ディズニーシー拡張へ その期待と不安
東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの株価が、2018年6月15日に上場来高値をつけ、18日に更新した。前日に東京ディズニーシー(TDS)の拡張計画が発表されたことを受け、再成長の余地は大きいと市場が好感した。入園者にはつらい話だが、パーク入園チケットを値上げできればさらに業績が改善すると期待されている。
TDRを巡っては2017年から、駐車場を活用して敷地を拡張するという報道が相次いだ。中には東京ディズニーランド(TDL)、TDSに続いて空をテーマにした「第三のパーク」を新設するという驚きの内容もあり、ネット上では「ランド(陸)、シー(海)ときたから空か」と妙に納得する反応もあった。オリエンタルランドは公式には沈黙を続け、18年4月15日になってTDRを拡張すると正式に表明。その際には「TDLとTDSのいずれかを広げる」との説明にとどまり、その2か月後に具体的な計画を発表するにいたったというわけだ。
具体的な計画の公表に株式市場は買いで反応
その発表内容の概要は、2023年3月期をめどに約2500億円をかけてTDS内に8つ目となる新たなエリアを設ける。投資額は01年にTDS自体を新設した時の約3400億円以来の大きさとなる。敷地はTDLとTDS両方に隣接する駐車場を転用。新アトラクションは映画「アナと雪の女王」のほか、映画「塔の上のラプンツェル」、「ピーターパン」をテーマにした4施設となる予定だ。3つの飲食施設、1つの物販施設のほか、最上位の客室を擁する高級ホテルも新設する方針。世界のディズニーパークで海をテーマにしたものはTDSしかなく、TDSは訪日外国人に人気が高いという特徴がある。高級ホテルもこの訪日外国人を強く意識したものになりそうだ。
TDRは近年、2パーク合計で年間約3000万人が訪れるが、混雑緩和が課題だった。とくにTDSはTDLよりやや手狭だが、今回の拡張で敷地が2割増える。新アトラクションによる誘客と混雑緩和の「一石二鳥」の効果を狙ったと言える。
具体的な計画の公表に株式市場は買いで反応。入園者数が3年ぶりに前期超えとなったことで2018年3月期の業績が改善されたことなどから、もともと株価が上昇基調にあったところに大きな買い材料が投下された格好だった。17年6月15日の株価は前日高値を当日安値が上回る「窓をあける」上昇を記録、終値は前日比290円(2.5%)高の1万1960円だった。その後も18日の終値が1万2000円を超えるなど、高水準を保っており、期待の高さを示しているようだ。
投資額の大きさに疑問を呈する向きも
とりわけ株式市場が期待を寄せるのはパーク入園チケット料金の値上げだ。TDLも現在改修中で、2021年3月期に「美女と野獣エリア」を開業する予定。新施設導入の一方で値上げを続けるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の1日券は今や7900円で、TDR(7400円)を上回っており、顧客に値上げが受け入れられる余地はあるとの見方が出ている。
ただ、投資額の大きさに疑問を呈する向きもある。野村証券が出したレポートには「大規模拡張プロジェクトの内容が想定以上に充実」とする半面、「投資金額が野村予想を大幅に上回る点は留意」とも記されている。財務体質は健全とされるオリエンタルランドではあるが、巨額投資を回収するためにも値上げが不可避との見方が強まっている。