最高裁庁舎

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(台北 2日 中央社)中国大陸での事業展開の口利きと引き換えに、中国大陸側に台湾の現役軍人を紹介し、組織設立を手助けしようとしたとして、国家安全法違反に問われた陸軍の退役少将に対する裁判で、最高裁は1日、台湾高裁台中支部の判断を支持し、退役少将側の上告を棄却した。懲役8カ月の実刑が確定した。

台中支部の判決書によれば、元少将は2010年7月、中国大陸・上海で知り合った「上海市人民政府第12 弁公室主任」を名乗る男から、台湾の軍官の紹介および組織の設立・発展と引き換えに、元少将の中国大陸での事業を手助けすると持ちかけられた。元少将は2012年11月、会社から補助金が出るというのを口実に、当時の現役上校(大佐)2人をマレーシアへのゴルフ旅行に招待。費用は全て上海で知り合った男が負担した。その後、男の部下から2万5000人民元(約42万円)を受け取った元少将は、この部下の指示に従い、5000人民元(約8万4000円)と中国茶をマレーシア旅行に同行した上校2人に渡そうとしたものの、2人とも中国茶の受け取りを辞退、そのうち1人は後に現金を元少将に返金した。

元少将は2審で、国家安全法違反にあたる状況はなかったと容疑を否認。上海の男は人民解放軍の軍人であることが後に明らかになったものの、元少将は、その事実は知らなかったと供述した。

だが、裁判官は元少将と男の部下の通信記録から、2人が暗語を使用して現役軍人の個人情報をやり取りしていた事実を指摘。また、旅行に同行した上校のうち1人は、旅行中に誰と会ったかなどを口外しないよう元少将から求められたと証言した。

裁判官は、元少将は国家の安全を顧みなかったと認定。だが、紹介のために軍人を海外に連れ出したのは1度のみで、対象者はいずれも中国大陸に吸収されなかったのを斟酌(しんしゃく)し、懲役8カ月の判決を言い渡した。現金2万人民元(約33万6000円)と中国茶は没収された。

(王揚宇/編集:名切千絵)