タフじゃなければスマホじゃない!2018年注目のアクティブ系スマホたち:山根博士のスマホよもやま話
ハイスペックモデルからコスパの良いエントリー機まで、今年も9月に多数の新型スマートフォンが発表になった。いくつかの製品は日本でも発売される予定だが、日本では存在も知られぬ新製品も数多く登場している。中国新興系メーカーもシャオミクラスならグローバルでも話題になるが、弱小メーカーの製品は中国国内でもひっそりと情報がながれるくらいだ。

スマートフォンのデザインもすべて右へ倣えと類似した方向に向かっていく中で、あえて独自のデザインにこだわりを持つメーカーもある。その1つがアクティブ系と呼ばれる製品だ。IP68の防水防塵やアメリカ国防省の納品規格「MIL」スペックに対応するだけではなく、見た目もあえてそれらしくゴツイ強さをアピールした製品に特化したメーカーも数多く出てきている。


▲パワーショベルなどを手掛ける重機メーカー、キャタピラーのスマホ

例えば赤外線サーモカメラを世界で初めて搭載した「CAT60」をリリースしているキャタピラーは、IFA2017で2つのスマートフォンを発表している。

そのうちの1つ、「CAT S41」はチップセットがメディアテックのHelio X20オクタコア2.3GHz、ディスプレイは5インチフルHD。赤外線カメラは搭載していないものの、このスペックで449ドルは悪くない。

ちなみにCAT60は2016年2月の発表と1年前の製品で599ドル。特殊カメラを搭載していはいるものの、Snapdragon 617、4.7インチHDディスプレイのスペックは価格からするとやや物足りない。まもなく日本でも発売になるが、価格は9万円前後とのことだ。



▲IFA2017では最新スペックのスマホを2機種発表

CAT S41の外観も十分すぎるほどアクティブなデザインであり、2メートル防水や手袋をはめたままでも操作しやすい3つのボタンをディスプレイ下部に搭載するなど、アウトドアユースを第一に考えられた製品である。

しかし腕時計のG-SHOCKが以外にもスーツ姿にも合うように、CAT S41をタウンユースとして日常的に使うのも悪くない。「CAT」ロゴ入りのTシャツがオフィシャルで販売されていることからわかるように、キャタピラーはCATを1つのブランドとしても展開している。



▲高精細なディスプレイを搭載するCAT S41

CATのようなアクティブスマートフォンは非メジャーなメーカーからも数多く出ている。一昔前であれば品質も悪く、見た目だけアクティブで実際に水をかけたら浸水してしまうような製品もよく見かけた。だが最近ではアクティブ端末を専業にするメーカーも出てくるなど、防水とタフ仕様を他社との差別化ポイントとしてしっかりとした品質を目指した製品が増えている。

IFA2017のあと、サンフランシスコで開催されたMWCA(Mobile World Congress Americas)2017の会場。E&L Mobileというメーカーが大きなブースを出していた。同社の製品はスマートフォン、フィーチャーフォンともに全てが防水端末だ。スマートフォンのスペックそのものはメディアテックのチップセットにディスプレイ解像度はHDなど、コストを抑えたミッドレンジ。しかし中国語でいうところの「三防」すなわち防水、防塵、耐衝撃性を備えている。



▲無名メーカーながら大きなブースを構えるE&L Mobile

E&Lの製品はアマゾンなどのオンラインで販売しているという。ブースの担当によると売れ行きは「悪くない」とのこと。ユーザーはやはり普通のスマートフォンには飽き足らない層が多く、アクティブ系端末の需要は「これだけでもビジネスになるだけの数はある」とのこと。現在はアメリカ、ロシア、中国などで製品を販売しているが、グローバル展開を考えているそうだ。



▲端末の陳列方法もアウトドアをイメージしたもの

MWC2017には相手先ブランドで端末を製造するOEM系メーカーも数多く出ていたが、アクティブ系端末で販路拡大を目指すメーカーもあった。たとえばPhonemaxは一般的なスマートフォンも製造するOEMメーカーで、南米などに製品を輸出している。しかし最近はOEMビジネスも競争が激化しており、自社ブランドでの製品展開を考えているとのこと。



▲OEMメーカーが自社ブランド製品に選んだのがアクティブ系スマホ

同社のRockyシリーズはIP68対応のタフ端末。スペックは他社のミッドレンジと同等のメディアテックMT6737クアッドコアチップセット、5インチフルHDディスプレイ、RAM2GBなど。5000mAhとバッテリーサイズは大型だ。個人ユースだけではなくB2B向けの展開も考えた製品で、展示会に出展することで代理店や販売店を探しているとのこと。



▲黄色ではなく緑色のボディーカラーで少しでも差別化を図る

いずれはアクティブ系のスマートフォンメーカーだけが集まっても小さい展示会が開けるかもしれないくらい、製品は次々に登場している。実はアメリカでは大手のメーカーもアクティブ系端末を出しているほどで、この手の製品への人気は意外と高い。

中でもサムスンは「Galaxy S Active」シリーズをほぼ毎年販売。2017年は18.5:9のインフィニティディスプレイを搭載した「Galaxy S8 Active」をAT&T向けに投入している。とある店舗の店員によると「Galaxy S Activeシリーズを毎年買い替えるお客さんもいる」というほど根強い人気があるそうだ。



▲サムスンもアクティブなスマホGalaxy S8 Activeを販売している

アメリカでは京セラもアクティブ系端末を数多く出しており、警察で採用されるなどそのタフな性能はプロユースにも評判が高い。昨年発売した「Kyocera Duraforce PRO」は今年韓国向けにも投入することがきまった。販売キャリアのSKテレコムによるとDuraforce PROはアメリカで25万台が売れたという。京セラはアクティブ系端末メーカーとしてその認知度を着々と広げているのだ。

スマートフォンはカバーを付けることで外観を変えることができるので、iPhone向けのタフ仕様なケースも多く販売されている。しかし元からタフな端末として設計された製品は、アウトドアでの使い勝手が良いだけではなく、「タフ」をベースにしたデザインコンセプトにも魅力がある。大手メーカーの派手な新製品だけではなく、アクティブ系のスマートフォンもこれからどんどん面白い製品が登場してくるだろう。