県内では敵なしの米子北。2年生の佐野海舟など個々の実力に疑いの余地はない。写真:石倉利英

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 絶対王者の強さは、群を抜いて際立っていた。
 
 10月28日に行なわれた高校サッカー選手権・鳥取予選決勝。米子北が鳥取城北に4-0で勝利し、8年連続13回目の出場を決めた。2009年12月の新人戦から県内の公式戦では負けなしが続いており、10年以降、インターハイと合わせて16大会連続の全国行きとなる。
 
 今回の決勝もそうだったように、県予選は他校との実力差が大きいため、ボール支配率で圧倒して攻め続ける展開が多いが、やはり伝統のスタイルは堅守速攻。出足の鋭さと球際の激しさ、最後まで走り切る運動量で相手を封じ、カウンターで素早くゴールを目ざす戦法が持ち味だ。決勝では何度か攻め込まれる場面があったものの、終わってみれば相手のシュートは0本で、危ないシーンが皆無だった。
 
 今年は高校年代最高峰のプレミアリーグWESTに昇格。昨年WESTを制したサンフレッチェ広島ユースなど、精鋭ぞろいの強豪チームと日常的に対戦することで、自慢の堅守に磨きがかかっている。前述したディフェンスの原則に加え、押し込まれても崩れず、チャンスを狙い続けるメンタルタフネスの強化にも格好の舞台。開幕当初はあっさり失点してしまうこともあったが、中断明けの8月には当時首位のヴィッセル神戸U-18を自慢の堅守速攻で仕留めて2-1の勝利を掴むなど、結果と内容で成果を見せている。

 最終ラインの中央で堅守を支えるのは、166センチながらヘッドの強さを誇るキャプテンの三原貫汰(3年)と、カバーリングや対人などで安定したプレーを見せる宮本薫(3年)のCBコンビ。1年時の昨年からレギュラーに定着し、高いボール奪取力と豊富な運動量でJクラブも注目するボランチの佐野海舟(2年)も、守備の安定に不可欠の存在だ。

 
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 攻撃は、縦への突破からのクロスで多くのチャンスを作り出すMF坂田二千翔(3年)、MF馬場拓未(3年)の両サイドハーフや、今予選決勝で2得点を挙げたFW城市太志(3年)などが軸。昨年度の全国選手権で大会優秀選手に選ばれ、高校選抜の欧州遠征にも参加した伊藤龍生(現・鹿屋体育大)のような絶対的な柱はいないものの、いずれも運動量を活かした前線からの守備でも貢献し、チームの狙いを体現する。
 
 インターハイは初戦となった2回戦で富山一(富山)に敗れた。中村真吾監督は「今年のチームはできることが少ないので、できることの精度を高めるよう意識してきた」と語る。

 予選突破を決めた今後の目標は、プレミアリーグWESTでの残留。その戦いを通じて、チームの堅守速攻のレベルをさらに高められるか。スタイルに磨きをかけ、これまで選手権で立ちはだかってきた「ベスト16の壁」を打ち破る。

取材・文:石倉利英(フリーライター)