです。とはいえ、売れたら支払う出品手数料が「メルカリ」が10%に対し、「フリル」は3.5%。どちらにも出品して売れたほうで売る、「メルカリ」では値段設定を高くして出品するというツワモノもいます。

「メルカリ」は、今やフリマアプリの代名詞ともいえるもの。個人売買の老舗サイト、「ヤフーオークション」から派生したアプリ「ヤフオク!」にも現在はフリマ機能がありますが、「ヤフオク!」より「メルカリ」のほうが30〜40代女性には親近感があるよう。実際のところ、出品手数料は有料会員なら8.6%と安く、会員でなくても「メルカリ」と同じ10%。しかも、「メルカリ」や「ラクマ」は入金の引き出し手数料が200円ほどかかりますが、「ヤフオク!」は無料です。出品も慣れれば1分程度で行なえます。「『メルカリ』が出品や購入がいちばん簡単でしょ?」というのはある意味思い込みなのです。ちなみに筆者は「ヤフオク!」派です。

しかし、「メルカリ」が他のフリマアプリと大きく違うのが、売り上げ金を引きださずに、そのお金を「メルカリ」での購入代金支払いに使えること。つまり、現金のやりとりなく「メルカリ」内で買い物をし続けられるわけです。そのため、普通にお店や公式WEBサイトで買える服でも「メルカリ」で売っているなら、「簡単に買えて家に届くから『メルカリ』で買っちゃおう」となるのです。その上、現在はメルペイが導入され、「メルカリ」での売り上げ金を全国80万か所のiD対応店舗で使える仕組みに。しかも、2019年3月にはLINE Payと業務提携を発表。電子マネーが強くなれば、引き出し手数料を払わなければいけないというシチュエーションはますます少なくなるでしょう。30〜40代の働く女性のフリマアプリ「メルカリ」最強説は、しばらく続きそうです。

とはいえ、フリマアプリは基本的に「相手が誰だかわからないまま売り買いする」もの。便利でお得なお財布が常にピンチな女子たちの強い味方なだけでは終わりません。また、リユースや中古が当たり前の世代でも、「これはさすがに買いたくない」というものもあります。その2では、働く30〜40代に聞いたフリマアプリトラブルと、フリマアプリで買えるもの買えないものを紹介します。

売るほうも買うほうも、一度ハマってしまったら、二度と抜けられなくなる魅力がフリマアプリにはあるのかもしれません。

フリマアプリで買いものをするときの注意点は?使用済みのスキンケアアイテムはNGだけど、メイクアイテムはOK?アンチフリマアプリの意見まで一挙ご紹介。〜その2〜に続きます。

※2019年7月17日現在の数字です。