ICBM「火星14」型の試射を現地指導した金正恩氏(2017年7月5日付労働新聞より)

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北朝鮮が4日午前に行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を受けて、北朝鮮の朝鮮中央テレビは、実験成功を喜ぶ北朝鮮の人々の声を繰り返し放送している。例えば、次のような具合だ。

「発射成功の輝かしき成功を万国に宣言されたという激動的な知らせを聞き、歓喜で湧き上がっている」(教師のピョン・スボンさん)

「国防科学院の技術者が目の前にいたら抱きしめてあげたい」(平壌駅駅員のナム・チュンビンさん)

恐怖政治で鷲掴み

しかし今や、こうした北朝鮮国民の「公式」の声と表情は、彼らのホンネとかけ離れたものであることが広く知られてきている。

(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音

今回も同様である。北朝鮮メディアで伝えられる喜びの声とは異なり、北朝鮮の人々はICBM発射に冷めた反応を示しているのだ。

両江道(リャンガンド)に住む米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、次のように証言している。

「4日午後3時(現地時間)に特別重大報道があるということをテレビで知った。その後、恵山(ヘサン)市の労働党委員会からの『テレビを見るように』との通達を受け、各工場や企業所では作業を中断した。『どうせまたミサイルだろう』と思っていたが、やはりそうだった」

「特別重大報道を見たが、実際にミサイルを打ち上げるシーンがなかったこともあって、特に何も感じなかった。他の従業員たちも平然とした表情だった」

一方、別の情報筋によると、朝鮮労働党機関紙の労働新聞と朝鮮記録映画撮影所は特別取材チームを恵山に派遣し、恵山基礎食品工場の労働者が歓喜に沸く姿を撮影した。また、「撮影前には、何度かリハーサルをさせられた」という。この情報筋が語る。

「わが国のテレビ、新聞の伝える人々の姿は、すべて作られたものだ。そのまま受け取ってはいけない」

とくに若者たちは、金正恩党委員長や体制に対する批判をかなりあけっぴろげに口にすると言われる。

金正恩氏の身近にいる幹部たちこそ、恐怖政治に心を鷲掴みにされているが、庶民の意識の変化は、どんな方法をもってしても止めようのないものなのかもしれない。