決勝点を決めた大迫だが、他にもいくつかの決定機があった。フィニッシュの精度を高めたいところだ。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 ワールドカップの初戦、コロンビア戦は大迫の勝ち越しヘッドが決勝点となって、2対1と勝利を収めた。まあ、本当に運が味方した勝利だったけど、勝点3を掴めたことはなにより大きかったね。

 日本は開始3分で相手のハンドで得たPKを香川が確実に決めて先制したけど、ここで相手が退場になったのは日本にとってはラッキー、コロンビアにとってはアンラッキーだった。故意に止めたようには見えなかったから、一発レッドというのはちょっと厳しい判定に見えた。

 この序盤で日本が得た数的優位が、最終的に試合の結果を左右することになるわけだけど、それでもコロンビアの個の力は十分に感じられた。やはり少しでもスペースを空けて前向きにしてしまうと、破壊力のある攻撃を仕掛けてくる。結局は絶対的な枚数が足りないために、ゴールを奪い切るところまではいかなかったものの、何度も危ないシーンを作られていたし、結局同点にされたFKにつながる長谷部のファウルも、球際の競り合いの駆け引きでファルカオが上だったと言うしかない。

 そうしたなかで、日本は勝負強く2ゴールを挙げて勝利をもぎ取ったが、勝ったからこそ、この日の試合に関しては苦言を呈したいとも思っている。もちろん、どんな勝ちでも勝ちは勝ちだし、勝点3を獲った事実は変わらない。その点は選手たちを讃えたい。
 
 ただ、この先グループリーグ突破を争うなかで得失点差の勝負になった場合、たくさんのチャンスがあったなかで2点だけにとどまったのはちょっと不安なところだよ。決勝点を決めた大迫にしても、後半だけでゴールシーンのほかにも幾つかの決定機があったし、乾や酒井宏樹にもチャンスがあった。

 今となっては、贅沢な注文なのかもしれないけど、コロンビアが10人になって、後半半ばには完全に足が止まった状態になるまで追い詰めた。この願ってもない状況をより最大限に活かしてほしかったね。“決定力”というのは、やはり日本にとって永遠の課題なんだなと思い知らされた気がするよ。
 それに、日本は前半、数的優位に立ったにもかかわらず、ちょっと各駅停車のようなつなぎで攻撃にスピード感がなかった。これもコロンビアに同点に追いつく隙を与える要因になったと思う。

 しかし、後半になって積極的に裏へ出て行く姿勢が見られると、ようやくゴールにつながるような形も生まれ出した。相手の運動量が後半半ばを過ぎてからガクッと落ちたのも、ここで十分に敵陣に押し込めたからだろう。

 だからこそ、あと1本、2本、しっかりフィニッシュを決めきれていれば……。シュートチャンスをどんどん作っていくのは良いんだけど、きっちり枠の中に飛ばしていかなければ、これからの試合で苦戦するのは目に見えている。

 やはり、勝つには勝ったが、この決定力という課題を強豪相手の勝利の中に埋没させてしまってはいけない。相手は90分のほとんどを10人で戦っているわけで、日本は次のセネガル戦では、11人の相手に対してどういう崩しを見せられるのか。そして、数的同数の中でもきっちりとゴールを決めていけるのか。そういう問題が出てくる。

 一方で、明るい材料と言えるのは守備面だ。ディフェンス陣は相手が10人になったこともあるけど、目立ったミスもなく後半は大迫の勝ち越しゴールが生まれるまでの波状攻撃をしっかりと後押ししていた。同点にされたセットプレーは課題と言えるけど、最後は相手の反撃を粘り強く凌ぎ切ったと思うよ。危ない場面はあったけど、しっかり身体を張った守りができていた。
 
 そして、途中出場の本田も久々にセットプレーで存在感を発揮した。スタートからとなると、やや運動量に不安を抱えていたけど、相手も動きが落ちて、本田が前線で良いアクセントになる場面もあった。西野監督は、本田の良い使い道を見つけ出したと言えるよ。