貴景勝優勝!激動の一年を乗り越えて賜杯を抱いた若武者を、時代と大相撲の未来と「貴」の相撲道を「継ぐ者」に指名するの巻。
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何度でも連呼したくなるような響き、気持ちよく、スカッとする優勝でした。幕内最年少、ほぼ最小の若武者・貴景勝光信22歳と3ヶ月。年6場所制度となって以降では年少6位の早さ、初土俵から26場所という4位タイとなるスピード優勝は、まさに「継ぐ者」という運命を感じさせるものでした。
時代を、大相撲を、「貴」の相撲道を継いでいく。
貴乃花の「貴」、景子の「景」、勝氏の「勝」、その名に託された想いは大相撲を背負っていく責任とも言えるもの。平成の大横綱がわずかに残した直弟子たちのひとりとして、貴乃花の相撲道を背負っていってほしい。今の師匠の立場もありますので、表だって前の師匠の話をするのは難しいでしょうが、これから先も胸に教えを秘めていってほしい。そう願います。
土下座をしてでも引き止める、それぐらいの態度で臨むべき神輿であったはずなのに。今まさに土俵を去ろうとする貴乃花に対して、理事長以下幹部衆はついぞ歩み寄ることはありませんでした。「お前が服従するなら居させてやってもいいぞ」というその態度。「僕は北勝海が見たくて相撲見てたわけじゃないからな!」「誰がみんなに金を運んできたのかよく考えろ!」と言ってやりたいような気持ちでいっぱいです。
この土俵を支えてきたのは千代の富士であり、貴乃花である。彼らがいてこそ、周辺の花というのも魅力を増す。そんな愛の源泉を絶たれたとき、人は興味や関心を失うものです。急に、縁遠く感じてしまうものです。貴乃花が去り、稀勢の里も早晩髷を切るという平成の終わり。大横綱・白鵬もあと数年で引退し、こちらは協会に残るかどうかもわからないという立場。ひとつの時代が間もなく確実に終わります。
だからこそ、誰かが「継ぐ者」とならなければならない。
物語をつなげていかねばならない。
今場所の初日を終えたとき、僕はついにその指名を行ないました。貴景勝こそが継ぐ者であると。それは運命だったと感じます。貴乃花の教えを胸に宿し、復活を期す稀勢の里を無様な4連敗へと叩き落とした若者が「継ぐ者」でなくてなんなのかと。大関・貴ノ花を若武者・千代の富士が引退に追い込み、大横綱・千代の富士の時代を若武者・貴花田が終わらせたように、今この時代を受け継ぐのはこの男なのだと。
↓あぁ、やっぱり初日で引退しておけばよかった!
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ここで引退していれば伝説的な幕引き見極めだったのに!
「私にはこうなるとわかっていました」とか言えば、「弱い横綱だったけど見る目はあった」みたいな話になっていたのに!
千秋楽、大関・高安と相星で並ぶ貴景勝はまず先に土俵に上がります。立ち合い、一度つっかけてしまったのは緊張からくるものでしょうか。錦木のゆったりとした間合いに我慢がききません。二度目の立ち合い、やや遅れ気味に立ったことで一旦は土俵際まで追い込まれますが、そこから再び押し返して最後ははたき込み。
今場所たびたび見られる現象ではありますが、土の質が悪いのか、土俵がツルツルと滑ります。初日の稀勢の里も足を滑らせての負けでしたし、十四日目の貴景勝も押し込みながら足を滑らせて自分から落ちてしまいました。場所中に土が崩れるなどパサついた土俵が、この日は貴景勝に味方した格好。引いた錦木は土俵際の粘りを発揮する前に滑って落ちました。まず勝って、高安の結果を待ちます。
支度部屋では緊張を解くことなく、決定戦へ向けて淡々と準備する姿も映ります。「淡々と」というのはまさに貴乃花の相撲です。運命をその身で抱きしめるように、貴乃花の相撲道というのは一日一日を淡々と受け止めるものでした。毎日が始まりであり、毎日が終わりである。現役晩年に貴乃花が見せた仏の顔(※何考えてるかよくわからない)は、貴景勝にも受け継がれています。
↓「楽して勝ちたい」という弱い自分をねじ伏せ、まず勝って、そして決定戦でも勝つという強い自分となった!
ひとつ勝ってもまだ途中!
勝負の途中で喜びはない!
そして結びの一番。高安が勝てば優勝決定戦。しかし、こちらは「兄弟子の姿そのまま」というチャンスを活かせない取組に。決して焦る場面ではないなかで、上手を引けないままで寄っていった高安は、土俵際で御嶽海のすくい投げに転がされました。その瞬間、貴景勝の優勝が決まり、支度部屋では貴ノ岩と抱き合う貴景勝の姿が。苦労を分かち合った兄弟弟子だけの想いというものもあるのでしょう。「俺が殴られたせいで引っ越しになってすまん」「いやぁ、殴ってもらってスカッとしました」「どういう意味だお前」みたいな心の会話が。
表彰式、賜杯を抱くその瞬間。支度部屋、タイを片手に支援者一同で万歳するその瞬間。どうしてここに貴乃花はいられないのだろうかという寂しさが迫ってきます。少年の頃から目をかけ、自身の相撲道を伝えてきた直弟子が、快挙を成し遂げたというのに。自分自身のことは喜んだり悲しんだりしなくなってしまった貴乃花という男が、本当に心からの笑顔を見せられる瞬間が、今ここにあったのに。
あと1場所、あと1場所とどまっていれば、こんな喜ばしい場に立ち会えたのに。どんな風にして貴乃花は泣いたのだろうか、どんな風にしてポエム風説教を繰り出したのだろうかと、もう見ることはできない夢の場面を思い描くだに、たった1場所のすれ違いが惜しまれてなりません。このチカラ、間違いなく貴乃花から受け継がれたものなのに、それを祝うことは許されないなんて。(※貴乃花という謎の息苦しい人物から解放されたことで、貴景勝が持てるチカラを発揮できたという逆パターンなのでは?という意見は、謹んで聞き流します)。
↓先場所は三賞をくれなかった協会が、仕方なく賜杯をくれた!
