WASHハウスの店舗内(写真:WASHハウス)

赤やオレンジ、青といった外装で、店内が明るく、清潔そうな店舗。ひときわ目を引く看板。最近、街のいたるところでやけに目立つのがコインランドリーだ。いまや店舗数は右肩上がり。この20年で倍増、さらに増殖中だ。2017年度時点では国内に約2万店と推計されている。


『会社四季報 業界地図』では、こうした最新の業界動向から「オールドエコノミー」までを網羅。主要な業界プレーヤーはもちろん、その関係性までを解説している。2019年版では、特にシェアリング・エコノミーに注目。カーシェアやシェアオフィスなども紹介している。「モノ・サービス・場所などを、多くの人と共有する」という意味では、コインランドリーもその一形態といえそうだ。

コインランドリーが拡大する3つの理由

「昔のコインランドリーは銭湯に併設されていることが多かった。いまは働く女性の需要も増え、明るく開放的で、清潔感のある店舗が多くなってきている」(コインランドリー業界専門誌「ランドリービジネスマガジン」の中澤孝治編集長)。

コインランドリーが拡大している理由は大きく3つだ。共働き家庭が増え、家事時間を短縮したいというニーズが高まった。また、アレルギー対策などから、布団や毛布を丸洗いしたいという需要が高まっている。そして、洗濯中の待ち時間に、自社のサービスや商品を消費してもらえる点に企業が着目し始めている。


コインランドリー機器メーカー3強の一角、TOSEIによると、「1週間分の洗濯物も、洗濯から乾燥まで1時間ほどで終えられる」(同社マーケティング部の荻野耕次部長)という。洗濯機の大きさを選択できるので、一人暮らしだろうと、大人数だろうと、洗濯にかかる時間に変わりはない。さらに「電気で乾かす家庭用と違い、コインランドリーでの乾燥はガスを使うため短時間で乾く。しかも大きなドラムで乾かすため、シワにもなりにくい」(同)。

また、布団や毛布など、家庭では洗濯できない大きな物まで丸洗いできる大型の洗濯機を備えている店舗もある。布団の丸洗いや高温乾燥はダニなどアレルギー対策として効果的だ。宅配クリーニング等で布団を洗っている人もいるが、返却までに日数がかかるため、そうそう気軽に利用できるものでもない。それが1日ですむとなれば利用者には朗報だろう。

粗利率は最低でも60%!!

需要の増加に着目し、コインランドリー運営に参入する企業もじわじわ広がりつつある。「コインランドリーは洗濯中の待ち時間が発生するので、そこを狙っている」(中澤編集長)。コンビニ大手のユニー・ファミリーマートホールディングスは2018年3月からコインランドリー併設店の展開を始めた。2019年度末までに300店を目指すという。車関連用品の販売店オートバックスや業務用スーパーを展開するG-7ホールディングスも、2016年度からコインランドリーとの併設店を展開している。

コインランドリーは基本的に無人店舗が多く、人件費も少なくて済む。「粗利率は最低でも60%ほど」(コインランドリー運営や機器販売のファミリーレンタリース鈴木國夫会長)という利益率の高さから、個人が投資で始めることも多い。

一時は生産が追いつかず、納品まで9カ月待ちという状況も発生。コインランドリー機器メーカー各社は、生産能力の増強を急いでいる。前述のTOSEIは2017〜2018年度にかけて22億円を投じ、生産能力を2倍近くに引き上げ、月産2000台体制を目指す(2018年度上期時点では550台)。販売台数、売上高ともトップのアクアや、大手の一角を占めるエレクトロラックス・ジャパンも、それぞれ能力増強を予定している。

機械も進化している。利用者がコインランドリーを離れても、洗濯が終わるとメールなどで通知してくれたり、洗濯物を盗まれないように遠隔でドアをロックできたり、中をのぞかれないように洗濯・乾燥中に洗濯窓を半透明にしたりと利便性を高めているのだ。運営者側も店舗にいなくとも各ランドリーの稼働状況を把握できたり、機械の故障が発生した場合でも遠隔操作でトラブルが回避できたりするようなシステムが構築されている。

まだまだ伸びる余地あり!?

勢いのあるコインランドリー業界だが、「日本全国平均の利用率は、世帯ベースで5〜8%ほどと推計している」(コインランドリー大手のWASHハウス阿久津浩・常務取締役管理部長)と、実はまだ利用者はそう多くない。中澤編集長も「布団が洗えるということを知らない人が大半。もっと認知が広がれば、利用者が増える可能性はある」と話す。


ファミリーレンタリースの「ランドリエ」。洗濯代行サービスなど差別化も求められている(記者撮影)

ただ、コインランドリーは他社との差別化を図りにくい業態でもある。コインランドリー用の洗濯乾燥機はアクア、TOSEI、エレクトロラックス・ジャパンの大手3メーカーがほぼ寡占。店舗名、ブランド名は違っても、使っている機械が同じなので、他社と同じサービスを提供することになる。店舗数が増え近隣に競合店ができるにつれて、価格競争に陥る懸念もある。


「最終的には広告モデルに移行して、サービス自体は無料にすることも考えている」(阿久津常務)など、独自路線を模索する企業も増えてきた。店員をおいて、洗濯から畳みまで行う洗濯代行や、洗濯物の集配を手掛ける店舗もある。「店員を置くとトラブルへの対応も迅速にでき、女性客が増えている中で犯罪の予防にもなる。また集配は思った以上に高齢者の利用が多い。今後は有人店舗が増えていくのではないか」(鈴木國夫会長)。

課題はほかにもある。ガスを使うコインランドリーは、排気などに使う管の素材に決まりがあるにもかかわらず、「安くすませるために、違法な材料を使っている店がある」(阿久津常務)との指摘もある。また都市計画法と建築基準法上、コインランドリーは工場扱いになることが多い。このため住宅地への出店が制限され、必要以上に出店可能地域が限られるというのだ。急成長しているからこそ、直面する課題も今後は増えていくことになる。