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●693点AFとブラックアウトフリーで被写体を逃さない
ソニーが4月21日に発表した「α9」は、有効約2,420万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラだ。4月27日から予約を開始し、5月26日の発売予定、価格はオープン、推定市場価格は500,000円前後(税別)となっている。報道向けに説明会&体験会も開催され、わずかな時間だが実機に触れることができたので、説明会の内容とともにお伝えしよう。

同時に、高級レンズ「G Master」から、フルサイズEマウント向けの超望遠ズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」も発表された。予約開始日は未定だが、7月の発売予定、メーカー希望小売価格(税別)は320,000円となっている。

○別次元の「スピード」性能

α9が主に想定するシーンはスポーツ撮影やプロの報道現場で、特に力が入っているのがスピード性能だ。技術的な詳細は省くが、世界初(ソニー調べ)となる「メモリー内蔵 35mmフルサイズ 積層型CMOSイメージセンサー」(Exmor RS)を搭載し、現行モデル「α7 II」の撮像素子(裏面照射型CMOSイメージセンサー)と比較したとき、約20倍のセンサー内(情報)読み出し速度を実現した。

これにより、電子シャッター使用時において、最高20コマ/秒の連写や、電子シャッターながら動体歪みの少ない写真を記録できる(α9はメカシャッターも装備)。最大シャッタースピードは、電子シャッターが1/32,000、メカシャッターが1/8,000だ。最大ISO感度は、拡張時でISO50〜204,800となる。

実機とデモンストレーションで驚いたのは、ブラックアウトのない連写、被写体への追従性、無音・無振動の連写だ。ブラックアウトとは、連写時の撮影と撮影の間にファインダー内が瞬間的に暗くなることをいう。α9のファインダー(EVF)は約369万画素の有機ELで、毎秒60フレーム(60fps)で書き換えている。撮像素子の高速性と相まって、すばやく動く被写体を、EVFからロストせずに追いやすい。連写以外では、EVFのリフレッシュレートは60fpsか120fpsを選べる。

被写体への追従性を高めているのは、毎秒60回というAF/AE演算と、実に693点という位相差検出方式のAFポイントだ(25点のコントラスト検出方式も装備)。像面のAFカバー率で93%を達成しており、高速で動く被写体を20コマ/秒で連写していても、ピントをほとんど外さない。記録した写真を等倍表示でシビアに判定しても、約90%は狙ったところにピントがきている(例えば、ドリブルしているサッカー選手の顔など)。

そして無音・無振動の連写。α9を構えてシャッターを押し続けたとき、本当に音と振動が伝わってこなかった。テニスやゴルフなど「音」に敏感なプロスポーツ現場、静寂なコンサート現場などで活躍するフォトグラファーに対して、強烈にアピールするに違いない。なお、電子シャッター音を鳴らしたり、連写中に液晶モニタ内で四角い枠を点滅させたりと、連写中であることをユーザーに伝える設定も可能だ。

35mmフルサイズ、高速連写という仕様から、記録メディアにも高速なものが求められる。α9は2つのメディアスロットを備え、SROT1はUHS-IIのSDHC/SDXCメモリーカードに対応している。SLOT2は、UHS-IのSD/SDHC/SDXCメモリーカード、およびメモリースティック(PROデュオ・PRO-HGデュオ・マイクロ)が使えるマルチ仕様だ。また、4K(3,840×2,160ドット)/30fpsの動画記録にも対応している。

●真のデジタル時代、幕が開けるか
今回の説明会&体験会では、α9の開発ストーリーや目指すところ、ソニーデジタルカメラ戦略なども語られた。

先述したように、α9が狙うのはプロ市場。プロ向けの映像機器では確固たる地位を築いているソニーだが、ことカメラのプロ市場には、キヤノンとニコンという2強がいる。壇上に立ったソニーマーケティング 代表取締役社長の河野弘氏は、次のように話した。

ソニーの使命は、技術に裏打ちされた製品でプロの活動を支援すること。αのカテゴリは、ソニーのミッションを体現していくところ。プロの期待を受け止め、あくなき探求のもと、進化がカタチとなってソニーしかできない製品となっていく。

いよいよ新作となるα9は、常識を打ち破る新次元の高速性能を持った革新的なカメラだ。プロにアピールできる仕上がり。創作をかきたて、撮影と表現の可能性を広げる。

プロに使ってもらうために、短期間でサポート体制を充実させていく。全国のソニーストアとαプラザにて、技術サポートやメンテナンスサービスを提供する。また、トータルのカメラ市場には、プロが大きな影響を及ぼす。さまざまな取り組みによって、ハイアマチュアから初心者まで、ファンを増やしていきたい」(河野氏)。

○夢のイメージセンサー

デジタルカメラ市場が縮小する中、レンズ交換式カメラも例外ではない。ただ、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ マーケティング部門 デジタルイメージング本部 部門長 坂本裕司氏によると、35mmフルサイズ機と対応レンズに限れば安定した市場規模を維持しており、全体における35mmフルサイズ機と対応レンズの構成比は年々高くなっているそうだ。

ソニーも着実にシェアをアップしてきたが、2016年4月の熊本地震でイメージセンサー工場が被災。生産に多大な影響が生じた(現在ではフル生産体制まで復旧している)。

だが、復旧における一つのプロジェクトとして、エンジニアや関係者が決してあきらめなかったというのが、α9に搭載されたイメージセンサー「Exmor RS」の開発だ。

「Exmor RSは夢のイメージセンサー。歴史を動かし、現実となる瞬間を待っていた。カメラの性能限界を突破し、表現に無限の可能性を開放する。αシリーズのプロユーザーは増えており、プロの声を反映させることを目指してきた。より魅力的に、革新的にする努力を続けてきて、ここに結実した」(坂本氏)。

続けて、Exmor RSやα9を説明してくれたのは、ソニーマーケティング プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長の小笠原啓克氏。ここでは技術面については割愛するが、ポイントは「電子シャッター」だ。

前ページでも紹介したように、α9は電子シャッターによって優れた高速性能を実現している。電子シャッターはその仕組み上、「動いている被写体が歪んで写る」という弱点を抱えているのだが、Exmor RSとα9は、この弱点をほぼ解決した。さらに「無音で撮影」という武器もある。

スピード性能や無音撮影を引っ提げ、α9が狙うターゲットの一つはスポーツ撮影だ。

特にプロスポーツの撮影では、画質を含めたスピード性能において、従来のハイエンド一眼レフが頂点だった。そこに食い込み、切り崩せるか。小笠原氏は、「電子シャッターがメカシャッターを追い越し、置き換えたら、カメラをより小型軽量に、高性能に、高速にできる。ここから真のデジタル時代が始まる」と自信を見せつつ結んだ。

(林利明)