渋る相手を口説く「Win-Winの数値化」

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売り込みたい商品に対し、取引先は全く関心を持ってくれない……。ビジネスシーンでは、そんなボタンのかけ違いが頻繁に起こります。原因を探っていくと、「売りたい」という自分のメリットばかり先走って、相手のメリットが置き去りになっていることがあります。

第一段階として、自分と相手のWinを把握しましょう。たとえば、売り上げを立てることが自分の目的なのに、相手の小売業者は在庫を抑えたいとする。そんなお互いのWinが不一致の場合は、角度を変えて他のメリットを洗い出します。それは「粗利」「前年比」「資金をいつ回収できるのか」なのかもしれません。そしてそこを満たす提案で、説得を試みる。つまり違う土俵に持ち込むのです。

私がかつて営業職をしていたとき、相手を口説き落とす“キラーナンバー”を大事にしていました。意思決定する取引先の心に一番刺さる数字を探って、用意しておく。そしてここぞというとき、「100万回の広告表示」「40代のシェアは80%」など、その数字を投げ込みます。これによって、あらかたポジティブな反応を引き出せました。数字とはもっとも説得力のある言語なのです。

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【story】山田さんの営業担当店舗の中でも、なかなか数字が伸びていないX店。山田さんの会社の新製品Cを置いてほしいものの、業績が悪く渋られている。現在あるAとBの製品と共に、店頭で目を引く格安商品として売り方の改善を考えたいところ。

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1.現状を把握する

自分が何を売りたいかは一旦横に置いて、売り込もうとしている取引先の状況をくまなく調査。売上高はもちろん、扱っている商品、在庫などを把握し、「ここに関して提案すれば相手の心が動くかもしれない」というポイントを絞り込んでいく。

2.商品の消化率を割り出す

新規の発注を検討してくれない原因として在庫に注目。「消化率が低い」という問題が明らかになったことで、自分のメリットを優先した「売り上げを伸ばす」だけでなく、取引先の「消化率を上げる」「在庫も減らす」という新しい角度の提案を発想できる。

3. 双方に得のある提案をする

消化率を上げるために、他店舗での新製品Cの好実績を説明。その際、「ほかでも売れたので注文してください」という説得はNG。担当者にとって大事なのは、ほかの店で売れた事実よりも自分の店が変化すること。そのシナリオを簡単な数字を使って示す。

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【結論】新製品Cを入れることで、売り上げは1万円UP、消化率60%が見込めます!

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BMコンサルティング代表 深沢真太郎
「ビジネス数学検定」日本最上位1級。企業研修などでビジネス数学を指導。『数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』など著書多数。

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(BMコンサルティング代表 深沢 真太郎)