大分県日出町の観光農園でミカン狩りを体験する外国人ユーチューバー

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 インターネット動画サイト「ユーチューブ」に自作の動画を投稿して収益を得る「ユーチューバー」を、行政がPRに起用する動きが出てきた。人気のあるユーチューバーが、地域の特産品や観光名所などを動画で紹介。100万回以上再生される動画もあり、テレビ並みかそれ以上の訴求力を持つ媒体として注目を集めている。

「壱岐牛」動画再生→100万回 大食いタレント登場 長崎県壱岐市


 長崎県壱岐市は2016年12月、ふるさと納税の返礼品として提供する「壱岐牛」やウニなどの海産物をPRする動画をユーチューブに投稿した。動画に登場するのは、「大食い」の動画で人気を集めるユーチューバーの木下ゆうかさん(32)。「壱岐牛」の焼き肉やステーキをほお張り、「すごく軟らかくておいしい」とPRする。

 視聴回数は2月上旬までに100万回を突破。投稿した16年12月は、ふるさと納税寄付額が前年同月比で2倍近い6073万円に達した。同市政策企画課は「通常、行政がつくるPR動画の視聴回数は多くて数万。予想以上の反響だ」と驚く。

JAにも反響殺到


 動画は、ふるさと納税以外の一般販売にも寄与した。紹介された「壱岐牛」は、JA壱岐市が販売する商品。動画にJA名が出たこともあり、JA直売所の四季彩館には問い合わせが殺到した。

 島外向けの販売量は1割増えたという。直売所の担当者は「動画を見て壱岐牛を食べたいと、県外から訪れた買い物客もいた」と話す。

観光農園動画再生→40万回 訪日客狙い外国人 大分県日出町


 大分県日出町は3月、同町内の観光スポットを紹介する動画をユーチューブで公開した。観光農園や藍染め工房などを紹介するのは、マレーシアや台湾などアジア圏の外国人ユーチューバー。中国語で現地情報や感想などを語ってもらい、訪日旅行客(インバウンド)需要を盛り立てる狙いだ。

 ユーチューブの動画には日本語の字幕も入れ、日本人が見ても楽しめるよう工夫した。これまで8本の動画を投稿し、視聴回数は合計で40万を超えた。

 同町は「PRする層を絞り込める上、芸能人やモデルに比べコストも抑えられる。財政が厳しい行政でも使いやすい」(商工観光課)と強調する。

TVより一層身近


 近年は、広告宣伝や情報発信をしたい事業者にユーチューバーを紹介する企業が登場。壱岐市の場合は、ユーチューバー専門のマネジメント会社ウーム(東京都港区)が、同市のPR活動での起用を提案した。

 同社によると、ユーチューバーを使ったPRは、他のメディアが苦手とする10〜30代に対する訴求力が高いのが特徴だ。週に何本も動画を投稿するユーチューバーは、視聴者にとっていつも顔を合わせている“友達”のような存在だという。

 同社の市川義典執行役員は動画PRの利点について、「テレビで取り上げるとどこか縁遠く見えるものも、自分のことのように感じやすい。特に、若年層がメインターゲットで、かつ情報発信が難しい移住や新規就農などの分野で大きな反響が期待できる」と指摘する。(金子祥也)