<千秋楽の様子>表彰式。賜盃拝戴。優勝した貴景勝に、八角理事長より賜盃の授与。#sumo #相撲 pic.twitter.com/QYfdncSuYo
- 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) 2018年11月25日
貴の字が賜杯に刻される!
優勝額が国技館に飾られる!
それを見に行くという楽しみがまた生まれました!
↓みんな満面の笑みなのに本人だけこの無表情!
【大相撲九州場所千秋楽】貴景勝が初優勝しました。
- 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) 2018年11月25日
写真特集で→https://t.co/AaaEfMtNyU pic.twitter.com/KRxRnu85t3
「行き過ぎた貴乃花の教え」みたいなものを感じなくもないけれど、まぁいいでしょう!
勝って終わりの土俵人生ではないのだから!
まだ否定的な見解もあるようですが、三役で9勝、13勝(優勝)としたことで初場所には大関獲りがかかってくることは間違いありません。目安となる三場所33勝には11勝が必要。休場していた白鵬・鶴竜が復帰となれば簡単な星ではありませんが、この機にしっかりと決めていきたいもの。三役以上はすでに「強いの全員」と当たっているのですから、ここで9勝なり優勝なりをできるなら大関のチカラはすでにあります。早すぎるとか若すぎるなんてことはありません。
そのためにも、取り口の徹底というものが必要です。貴景勝の取り口は極端な突き押しが特徴です。低い身長ながら全体に丸く太い体型と、貴乃花直伝の四股で培った低い重心を活かして、下から相手を持ち上げるような突き押し。自分からまわしを求めることはほぼなく、突き放して距離を取り、相手がまわしに伸ばしてくる腕をおっつけてさらに相手を上へ上へと浮かせていく。まわしを欲しがる相手に対して、非常にやりづらさを与える取り口です。
一方でその取り口は、ほんの少しのことで勝ち負けが引っくり返るような危うさもあります。ちょっと足が滑っただけでも前のめりに落ちますし、身体の動きが鈍れば途端に勝てなくなります。最近の力士で言えば千代大海のような感じ。空手出身というあたりも共通項を感じさせます。この相撲は、強いときは強いけれど弱いときは弱い。そんな不安定さを生む取り口です。「大関以上を狙うなら四つ相撲も身につけて安定感を」という声も外野からは出るでしょう。
しかし、体型やここまでの道のりを考えれば、貴景勝が四つ相撲に転じても勝ち味はありません。外野の声を無視して、この突き押しを徹底していく。徹底するために、日々を大切にし、体調を管理していく。世間や外野を「無視するチカラ」というものを大切にしていってほしいもの。「何を言っても話が通じない」「聞いてるのか聞いてないのかわからない」「コミュニケーションができない」…そんな貴乃花親方の生き様を受け継ぐことが、チカラを発揮する道であろうと思います。
↓苦言を呈されても、それを無視して「まわしをカチカチにしていく」とか!
前代未聞!貴景勝、土俵上でまわし締め直し…元貴親方が追求した「相撲道」に傷 https://t.co/eutsPvSPt1
- サンスポコム (@SANSPOCOM) 2018年11月19日
何を言われても毎場所汗でヌルヌルしてる力士とかもいるわけだし、今後もカチカチでいくしかない!
まわしを持たれたら負けるんだから、握りづらいカチカチでワンチャン狙うのみ!
↓貴乃花親方も謎の詩文みたいなメッセージで、このまま頑張れと言ってくれているぞ!
貴景勝V 花田光司氏が特別寄稿「景勝よ、闘え!!ここから先は一歩も引くな!!」 https://t.co/sg93EdYKQx
- スポニチ記者ツイート スポーツ (@sponichisports) 2018年11月26日
「景勝よ、ここから先からを闘え!!」
ここから先からを闘え…??
ここから先から…??
とにかく闘え!!
どうぞ、このまま強く羽ばたいていってほしい。そして、次の世代を託せる若者の手によって、今の時代を終わらせてほしい。今すぐにとは言いませんが、これからの数年というところで、稀勢の里をしかるべき舞台で打ち倒し、花道を作ってやってほしいと思います。勝手に負けて終わるのではなく、強い若者に乗り越えられて終わる、そんな花道を。想いを託せる相手をようやく決められた、僕にとっても節目の場所となりました。
ありがとう貴景勝、おめでとう貴景勝。
「貴」の相撲をこれからも大切にしてください!
東京五輪が終わったくらいのタイミングで引導を渡してやってください!
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