和製英語は英語圏では通じません(写真:kotoru / PIXTA)

和製英語の定義は人によって違う。ある執筆者は、英語じゃない外来語(アルバイト)や、日本語からできた単語(チャック)も和製英語と呼んでいる。私はそういう単語は和製英語だと思っていないけれど、知っておいたほうがいいと思う。

はじめまして。私の名前はアン。みんな、「アンちゃん」と呼んでいる。アメリカ生まれ、福岡県のすてきな田舎町、宗像市在住。21年前、私は初めて日本に来た。当初は日本が大嫌いだった。「なんで赤ちゃんと一緒に寝ると?」「単身赴任はおかしくない?」「あれは食べ物じゃない!」など。

でも日本に住めば住むほど、日本が好きになってきている。毎日新しい魅力を見つける。食べ物。文化。習慣。そして、言葉。最初の頃、和製英語を聞いて笑っていた。変なの。

和製英語は英語じゃないことに気がついた

でも、ある日、和製英語は英語じゃないことに気づいた。和製英語は日本語なのだ。そう思ったら、和製英語のおもしろさが見えてきた。こんなすてきな言葉を考えた日本人は天才やん!

拙著『ペットボトルは英語じゃないって知っとうと!?』でも詳しく解説しているが、和製英語の多いのは次の8カテゴリだ。

「食べ物」「ファッション」「ビジネス」「テクノロジー」「TV」「スポーツ」「クルマ」「ライフスタイル」。ここはジャパンイングリッシュの宝庫!

たとえば「食べ物」のカテゴリで見てみよう。

ドリンクバー

アメリカでは、日本にある「ドリンクバー」は見たことがない。ファミレスなどでは、ソフトドリンク、コーヒー、ティーなどがおかわり自由なところもあるけれど、セルフじゃないし、当てはまる単語はないかな。「おかわり自由」は英語で「free refills」と言う。

Are there free refills on the soft drinks?
ソフトドリンクはおかわり自由ですか

読者の皆さんがよく使うであろう「ビジネス」にはこんな言葉がある。

ビジネスホテル

英語圏では、サラリーマン向けの「ビジネスホテル」はあまりない。値段が安くて、シンプルなホテルは英語では「budget hotel」と言うけれど、あまりいいイメージがないかな。安全面も衛生面も微妙なところが少なくない。

ヨーロッパでは「business hotel」 と言うところもあるけれど、あまりポピュラーではない。単に、hotel だけでいい。アメリカでは、目的よりも値段を示す形容詞をつけることが多い。たとえば、「cheap hotel(安いホテル)」「nice hotel(いいホテル)」「fancy hotel(豪華なホテル)」など。

There are a lot of sketchy budget hotels in the U.S., so please be careful.
アメリカでは、怪しいホテルが多いから、気をつけてね。

「テクノロジー」からは今まさにこれ!

SNS

今年の春休みに、2週間くらいアメリカに行った。そこで義理の妹とSNS について話をした。妹は「SNSってなに?」と言った。SNS は英語じゃないの? 「social networking service」の頭文字を取っているのに。かなりショックだった。英語では「social media」が一般的。日本でも「ソーシャルメディア」と言う人もいるけれど、一般には「SNS」を使うことが多い。

Recently, Instagram is becoming the most popular form of social media.
最近、インスタはいちばん人気のあるSNS になった。

「ノー」を使う和製英語は、おもしろい言葉の宝庫

続いて、“くっつくと生まれる和製英語”を紹介しよう。

「アップ&ダウン」「マイ」「フリー」などいろいろあるけど、「ノー」を使う和製英語も多い。簡単な単語だからだろう。「ノースリーブ」は英語の「sleeveless」よりわかりやすい。「ノーメーク」は「I am not wearing any makeup」よりよっぽどイメージしやすい。だから、英語の文法的には変になるけれど、おもしろい和製英語の宝庫となる。

「ノー」を使う言葉でいちばん好きなのは「金曜日はノーマイカーデー」だ。この和製英語バリバリの文章は、クリスマスプレゼントみたいな私の好物だ。

英語で言うと

Friday is a day on which everyone either carpools to work or takes public transportation」。なんと、15語も必要! 和製英語には難しいことを簡単にする役割もある。

ノーメーク……………to not wear makeup
ノープラン……………to have no set schedule
ノーコン………………to have no control
ノーギャラ……………unpaid

“和製英語の進化形”にも注目してほしい。

ググる Google it

初めてこの単語に触れた時に意味がわからなかったけれど、単語の響きは好きだった。

Googleはカタカナで「グーグル」と書く。で、「グーグル」に「する」をつける。最後に「グーグル」の「ー」と「する」の「す」を外して、「ググる」の出来上がり。言語学マジック!! 命令形でもよく使われる。「ググって」はすてきな和製英語だ。英語では 「Look it up on the internet」とも言うけれど、いちばん簡単な言い方は 「Google it」。

和製英語の恐ろしい面

和製英語には恐ろしい面もある。同じ単語なのに英語とは違うというタイプの和製英語だ。

たとえば

アグレッシブ・ナイーブ
<本来の意味>
naive = 物知らず
aggressive = かなり強い人

褒め言葉じゃないから気をつけて!


英語では、「アグレッシブ」とも「ナイーブ」とも言われたくないなぁ。日本に来て、ずっと「アンちゃんはナイーブやね」と言われて、かなりイヤだった。私は物知らずじゃない!と言い返したかった。でも日本語では、「ナイーブ」は、物知らずじゃなくて繊細の意味だ。それなら、確かにアンちゃんは「ナイーブ」だ。「アグレッシブ」も同じ。「You are so aggressive」と言われたくない。

「あなたは、とても攻撃的だ」なんて。スポーツのときに言われたらいい意味だ。日本語の「活発」に近い。でも、ほかのときは、かなり強い人という意味しかない。ノーサンキューだ。

和製英語は魅力的な日本語のコミュニケーションツールだ。同時に、和製英語は英語じゃないから英語圏で使うと言いたいことが通じない可能性が高い。