2018年クラシック候補たち
第7回:アーモンドアイ

 牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月8日/阪神・芝1600m)。その行方を占う重要なトライアル戦、GIIチューリップ賞(3月3日/阪神・芝1600m)は、1着ラッキーライラック、2着マウレア、3着リリーノーブルという結果となり、昨年の「2歳女王決定戦」GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)と同じ顔ぶれが上位を占めた(※阪神JFの着順は、1着ラッキーライラック、2着リリーノーブル、3着マウレア)。

 この結果から、今年の牝馬クラシックはこれら3頭が中心となり、その壁はかなり厚いと見られている。だが、もう1頭、その牙城を崩すことができる存在として、大きな期待を集めている馬がいる。

 美浦トレセン(茨城県)の国枝栄厩舎に所属するアーモンドアイ(牝3歳/父ロードカナロア)である。


牡馬相手にシンザン記念を快勝したアーモンドアイ

 デビューしたのは、昨年8月の2歳新馬(8月6日/新潟・芝1400m)。断然の1番人気に支持されながら2着に敗れたが、後方から馬群をさばくのに手間取って、完全に脚を余しての敗戦だった。

 その鬱憤(うっぷん)を晴らすように、2戦目の2歳未勝利(10月8日/東京・芝1600m)では、後続に3馬身半差をつける圧勝劇を披露。直線に入って、他馬が懸命に追われているのを尻目に、鞍上が持ったままで抜け出すレースぶりには多くのファンが度肝を抜かれた。

 それ以上に衝撃的だったのは、3戦目のGIIIシンザン記念(1月8日/京都・芝1600m)である。

 牡馬混合の重賞戦のうえ、雨に見舞われて馬場状態はやや重という厳しいコンディションだった。さらに、アーモンドアイはスタートで出遅れ。絶望的な状況を強いられた。

 ところが、直線を迎えると、アーモンドアイは大外一気の末脚を炸裂させる。重賞実績のある牡馬たちでさえ渋った馬場に苦しむなか、1頭だけ次元の違う走りを見せて快勝したのだ。

 このレースぶりから、一躍桜花賞の主力候補に浮上。冒頭で記した3頭を脅(おびや)かす、強力なライバルと目されている。

 そもそもアーモンドアイは、陣営がデビュー前から期待していた1頭だった。関東競馬専門紙のトラックマンがその様子を伝える。

「アーモンドアイの素質について、厩舎では当初から高く評価されていました。『調教をやればやるほど動くタイプ』と、スタッフは話していましたからね。

 シンザン記念のあと、桜花賞に直行することになりましたが、3月初めの時点で『体重は増え、体の張りもよくなって成長している』と、国枝調教師も好感触を得ています。このまま順調にいけば、『GIでも十分にやれる』と見込んでいるようです」

 シンザン記念を見れば、その能力に疑う余地はない。ただ気になるのは、そこから3カ月の休みを挟んで桜花賞に挑むローテーションだ。

 これについて、先述のトラックマンがその背景を説明する。

「2戦目を勝ったあと、少し体の回復に時間がかかって、当初予定していたレースを使わずに休養に入りました。その経験を踏まえて、シンザン記念を勝ったあとも、無理のないローテーションを選んだようです。調教できちんと仕上がるタイプなので、陣営は『休み明けでも存分にパフォーマンスを発揮できる』と強気な姿勢を見せています」

 アーモンドアイについては、もうひとつ気になることがある。父が短距離馬のロードカナロア。牝馬クラシック二冠目のGIオークス(5月20日/東京・芝2400m)への舞台適性はどうなのだろうか。

 その点についても、陣営の考えをトラックマンが聞いている。

「陣営としては、『引っかかる面はないので、2000mまでは確実にこなせる』と話しています。残り400mは未知の領域となりますが、『同世代の牝馬同士なら、通用する』と踏んでいるようです。

 かつて、短距離血統のアパパネ(※2010年に3歳牝馬三冠を達成)を、厳しいトレーニングでオークス制覇に導いた厩舎ですからね。そのノウハウを生かして、今回も何らかの手立てを考えているのではないでしょうか」

 まもなく開幕する3歳春のクラシック。変則ローテーションで挑むアーモンドアイは、その檜舞台で輝くことができるのか。初めて対戦するライバルたちとの競演が、今から楽しみでならない。

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