FC東京MF久保建英【写真:Getty Images】

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松本戦で先制点アシスト、PKも獲得 フィジカル面の充実を支える恩師の存在

 FC東京のU-22日本代表MF久保建英は今季、J1リーグ戦でブレイクを果たしつつある。

 28日のJ1リーグ戦第9節松本戦では、FW永井謙佑の先制点をアシストすると、追加点となるPKも獲得。2-0の完勝に大きく貢献し、チームはクラブ記録の開幕9試合無敗で首位を堅持した。

 まだ17歳ながら、堂々としたプレーぶりで日本のトッププレーヤーたちと互角以上に渡り合っているが、そのなかで印象的なのがフィジカル面の充実だ。久保が小学5年生の頃からトレーニング指導に当たり、バルセロナのカンテラ(下部組織)時代から専属トレーナーを務めている木場克己氏は、「体幹が日本のトッププレーヤーと同じくらいのレベルになっている」と成長を実感している。

「川崎との開幕戦では、家長昭博選手とのマッチアップも鮮やかなターンをしていました。『だいぶ(力が)付いたな』というのは分かりましたね。体幹の強さが日本のトッププレーヤーと同じくらいのレベルになっている印象も持ちました。重心を低く保ちながら、コンタクトプレーの際にも重心がブレない」

 こう語る木場氏は、体幹・体軸・バランスを強化する「Koba式体幹・バランストレーニング」の開発者。育成年代のエリートアスリートから、鹿島アントラーズFW安部裕葵らトップアスリートが師事するスペシャリストだ。久保への指導も長年続けており、コミュニケーションを取りながら体作りを二人三脚で長年進めてきた。

 昨季のJリーグMVPに輝いた家長を凌ぐほどのテクニックとキレを見せた愛弟子の成長に目を細めている。

 現在は「怪我をしないように、自分の体を上手く使えるような形に作っていこう」という方針の下、地道な積み上げを継続。その結果がプロの舞台で結果を残すことにもつながっている。今季の久保は相手との競り合いで後手に回ることが少ないが、木場氏はJ1の選手を相手にしても戦えるよう、意識して取り組んできたことの成果だと明かす。

「プロになった以上は、特にJ1では相手も絶対に削りに来る。そう考えたら、倒れない体を作るよりも、相手の体を上手く使って反発力で前に進むとか、膝周りとお尻周りで、相手がガツンと来た時にも踏ん張る筋肉は付けていこうと。小5からやってきたことで、体幹の軸はできてきています。今はプロの選手の体を上手く利用して、フェイントの場面でも上半身が流れず、片足でも踏ん張れるようになっていますね」

プロとして着実に前進中 今後の課題は「海外に行った時にどうなるか」

 さらに木場氏は、久保がトップレベルの選手とも渡り合える部分を次のように指摘した。

「反転やクイックな動きです。ボクシングに例えると、パンチを避けるような動きが、脇腹とお尻でスムーズにやれている。それがフェイントでも生かされていたり、相手とぶつかって踏ん張るのではなくて、相手の力を利用することができている。動き出しの瞬発力が出てきています」

 実際に今季のJ1で、久保は対面するDFを一瞬の動きで揺さぶり、スキを生み出してチャンスにつなげることも多い。その根底となるものについて、木場氏は次のように解説している。

「基本的に、頭がブレない選手はしっかりと体幹に刺激が入って、スイッチが入る。例えば体の中心から右に頭がブレている時に右足を上げようとしたら、詰まってしまって上げられません。でも、頭が真っ直ぐになっていて姿勢が良ければ、スッと上がるわけです。重心が前に行っていても、引き上げる筋肉が弱くなってしまう。だからトレーニングでは(頭の)角度をキープすることに気をつけています」

 裏付けのある指導によって確かな成長を遂げ、着実にプロとしての歩みを進めている久保。もちろん、まだまだ満足するような段階ではなく、木場氏も「本人のなかでは上を見据えている部分も当然、あると思います」と語る。国内リーグ戦で手応えを得ている今、次の“ステップ”を意識し始めるのは自然な流れだろう。

「体に関しては、日本人との対戦で自信がついてきた。果たして海外に行った時にどうなるかというのが、これからの建英と私の課題だと思います。今は脇腹、お尻、膝周りを強化して、軸足で思った通りのプレーができるような動きですね。自分の体を自分で理解して、判断できるような自己管理ができてくると、上に行けると思います。それができていたのが(長友)佑都ですから」

 日本代表として世界と渡り合い、欧州の舞台で長く戦い続ける、教え子を引き合いに出し、木場氏は久保の成長に期待をかけた。二人三脚の“体作り”によって、久保のベースは着々と積み上げられていっている。(Football ZONE web編集部・片村光博 / Mitsuhiro Katamura)