NBAの2017-2018シーズンも残すところ20試合を切った。ポストシーズンに向けた熾烈なシード争いが連日繰り広げられているが、今回はプレーオフに向けて躍進しそうなチームを探ってみよう。


ルーキーながら大車輪の活躍を見せるユタ・ジャズのドノバン・ミッチェル

 現地3月17日現在、イースタンは1位のトロント・ラプターズ(52勝17敗)と2位のボストン・セルティックス(47勝22敗)、ウェスタンは1位のヒューストン・ロケッツ(55勝14敗)と2位のゴールデンステート・ウォリアーズ(53勝17敗)が勝率で抜きん出ている。両カンファレンスとも2強が上位に君臨しており、それを多くのチームが追うという状況だ。

 イースタンは3位からプレーオフ圏内の8位までが3.5ゲーム差、ウェスタンは3位から10位までが5.5ゲーム差にいる。よって、チームの順位は日替わりで乱高下するのだ。第2集団を抜け出し、2強を脅(おびや)かすチームはどこなのか――。今後の”伸びしろ”という面から予想してみよう。

 前提として、現在の順位がそのまま各チーム力の差というわけではない。離脱していた主力クラスが次々と復帰間近と報じられており、それによって戦力を急上昇させそうなチームも多いからだ。

 まずはイースタン。レブロン・ジェームズ(SF)を擁するクリーブランド・キャバリアーズ(40勝29敗)は現在3位と伸び悩んでいるが、左手骨折のケビン・ラブ(PF)と右足首を捻挫したトリスタン・トンプソン(C)が間もなく復帰の見込みだ。彼らが加われば、チーム力は大幅にアップするだろう。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 4位のワシントン・ウィザーズ(40勝30敗)も、左ひざを手術したエースのジョン・ウォール(PG)が3月下旬に復帰予定だ。さらに、デトロイト・ピストンズ(9位/30勝39敗)のレジー・ジャクソン(PG)も間もなくコートに戻ってくると言われており、プレーオフ圏内に食い込む可能性は十分にある。

 一方のウェスタンでは、右ひざ半月板を損傷したミネソタ・ティンバーウルブズ(6位/40勝30敗)のジミー・バトラー(SG)が4月上旬には復帰する可能性がある。また、大腿(だいたい)四頭筋の負傷でシーズンの大半を棒に振っているサンアントニオ・スパーズ(7位/40勝30敗)のカワイ・レナード(SF)も、早ければ今月中旬に復帰と言われている。

 そのなかでも今後、「台風の目」として期待したいのは、主力の復帰に加え、若手の成長という面で大きく躍進しそうなフィラデルフィア・76ers(イースタン6位/38勝30敗)とユタ・ジャズ(ウェスタン5位/40勝30敗)だ。

 76ersは新人王有力候補のベン・シモンズ(PG)のみならず、2年目のジョエル・エンビード(C)、さらにクロアチア出身のダリオ・シャリッチ(PF)と、チームのコアとなる若手が日々成長している。特にシモンズは平均16.3得点(ルーキー2位)、7.8リバウンド(同1位)、7.7アシスト(同1位)とマルチな才能を発揮。12月のイースタン最優秀新人賞はジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス/SF)に譲ったものの、それ以外の3ヵ月すべての月間最優秀新人賞を獲得している。本人も「今季の新人では自分がベストだとわかっている」とコメントするなど自信を深めているようだ。

 76ersは2月にシューターのマルコ・ベリネッリ(SG)とベテランのエルサン・イルヤソバ(PF)を獲得したことで、ベンチ層の厚みもさらに増した。ディフェンスの得意なロバート・コビントン(SF)やシューターのJ・J・レディック(SG)も好調を維持しているので、プレーオフ進出に向けて十分な駒は揃っている。

 さらに76ersは、もう一段階ギアを上げられる可能性を秘めている。それは、肩の故障で戦線離脱しているマーケル・フルツ(PG)の存在だ。

 2017年のドラフト全体1位で獲得したフルツは、レギュラーシーズンわずか4試合に出場しただけでチームから離れてしまった。当初の予想よりも復帰が遅れているのは、肉体的な要因だけではなく、「急激に変化したシュートフォームからイップスになったのではないか」とも心配されている。

 ブライアン・コランジェロGMはフルツが今シーズンの残りを全休する可能性も示唆するが、すでに練習は行なっているとのこと。新人王最有力と謳(うた)われたフルツの素材が一級品なのは疑いようがない。フルツの復帰が叶えば、76ersがイースタンの2強に肉薄する可能性も十分にあるだろう。

