ルノーCEO退任の可能性が高まるゴーン氏、3社アライアンスを語る

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 カルロス・ゴーン氏が仏ルノーの最高経営責任者(CEO)を退任する可能性が強まっている。ルノーが後任の選定を始めたという報道も仏メディアなどで出ており、任期を迎える6月の株主総会で交代する可能性がある。

 ゴーン氏はルノーと日産自動車、三菱自動車の3社連合の強化に努めてきた。仏議会が17日に開いた公聴会で「(自らに権限が集中する現在の企業統治について)持続できるとは思えない。それぞれ責任を負う方向に向かっていくだろう」と話した。

 ゴーン氏のルノー取締役としての任期は今年6月の株主総会で切れるが、再任を目指し、仮にCEOを退任しても3社連合の経営を統括するポジションにとどまる思惑もあるようだ。

 日刊工業新聞では昨年2月、ゴーン氏にロングインタビューした。再掲載し3社連合の未来について考えるきっかけにしたい。

自らのテリトリーを越えることを恐れない
 -三菱自動車を仲間に入れて、ルノー・日産自動車アライアンスとして業界トップグループに入りました。他のトップグループと比べた優位性は何でしょうか。
 「他のグループに比べはるかに多様性が高い。アライアンスは3社がひとつになっているが、他のグループは企業の数では1社だ。ルノーも日産も三菱自動車も自立性を持ち、それぞれに戦略がある。だからこそ、ぶれない活動ができる。はるかに多くのアイデアが発想できる」
 
 「ルノーは主に欧州とロシアとブラジルでプレゼンスが高い。日産は北米、中国、日本で強く、三菱自は東南アジアで強い。強みが多様化しているのは利点だ。消費者にとっていいことではないか。スケールがあるからコスト効率化でき、価格設定も競争力が高いものになる。商品群も広くなる。違う会社が複数のブランドを扱っている。1社が複数のブランドを扱うよりアライアンスの方が豊かだ。これがアライアンスならではのことだ」

何年もの準備が必要
 「アライアンスの文化はまさに協業の精神だ。日夜各社が協力しているのがアライアンスだ。難しいのはわかるだろう。というのは業界で成功している例がないからだ。買収したとしても、買収する側とされる側の関係で問題が発生する。アライアンスは複雑で難しいことだ。必ずしも成功はしない。各自動車メーカーが同じ傘で協力してプラスの生産的な協力を実現している」

 「こういった複雑な領域で成功したのは、サプライヤーやハイテク企業、IT企業と協力する上で利点だ。ダイムラーとも多くのサプライヤーともうまくいっている。アライアンスの文化があるからこそ、アライアンスの従業員は、開発部門も購買部門もマーケィング部門も慣れている」

 「コンフォートゾーンを越えるのに慣れている。自らのテリトリーを越えることを恐れない。必要なものに手を伸ばすことを恐れない。そのために他のメーカーと協力できる。これは大きな優位性で文化の一部だ。一朝一夕ではできない。何年もの準備が必要で心構えも醸成しないといけない」
 
 -今アライアンスは複雑だとおっしゃいました。三菱自が加わったことでメンバー間の関係はより複雑になりませんか。
 「大きく複雑化するとは思わない。なぜなら全く同じ関係を適用するだけだ。ルノーと日産の関係のルールを三菱自に適用することだ。ルールは変わらない。若干微調整は必要かもしれないが。三菱自はスケールメリットを享受できる。三菱自は大きな見返りがあるからアライアンスに適用したいと考えている」

ブランドが混同されることは全くない
 -アライアンスのメンバーが増えると、各ブランドの個性維持とシナジー追求の両立が難しくなりませんか。
 「ルノーと日産の関係は17年間維持してきた。現時点でブランドが混同されることは全くない。お客様が比較検討をしないのだ。日本と米国は日産の存在感が高くルノーが低いから簡単だが、欧州は二つのブランドが存在して、きちんとブランドを確保している。混同されていない。重複もしていない」