年間25万の(無意味な)資格取得を生きがいにした結果、大事なチャンスを逃すにゃんにゃんOL
定時帰りの、腰掛けOLたち。
楽な仕事に給湯室での井戸端会議、充実したアフターファイブ。
”安定”という鎧を手に入れた彼女たちは保守的で、誰かが幸せにしてくれるのを待っている。
丸の内の大手損保会社に勤める愛華(26)も、その一人。典型的な腰掛けOLである彼女には、実はこんなあだ名がある。
“にゃんにゃんOL”、と。
元OLのアリサ(29)から檄を飛ばされながらも、意中の商社マン・和樹に“可愛い”と褒められ喜ぶ愛華。しかしふと、上には上がいると悩み始める。

うららかな秋晴れの下、私と愛華は表参道の『TRUNK (HOTEL)』にいた。
フォトジェニックな写真を撮りたいらしい愛華は、夢中であらゆる角度から撮影している。そんな愛華を横目に、私は早く一杯、何か飲みたくてうずうずしている。
「愛華、もう中に入ってオーダーしてもいいかな?」
「どうぞ!そしてアリサさん、どうやったら英語が話せるようになりますか?」
突拍子もない質問に、思わず足が止まる 。
「前回、アリサさんが英語で外資系の男性たちと話しているのを見て、純粋にかっこいいと思ったんです。」
あぁ、なるほど。そういうことか。
親の仕事の都合で、私は小学校高学年から中学校の計6年間、ドイツに住んでいた。現地のインターに通っていたため、英語には不自由しない。
「あれ?でも、愛華フランス語かイタリア語習ってなかったっけ?」
そう、たしか愛華は週に1回くらい、なにか語学レッスンを受けていたはずだ。
「フランス語です!でも、やっぱり英語もいいな、と思って。」
お節介だとは思いつつも、頭の中で瞬時に計算する 。
1レッスンが(安くて)約3,500円だとして、それを週1回の計1年。年間で、約16万8千円。そこの教材費や入会費も含めると、約25万。
年収460万の中で、約25万の出費。
払えない額ではないが、彼女たちはこの“習い事”がどこまで身についているのだろうか?
-そこに投資する価値、ある?!全く元取れていなくない?
嬉しそうに歩く愛華の背中に、25万のレッスンの価値は感じられない。
資格取得にかける時間よりも、すべきことがある!!
人は、微妙な資格だけでは食べていけないという現実
「私が言うことではないと思うけど...。もう少し、役に立ちそうなものを習ったら?」
経験上、特に語学は週に1回のレッスンに通っただけでは話せるようになんてならない。自分で必死に勉強しない限り。
「えー。またアリサさんは厳しいですねぇ。フラワーアレンジメントはお家を華やかにするのに役立つし、何より英語やフランス語は、例えば和樹さんと結婚して、将来海外赴任になった時に必須じゃないですかぁ。」
ふふ、と愛らしい笑顔を浮かべながら、一生懸命『TRUNK (BAR)』を写真に収めている愛華に対して、大きなため息が出た。

そもそも和樹と結婚するなんてどこにも確証はない。何よりも、そうやってダラダラと無駄な授業料を払い続けているだけでは、何も身につかない。
根本的に、私は意味のわからない資格が大嫌いだ。
アロマにハーブ、美容何ちゃらに何とかマナー検定。資格取得に励むのは良いことかもしれないけれど、そんな実用性のない資格を取る前に、もっとすべきことがあるのでは?
「ほら、結婚して今の仕事辞めた後で役立つ資格とか?」
宅建とか、簿記など、実用性があり、困った時に身を助けてくれるような資格は世の中に溢れている。
それなのに、どうも彼女たちはそのような資格には興味がないらしい。
「んー、専門的なのはちょっと。私、文系ですし。」
-愛華が取得したアロマ系の検定は、文系ってことなの!?
心の中でツッコミを入れながら、私もそうだったなぁ、と元OL時代を思い出す。
正直、暇なのだ。
暇だからこそ無駄な資格取得に走り始め、そしてInstagramやLINEに、生半可な言語で投稿し始める。
お金を使う用事ばかりに熱心で、お金を生み出すことには無頓着
中途半端でいるならば、ゼロの方がまだいい
女性は何故か、暇になるとお金のかかる用事でスケジュールが一杯になる。
美容院にネイルサロン、エステに習い事…
仕事が忙しいとそれらの時間がもったいなく感じ、最優先事項のみを行うが、時間がある時に限って、“女磨き”に時間もお金もかけてしまう。
それは無駄な投資ではないかもしれないが、暇な時間に対し、出費は確実に増える。
仕事が終わればそれで終了。アフターファイブは自分の好きなことに時間もお金も使える。
オフィスを出た途端に、仕事のことなんて全て忘れて楽しめる。日系の優良企業なだけに、お給料の中から習い事のお金が払えないわけではない。
私自身も、時間があり余りすぎて、フラダンスを習おうとしたことさえあった。しかしその時に、ふと気がついた。
何て虚しいんだろう、と。
「あのね、愛華...時は金なりっていうことわざ、知らないの?携帯の待ち受け画面、その言葉にしたほうがいいわよ!」
時間には、限りがある。若さは日々失うし、頭脳は日々衰えていく。だからその貴重な時間を、将来のために投資しない限り、人間は衰退していく。
そのことを理解出来る人と、できない人がいる。でも少なくとも一つ言えることは、時間を無駄には出来ない、という意味だった。

そんなことを考えながらホテルを出ると、一生懸命地図を見つめながら、明らかに困っている様子で立っている旅行客がいた。
道に迷っているようだ。話を聞いていると、彼らはフランスからきたようだ。
「愛華、フランス語習ってるならチャンスじゃない!表参道駅への行き方、教えてあげて!」
そう愛華に促すと、一生懸命可愛らしく何か話しているが、どうも通じていない。
「You wanna go to Omotesando Staion? Then.. (表参道駅に行きたいんですか?それなら...)」
見かねて英語で案内すると、彼らは理解したようで、笑顔で「アリガトウ」と言いながらにこやかに駅の方へ向かって歩き始めた。
「私、フランス語まだ習い始めたばかりなんで。実際に話すと、難しいですね。」
-実際に話すことが語学の醍醐味じゃないの?!
しかも道案内なんて、最初のレッスンで習いそうなことなのに。年間の授業料、25万円の価値は、本当にあるのかしら?
「やっぱり、英語もいいなぁ。アリサさんみたいに話せるようになりたいし、フランス語より、英語を習おうかな。」
秋色のロングスカートを揺らしながら、愛華が嬉しそうに、パンプスのかかとを鳴らしながら歩いている。
「一つのことを、極めた方がいいんじゃない?」
私はファー付きローファーで、その隣をスタスタと歩いていた。
「今日の写真、何て投稿しようかなー?」
愛華が嬉しそうに写真を見返している。
にゃんにゃんOL達がする努力は、たまにずれている。
もっと、違うことに労力を使うべし。
愛華には言えないが、胸の内でそう思った。
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