 一方、ジャズを「台風の目」として推したい理由は、ドノバン・ミッチェル(SG)の成長ぶりだ。2017年ドラフトで1巡目13位指名と、開幕前のミッチェルの評判はさほど高くなかった。しかし、10月・11月のウェスタン月間最優秀新人賞はカイル・クーズマ(ロサンゼルス・レイカーズ/PF)に譲ったものの、残りすべての月間最優秀新人賞を獲得。今季のオールスター・スラムダンクコンテストでも優勝を遂げ、一気に知名度を上昇させた。

 ミッチェルは現在ルーキー1位の平均19.9得点を記録しており、昨年12月1日のニューオーリンズ・ペリカンズ戦では41得点をマーク。ルーキーが1試合で40得点以上を記録したのは、2011年のブレイク・グリフィン(当時デトロイト・ピストンズ/PF)以来の快挙だ。

 今季のジャズは1試合平均失点はリーグ2位の99.8点。堅守を誇る守備型のチームだ。平均2.3ブロック(リーグ3位)のルディ・ゴベール(C)を軸に、2月にはディフェンスの得意なジェイ・クラウダー(PF)をキャブスから獲得して守備力をより強固なものとしている。

 さらにパサーの印象が強かった今季新加入のリッキー・ルビオ(PG)も絶好調だ。シュート力が向上し、現在キャリアハイとなる平均12.4得点をキープ。彼ら調子のいい選手が噛み合っていることで、ジャズは直近20試合を18勝2敗と驚異の成績で突き進んでいる。

 また、後半戦の”伸びしろ”という点で見ると、ウェスタン8位のニューオーリンズ・ペリカンズ(39勝30敗)も面白い。1月26日のヒューストン・ロケッツ戦でデマーカス・カズンズ(C)が左足のアキレス腱を断裂したのは大きな痛手だが、25歳のアンソニー・デイビス(PF)が覚醒した感がある。

 カズンズの欠けたチームを牽引し、2月の11試合では月間リーグ1位の平均35.0得点・13.0リバウンド(3位)・2.5スティール(2位)・2.2ブロック(3位)と大暴れ。11試合中5試合で40得点以上をマークし、カズンズ抜きでも8勝3敗の好成績を残している。ちなみに月間で平均35得点・10リバウンドを記録したのは、1982年のモーゼス・マローン以来のことだ。

 ペリカンズは2月、ニコラ・ミロティッチ(PF)をシカゴ・ブルズからトレードで獲得できたことも大きいだろう。今季開幕直前、ミロティッチは練習中にブルズのチームメイトと乱闘騒ぎを起こして顔面を骨折。その後、チームにトレードを要求したと報じられていた。この騒動がなければ獲得できなかった大物選手をシックスマンとして獲得できたことで、彼がペリカンズに好影響をもたらすことは間違いない。

 スリーポイントシュートの得意なミロティッチの加入によって、レイジョン・ロンド(PG)のパスの配給先も選択肢が広がった。また、カズンズ離脱によるインサイドの穴には、Gリーグ(※)でプレーしていたエメカ・オカフォー(C)を補強。5年ぶりにNBAに返り咲いたオカフォーは平均5.8得点・5.3リバウンドと奮起し、期待以上の活躍を見せている。

※Gリーグ=NBAゲータレードリーグの略称。将来のNBA選手を育成する目的で発足。

 対して、この終盤にきて怪しい雲行きとなってきたのは、イースタン2位のセルティックスだろうか。ひざに爆弾を抱えるエースのカイリー・アービング(PG)はプレーオフまで欠場する予定で、右手親指を負傷したマーカス・スマート(PG)の復帰も未定だ。

 さらにセルティックスは、アービングに次ぐ得点源だったジェイレン・ブラウン(SG)が試合中の脳震とうにより欠場中で、復帰は3月下旬と報じられている。まさに非常事態だ。だが、視点を変えれば「シード順位を下げてでもプレーオフに標準を合わせた」とも言える。開幕戦で左足首を骨折したゴードン・ヘイワード(SF)についても、ブラッド・スティーブンズHCは「今季中の復帰はない」と断言しているが、ヘイワード本人は「まだ希望は残されている」と今季中の復帰をあきらめていない。

 また、”2強”の一角でウォリアーズにも手痛いニュースが飛び込んできた。現在、エースのステファン・カリー(PG)とアンドレ・イグダーラ(SF)らが負傷離脱しているが、ここにきてクレイ・トンプソン(SG)が親指を、そしてケビン・デュラント(SF)が肋軟骨(ろくなんこつ)を骨折してしまったのだ。トンプソンは3月中に復帰の見込みで、デュラントは2〜3週間の離脱とは言うものの、NBA連覇にふたりの攻撃力は必要不可欠。復帰後の彼らの調子にも注目したい。

 レギュラーシーズンの終盤になって、シード争いは例年以上に大激戦となっている。76ers、ジャズ、ペリカンズは躍進するか、そして両カンファレンス2強のまさかの凋落もあるのか――。どのチームがプレーオフのシードを手にするのか、最後の最後まで目が離せない。

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