投資家 石川貴康氏

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働きながら「副業」で稼ぐにはどうすればいいのか。いろいろなところに埋まっている「ビジネスチャンス」について、当事者に話を聞いた。なかには「もうサラリーマンには戻れない」と語る人も。ネットを使った副業で稼ぐ「コツ」とは――。

■管理費は宿泊代の30%に達することも

訪日外国人が一気に増えて不足気味となったのが宿泊施設だ。そこで注目されるのが、自宅や別荘などに有料でお客を泊める民泊ビジネス。米国発のAirbnbなど、集客や決済の仕組みを提供するサービスが日本にも浸透してきたことでブームを迎えている。

「日本へ来てくれる外国人にとって魅力的な部屋、魅力的な体験を提供できれば民泊に可能性はあると思います。私自身が若いころバックパッカーとして世界各国を旅した経験から言うと、その国ならではの経験ができる宿泊施設で、現地の人と仲良くなるというのが旅の醍醐味でした。古い日本家屋に泊まり、日本の日常を経験してもらう。そういう民泊経営ができれば人気を集めると思います」

不動産ビジネスに詳しい投資家の石川貴康さん(51歳)は、民泊についこう評価する。ただ、石川さん自身は現状の民泊ビジネスにはあまり魅力を感じていないという。

「私の知人にも東京ディズニーリゾートの地元である千葉県浦安市や、国際的な観光地・奈良市の郊外で民泊を手がけている人がいますが、そういった好条件の場所でも集客は言われるほど楽ではありません」

訪日客が急増しているといっても繁盛させるにはそれなりの経営努力が必要で、黙っていてもお客がやってくるような甘い環境ではないという。たとえばAirbnbを利用する場合、ネットに英語でPR文を書き込んだり、英語のマニュアルを整えたりする手間がかかるし、石川さんによれば「管理コストも意外に高い」。

民泊といえば自宅の空き部屋にお客を泊めるというイメージだが、最近は新たにマンションを購入して民泊を始める人が増えている。その場合、オーナー自身は部屋の清掃や管理にタッチせず、専門の管理代行会社に委託するのが普通だが、石川さんによればそのコストは「宿泊代の30%に達することもある」。一方、賃貸経営をする場合の管理費は「賃料の5%程度」。

■滞在期間は最低6泊7日以上

そもそも東京圏、関西圏、沖縄県などの国家戦略特区内に限り、滞在期間も最低6泊7日以上という厳しい条件のもとで営業が許されているのが民泊だ(表を参照)。現実にはグレーゾーンの営業も多いというが、最近は摘発される事例も相次いでいる。また、ファミリー型マンションを民泊向けに貸し出し、騒音問題で周辺住民とトラブルになるケースも増えている。

それだけのリスクを考慮すれば「サラリーマンが副業として不動産を買うなら、まずは賃貸経営を考えるべき」と石川さんは指摘する。

賃貸経営で心配なのは、「家余り」といわれるなか「継続的に入居者を確保できるか」ということだ。石川さんはサラリーマン時代に都内のワンルームマンションを900万円で買ったのを手始めに、現在では13棟・100戸の賃貸用不動産を持っているが、そのほとんどは中古で購入したものだ。

中古にこだわるのは、ずばり「居住実績があり安定した物件を選べるから」。駅に近く、交通至便で希望者が多い場所なら入居者は見つかりやすい。入居者の募集、管理、家賃の振り込みなどは不動産管理会社が代行する。「それを家賃の5%程度(石川さんの場合)の管理手数料でやってもらえるのだから、リーズナブルだと思います」。

(経済ジャーナリスト 高井 尚之 撮影=大杉和広)