「日照不足でネギが太くならない」と、畑を見回る鈴木さん(24日、茨城県常陸大宮市で)

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 秋冬野菜の産地が、9月以降の長雨や日照不足で種がまけなかったり、根腐れが発生したりと打撃を受けている。夏の猛暑、相次ぐ台風の接近・上陸に加え、秋の天候不順で、農家からは「お手上げ」の声が相次ぐ。気象庁が24日発表した11月からの3カ月予報では、北海道、東北以外では暖冬傾向になる見通し。異常気象が続いているため、農作物の管理に万全の備えが必要だ。

 茨城県常陸大宮市で秋冬ネギを1ヘクタール栽培する鈴木智さん(43)は、「収量は平年の8割ほどになるだろう。施肥量からすればあと30センチは伸びるはず。いつもならもっと太くなるのに」とため息をつく。

 8月中旬まで生育が順調だったが、9月に入って雨が続き、日照不足で成長が止まった。来週からの出荷を控える中、例年は収穫したネギの半分以上が2LかLの大型規格だが、今季は2Lはほとんど取れないという。低地の畑では排水を良好に保てず、生育の速度は1カ月も遅い。「乾燥しているくらいがネギにはいいが、長雨で畝の側面にはコケが生えてしまっている」と訴える。

 JA常陸の大宮営農経済センターの吉成朝之営農指導員は「今年の長雨にはねぎ部会の生産者全員が苦戦した。白絹病の発生予防に、雨の合間を見て殺菌剤を株元にまくなどの消毒作業にも追われた」と苦労を明かす。

 気象庁によると23日までの60日間降水量は東北から九州地方の広い範囲で平年に比べ多く、特に9月は異例の長雨、日照不足となり、今後の秋冬野菜の出回りに響いている。9月の降水量は富山や鳥取など7地点で記録を更新、大阪、京都などでは統計史上最も月間日照時間が少なかった。

 広島県三次市のハウスと露地2・3ヘクタールでハクサイやダイコン、アスパラガスなどを栽培する和泉敏明さん(65)は、9月に雨で畑の準備ができず、露地のダイコンとハクサイ40アールは作付けできなかった。7月には西日本豪雨でハウスが水没し、天候不順に苦慮している。和泉さんは「夏は猛暑で秋は梅雨のように雨続き。どうしようもできず、収入は激減する」と強調した上で、「野菜の値段が高いことだけが注目されがちだが、その裏で農家が泣いていることを知ってほしい」と訴える。

 近畿地方でブロッコリーやホウレンソウなどを作る30代の農家も「天候不順で品薄のときこそ稼ぎ時、やり方次第と思ってきたが、猛暑と長雨、台風で今年はお手上げ」と明かす。収入が激減する見通しという。

 富山県高岡市で米や、サトイモやキャベツを作る中山悠平さん(32)の畑では、7月の干ばつと猛暑、8月半ばからの雨と曇天で根腐れなど湿害が発生。排水したものの効果は乏しかった。通常は既に始まっているキャベツの収穫は今年は2週間以上遅れ11月にずれ込む見通しだ。サトイモは需要の見込める大きさまで育たず、2サイズはダウンするという。「天候対策は限界がある。今年はやりようがなかった。台風の塩害もあり各地で農家が本当に大変な思いをしている」と語る。

 一方、北海道では、6〜8月の降水量は平年の1・7倍の一方、9月は月間降水量が統計開始以降で最も少ない地帯があるなど、本州とは逆の天候だった。北竜町で米とハウスメロン、ソバを作る橋本哲さん(38)は米の10アール収量が平年と比べて30キロほど落ち込んだ。7月の大雨などで水に弱いソバはほぼ全滅だった。「今年は米の直接支払交付金の廃止に加えて天候不順による収量の減少で、経営への打撃が大きい」と嘆く。

北日本以外は暖冬 降水量平年並み


 気象庁は24日、11〜1月の天候の3カ月予報を発表した。今後、エルニーニョ現象が発生する可能性が高く、寒気の影響を受けにくいため平均気温は北日本以外で全国的に高く、暖冬になると予測する。降水量は東日本日本海側を除き、ほぼ平年並みを見込む。

 平均気温は東日本以西では平年よりも高くなり、北日本は平年並みか高い見込み。同庁は、秋にエルニーニョ現象が発生する可能性が70%と予測する。エルニーニョ発生時は、上空の偏西風が中国大陸では平年よりも南を流れ、日本付近では北に蛇行する。そのため、東・西日本から奄美・沖縄では北からの寒気の流れ込みが弱くなり、冬の平均気温は東日本以西では高くなる傾向がある。

 降水量は、東日本日本海側では寒気の影響を受けにくく、曇りや雨・雪の日が少ないため、降水量は平年並みか少なくなる見込み。その他の地域はほぼ平年並みとなる。北日本日本海側の降雪量はほぼ平年並みの見通しだ。