寺川綾さんが考える世界水泳という舞台とは【写真:荒川祐史】

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「世界水泳カウントダウン連載」競泳開幕まであと21日―週末特別企画・寺川綾さん後編

 五輪を超える規模で2年に1度行われる水泳の“世界一決定戦”、世界水泳(テレビ朝日系で独占中継)が7月12日に開幕する。なかでも、注目を集めるのは競泳だ。金メダルを獲得すれば、1年後の東京五輪出場が内定する今大会。「THE ANSWER」は競泳開幕の30日前からカウントダウン連載を行い、出場25選手のインタビューに加え、特別企画を織り交ぜながら大会を盛り上げる。

 開幕まであと21日となった第10回は、週末特別企画としてロンドン五輪メダリストで5度の世界水泳出場歴を誇る寺川綾さんが登場。前後編に分けて、今大会に臨む日本代表“トビウオジャパン”、世界水泳の見どころなどについて語ってくれた。後編では、寺川さんが考える世界水泳という舞台について語る。

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 1973年からスタートし、今回で18回目を迎える世界水泳。2001年の福岡大会以降は2年に1度、奇数年に開催されている。競泳に加え、アーティスティックスイミング、飛込、ハイダイビング、水球、オープンウォータースイミングの全6競技が行われ、世界180を超える国と地域から2500人以上の選手が参加。水泳界では五輪に匹敵する一大イベントとなっている。それでは、実際に選手にとって世界水泳とはどんな舞台なのだろうか。寺川さんはこう語る。

「世界における現時点での自分の立ち位置を明確に測れる場所ですね。いろいろ国際大会はありますけど、世界水泳は誰もが最高のコンディションで臨む舞台。ここでの結果次第で、世界に与える印象も変わってきます。オリンピック前年に開催される時は、世界水泳での結果がそのままオリンピックの結果に反映されるくらい大切になります」

1年後の五輪とほぼ同条件「世界でトップを争う選手は必ず合わせてきます」

 2003年の第10回大会以降、オリンピック前年に開催された世界水泳で、競泳の日本代表選手は4人が金メダルを獲得。そのうち3人が翌年の五輪でメダル獲得に成功している。さらに、メダルを獲得した23種目のうち15種目で、翌年の五輪でメダル獲得に至った。つまり、今回の世界水泳は東京五輪のメダリストを占う上で、重要な意味を持つこととなる。

 また、7月21日から始まる競泳個人種目では、金メダルを獲得すれば来年に控えた東京五輪への出場権が内定。リレー種目では、世界水泳の上位12チームに五輪出場権が与えられることになっている。それだけに「オリンピックの前年に開催される大会と、翌年に開催される大会では、雰囲気が全然違うんです」と寺川さんは明かす。

「もちろん、どの大会も全力で勝負に臨みますが、オリンピックが懸かるともう一押しが変わってくる。かなりハイレベルな戦いが期待できると思います。しかも、来年のオリンピックは東京開催で、今年の世界水泳は東京と時差のない韓国で開催。オリンピックのシミュレーションとしては最高の舞台ですよね」

 開催時期、開催場所など、重要な条件が揃った最高の舞台だからこそ、出場する日本の選手たちは「一切言い訳はできないですよね」と、厳しくも愛のある檄を飛ばす。

「例えば、パリで開催される大会だったら『ちょっと時差が……』とか調整が上手くいかないこともあるかもしれません。でも、今回は時差もないし、結果を出せる条件が整っていますから、選手にとってマイナス要素はありません。少し厳しいことを言うかもしれませんが、今回の世界水泳にコンディショニングを合わせられなかったら、来年のオリンピックにも合わせられないでしょう。世界でトップを争う選手は必ず合わせてきますから」

思い出に残る大会は初出場の2001年「どの選手も顔つきや雰囲気が普段とは違っていた」

 世界のトップスイマーたちが覇を競う世界水泳に、寺川さんは2001年に16歳で初出場して以来、5度も出場を重ねた。2011年の上海大会では50メートル背泳ぎで銀メダル、2013年のバルセロナ大会では50メートル背泳ぎと100メートル背泳ぎでそれぞれ銅メダルを獲得した。寺川さんにとって、最も思い出深い大会はいつだったのか。

「2001年に初めて出た世界水泳ですね。福岡で開催されたんですけど、とにかく周りに圧倒されちゃって『すごい』の一言しか出てきませんでした。当時は高校2年生。テレビで見た水泳選手がズラリと並んでいるんですよ。でも、本当はこれはダメな例ですね(苦笑)。

 北島康介さんとかジュニアの頃からずっと知っていたんですけど、世界水泳となった途端に顔つきがガラッと変わって、全くの別人みたいになっていたんです。どの選手も顔つきや雰囲気が普段とは全く違って、しっかり結果を出す。『世界と戦うって、こういうことなんだな』と思い知らされました。私は全く結果を残せなかったんですけど(200メートル背泳ぎ8位)、いろいろな気付きがあり、勉強させてもらいました」

 初出場から12年後。ロンドン五輪の100メートル背泳ぎで銅メダルを獲得した翌年、2013年バルセロナ大会では銅メダルを2つ獲得。同年12月に現役生活からの“卒業”を発表したため、最後の世界水泳となったが、「楽しみながら大会に臨めました」と振り返る。

「この時は『自分のタイムを少しでも縮めよう』『前回(2011年上海大会)は50メートル背泳ぎで銀メダルだったから金メダルを狙おう』と、自分自身との戦いを楽しみに感じていました。誰かに勝ちたい、誰かを倒そうっていう感じではなく、自分にどうやって勝つか。世界で戦う経験を重ねるうちに、課題を克服する楽しさや目標を達成する楽しさを感じるようになっていました。水泳の楽しみ方を覚えた感じですね」

 今回出場する選手たちも、それぞれがテーマを持って臨む世界水泳。だが、やはり最大の目標は東京五輪へのチケット獲得だ。現地で、そしてテレビで観戦・応援するファンには、その真剣勝負を楽しんでほしいという。

「来年のオリンピック前に、世界を相手にチャレンジできる唯一の舞台が、今回の世界水泳です。海外の強豪選手もみんなが全力でコンディションを合わせてきます。優勝すれば五輪出場が内定するわけですから、そこに向けた本気の戦いを楽しんでほしいですね。それぞれの種目によって、いろいろな楽しみ方をしてもらえると思います」

 1人でも多くの選手が、1つでも多くの種目で東京五輪に出場できるよう、熱い声援を送りたい。

(明日7月1日の第11回は選手インタビュー再開、白井璃緒が登場)

 ◆世界水泳、テレビ朝日系で連日中継 7月21日に開幕する競泳は、決勝をテレビ朝日系地上波、AbemaTVで最終日まで8夜連続放送。予選はBS朝日、AbemaTVで放送する。(THE ANSWER編集部)