神戸加入ポドルスキの長所と短所とは? Jリーグ出場4試合からプレーを分析

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FC東京戦におけるポドルスキの起用法

 今夏、J1ヴィッセル神戸に加入した元ドイツ代表FWポドルスキは、Jリーグデビュー戦となった第19節大宮アルディージャ戦で衝撃のミドルシュートを叩き込むなど2ゴールを決めて、強烈なインパクトを残した。

 だが加入から4試合目となった8月13日の第22節のFC東京戦(0-1)では、フル出場した一方で3試合連続の不発に終わった。その要因はどこにあるのか。FC東京戦やこれまでの試合から見えた、ポドルスキのプレーを分析していきたい。

 まずFC東京対神戸戦におけるポイントの一つは、神戸がFC東京に対してどのようなシステム、対策で臨むのかであった。ネルシーニョ監督が率いるチームは相手に応じてシステムを臨機応変に変え、特に守備面でマッチアップさせる傾向にあり、簡単に言えば守備時はマンマークで臨むことが多い。

 ポドルスキが加入してからの3試合(大宮、柏レイソル、鹿島アントラーズ)に関しては、相手が全て4バックだったこともあり、神戸は4バックの4-4-2を採用してきた。しかしFC東京が3バックの3-1-4-2を取り入れているなか、ネルシーニョ監督が相手に合わせてどのシステムを選択するのかに注目が集まった。

 神戸のメンバー表には、ボランチとリベロをこなせる高橋秀人の名前があり、試合が始まると3-4-1-2をベースに守備時に5バックとなるシステムを採用。ポドルスキの加入以降も、ネルシーニョ監督は相手をマンマークではめにいく戦術を継続する意思を垣間見せている。

神戸のメリットになる戦術理解度の高さ

 このマンマーク戦術のなかで、ポドルスキは戦術理解度の高さを示した。2トップの位置でプレーし、守備時にはFC東京の3バックを神戸の2トップが見るタスクが課せられていたが、1試合を通じてその役割を忠実にこなしていた。また攻撃時には、2トップの位置からボールを引き出しに機転を利かせて中盤などに下がり、ポゼッションなどのリズムを上手く作り出すなど、個人戦術の高さを伺わせた。

 ポドルスキはバイエルン・ミュンヘン、アーセナル、インテルというビッグクラブをはじめ、ドイツ代表でも130試合49得点の結果を残すなど、その実力は折り紙付きだ。また、世界の名監督の下でプレーしてきた過去を考えても、単に個の力が優れているのみでなく、タスクの遂行力が高いことが分かる。

 神戸に来てからも4-4-2や3-5-2のシステムであれ、守備時に正確なセットポジションを取っている。このことから、仮に4-4-2のサイドハーフで起用されたとしても、インサイドの絞ったポジションからアプローチに行くなど、忠実にタスクをこなしていくことは間違いないだろう。この観点から、世界トップレベルでプレーしてきたポドルスキの戦術理解度は高く、それは神戸にとって確実にメリットになる部分と言える。

 ポドルスキの最大の強みは、すでに周知のように左足の一振りでゴールを決められるシュート力だ。それはすでにJリーグデビュー戦の大宮戦で叩き込んだ強烈なゴールが証明しており、FC東京戦の前半開始1分のシーンでもターンから左足を振り抜き、ファウルを誘って直接FKを獲得している。相手にどんなに警戒されても、身体の強さを生かしたターンからの左足シュートは脅威であり、少しでも余裕を与えると危険というポドルスキの存在は、相手からすれば厄介そのものだ。

「走れるか?」の問いに…回答見せられず

 ここまでは、ポドルスキの強みを見てきたが、果たして弱みはどこにあるのか。真っ先に挙げられるのは、運動量である。つまり「走れるか?」という問いに対して、ここまではピッチ上で十分な回答を見せつけることはできなかった。

 加入後の4試合では明らかに運動量が少なく、スプリント数や動き出しの回数が少ない印象は否めない。ゴール前での一発を秘めているが、ボールに絡む動きや相手の背後に飛び出すスプリントの回数が少ないのである。

 もちろん、現在32歳のポドルスキが、年齢を重ねて熟練味が増すなかでボールを落ち着かせ、攻撃時にタメが作れるという見方もできる。しかし、それを差し引いても、スプリントして相手に脅威を与える回数が少なすぎると言えるだろう。

 現代サッカーのなかで、攻守において一定のスプリントが必要とされ、Jリーグが世界のトップレベルを目指すなかでこうした部分の向上が求められるのは言うまでもないが、今のポドルスキはスプリント数や動き出しの回数が明らかに不足している。

 実際に走行距離のデータを見ても、ここまでの4試合で9km(キロメートル)を超えた試合が一つもない。Jリーグ公式サイトで公表しているポドルスキの走行距離は以下の通りだ。

運動量や動き出しの回数が増加すれば…

第19節:vs 大宮(◯3-1勝利)

ポドルスキ(出場時間90分)=走行距離8.619(km)

※90分プレーした両軍フィールド選手の中で最下位

第20節:vs 柏(●1-3敗戦)

ポドルスキ(出場時間90分)=走行距離8.742(km)

※90分プレーした両軍フィールド選手の中で最下位

第21節:vs 鹿島(●1-2敗戦)

ポドルスキ(出場時間76分)=走行距離7.126(km)

第22節:vs FC東京(●0-1敗戦)

ポドルスキ(出場時間90分)=走行距離8.795(km)

※90分プレーした両軍フィールド選手の中でワースト2位

 90分プレーした選手を比較した時、FC東京戦では相手CBチャン・ヒョンスに次ぐ走行距離の少なさで、大宮戦と柏戦では両軍フィールドプレーヤーでワーストだった。90分の出場で8km台というのは、通常フィールドプレーヤーにおいてCBくらいのものである。前線の選手として考えれば、その運動量は明らかに物足りないもので、チームにとっても負担になっていると言わざるを得ないだろう。

 ただし逆に言えば、ゴール前でのクオリティーや決定力は今もワールドクラスの水準にあるだけに、ポドルスキの運動量や動き出しの回数が増加すれば、必然的にゴールも増え、日本のサポーターを魅了する機会も多くなるはずだ。実際、FC東京戦の後半35分の場面では、ポドルスキが最終ラインの背後に飛び出し、決定機を作っていた。

 今後、徐々に日本の気候に慣れ、コンディションが上がっていけば、運動量の面は改善されていくはずだ。ワールドクラスのプレーを試合の中でより多く見せてくれることに期待したい。

【了】

フットボールゾーンウェブ分析班●文 text by Football ZONE web analytics group

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

【動画】Jリーグ公式YouTubeチャンネルが公開したポドルスキ出場4試合のハイライト

https://www.youtube.com/watch?v=H6oIHr9radY

第19節:vs 大宮

https://www.youtube.com/watch?v=L4idqiWcIDQ

第20節:vs 柏

https://www.youtube.com/watch?v=vFIrrK8O4xg

第21節:vs 鹿島

https://www.youtube.com/watch?v=jpJuHPT6F-Q

第22節:vs FC東京