映像に重ねられる効果音をたった一人で作り出す「フォーリー・アーティスト」がまさに職人技
映画やテレビ番組では、足音や物音など日常生活のなかで生まれる効果音の中には、スタジオで別に録音されたものが用いられていることがあります。特にハリウッド映画などで使われるさまざまな効果音を作り出す職人は「フォーリー・アーティスト」と呼ばれています。以下のショートムービーは、日常の1コマを描いた映像の裏でフォーリー・アーティストがどのような工夫を行っているかという光景をコミカルに描いた作品です。
女性がベッドの中でぐっすり眠っています。
朝の爽やかなBGMは、実はひとりの男性がスタジオで楽器を演奏して録音したものでした。
目覚まし時計が鳴り、女性は目を覚まします。
実はこの目覚まし時計の音もスタジオで録音されたものでした。
はだしで廊下をぺたぺたと歩く音も……
もちろんスタジオで録音されたもの。霧吹きで手のひらに水を吹きかけて……
そのまま木の板を手のひらで打ち付けると、はだしでフローリングの床を歩く音が再現されます。
今度は男性が脚立に上って、じょうろから穴の空いたボウルに水を注ぎ出しました。これは何の音かというと……
女性が浴びているシャワーの音を再現したものでした。
また女性がシャンプーで髪を洗う音も、スパゲッティにソースを絡めて、素手でかき混ぜることで、スタジオで再現しています。
実際に髪を洗う映像と重なると、シャンプーを泡立てて髪を洗っている音にしか聞こえません。
女性が朝食によく焼いたトーストを食べるシーンでは、サクッシャクッという音が流れますが……
もちろんこの音もスタジオでの録音です。男性はボクシング用のグローブを手にはめて、シリアルを押しつぶします。するとサクサクという小気味のいい音が再現されます。
モニターに映される女性の食事風景を見ながら、男性は音を重ねるタイミングを真剣なまなざしで見極めています。
今度は机の上に猫をあげて、バリカンを取り出します。一体何の音を再現するのでしょうか?
答えは電動歯ブラシの音でした。
続いてバケツにぷかぷかと浮かぶアヒルにガンマイクを向けます。
すると机の上にある女性の携帯に着信が入り、バイブレーションの音が響きます。なんと、アヒルの鳴き声が携帯のバイブレーションに当てられていたというわけ。
携帯の画面を見て、女性ははっと顔を変えます。
そして慌てたようにクローゼットから服を取り出し、着替えを始めます。
部屋の中に服が散乱するバサッという音も、男性が両手に持った扇を仰いで再現しています。
選んだ服を着て、ファスナーを上げる音も……
男性も女物の服に着替えながら再現して録音しています。
女性が鏡を見ながら口紅を塗って化粧をしますが……
男性まで同じようにマイクの前で口紅を塗って化粧をします。
そして女性が高いヒールの靴を履くのに合わせて……
男性もヒールを履きます。一見すると異様な光景ですが、もちろんこの女装は趣味ではなく、効果音の録音のためです。
そのまま男性が板の上を歩くと、コッコッというハイヒール独特の足音が響きます。
首から下は女の人ですが、顔は職人の真剣な表情そのもの。足音を鳴らすために必死で足踏みをします。
そのまま足音を録音しながら、突然どこからか拳銃を取り出します。
拳銃のスライドを引くガチャリという音は、女性が玄関の鍵を開ける音を再現するためのものでした。