秒速20連写と693点AFで被写体を逃がさない、ソニーが最上位ミラーレス一眼『α9』を米国発表

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ソニーが高級デジタル一眼カメラ『α9』(アルファ・ナイン)を発表しました。α7シリーズと同じEマウントのモデル。数年前より噂のあった、ソニーの最上位カメラがついに登場します。
米国での価格は4500ドル、発売日は5月25日。大手カメラ通販サイト「B&H Photo」では、4499ドルで予約受付中です。

特徴は、新開発のイメージセンサー。『サイバーショットRX100M5』や『Xperia XZ Premium』などに搭載されたDRAM積層技術を、2420万画素の35mmフルサイズ・裏面照射型タイプに搭載(もちろん世界初)。連写速度はAF有効時で最高20コマ/秒、オートフォーカス(AF)の測距点は693点、秒間60回動作という高速レスポンスを実現します。

【ギャラリー】ソニー 35mmフルサイズミラーレス一眼 α9 (34枚)



▲大手通販サイトB&Hの予約ページより(末尾にリンクあり)。なお2015年6月発表時、α7R IIの同店予約価格は3198ドルでした

本体サイズは126.9×95.6×63.0mm(幅×高さ×奥行)、重量は673g。現行のミラーレスαシリーズで最上位となるα7R IIが126.9×95.7×60.3mm、約625gのため、本体サイズはα7R IIとほぼ同一で、重量のみ50g増加といったところ。つまり、ほぼ変わりありません。




特徴となるイメージセンサーは『Exmor RS』ブランド、つまり裏面照射型CMOSです。最大の特徴となるDRAM積層とセンサー側の信号処理ユニットの回路規模拡大などにより、一般的なセンサーに比べ、画像処理エンジンへの信号速度を20倍高速化(公称値)。

さらに画素数を2420万に抑えたことなどにより(α7R IIでは約4240万)、最高連写速度は秒間20コマを実現。さらにこの速度をJPEG記録で362枚まで、RAW記録でも241枚までキープし続けます。

さらに撮影しながらでもオートフォーカス(AF)と自動露出(AE)動作は秒間60回を実現。またAFエリアは画面全体の93%をカバーし、測距点は693という、ヤケクソ感さえ漂う仕様。
実際の測距点配置は上写真のようになりますが、これを見たときに思わず笑ってしまったのは筆者だけではないと思います。

もちろん、フォーカス制御はソニー一押しの『4D FOCUS』。被写体に合わせて位相差方式とコントラスト方式の切り替えや、ファームウェアレベルでの高度な動体予測により、合焦時間自体も高速です。

こうした高速記録を活かすべく、電子シャッターモードも搭載。最高3万2000分の1秒の高速シャッターや高速連写、さらにはシャッター音なしでの撮影など、機械式シャッターでは難しい撮影にも対応します。

さらにイメージセンサーからの高速転送を活かし、高速移動する被写体に対する像のゆがみを防ぐ『アンチディストーションシャッター』仕様。ゴルフスイングなどで電子シャッターを使った際に起こりがちだったゆがみを防ぐとアピールします。

もちろん、α7 IIシリーズで評価の高い、ボディ内光学手ぶれ補正機能も搭載。5軸方向に対して5段相当の効果を発揮する、定評ある機能です。

画像処理エンジンはシリーズおなじみのBionz X。定評あるノイズ低減処理にイメージセンサー側の性能を加え、感度(ISO)設定は標準で100から51200、拡張設定では50から20万4800を実現します。

動画撮影はXAVC Sフォーマットによる4K/30fpsやフルHD/120fpsでの撮影が可能。このあたりはα7R IIなどと同一仕様ですが、AFの測距点の増加や高速化、SDカード側のUHS-II対応による高速化などにより、実働レベルでは動画撮影もより快適になっています。

有機ELパネル採用の電子ビューファインダーも、Quad VGA(1280×960)解像度に強化。α7RIIまでのXGA(1024×768)に対して画素密度を増加し、よりフォーカスが取りやすくなりました。さらにフレームレートは標準の60fpsに加え、高速モードとして120fps表示も可能です。

加えて電源オフからオン時のファインダー起動時間も高速化。α7R IIに比べて30%の速度アップをアピールします。

さらに液晶ディスプレイも144万画素(800×600)に高精細化。加えてタッチパネル化したことでタッチフォーカス機能が使えるようになりました(意外に思われるかもしれませんが、α7R IIまではタッチ非対応でした)。上下チルトにも対応し、上方向107度、下41度まで動きます。

バッテリーは従来モデル(NP-FW50)比で2.2倍の容量となる新型『NP-FZ100』を採用。1個で最高650枚(液晶使用時、ビューファインダーでは同480枚)の撮影を可能とします。さらに2本を搭載できる専用縦位置グリップもオプションで用意。

メモリーカードスロットは2基搭載。SDカード専用スロットとSD/メモリースティック兼用スロットという構成。また1基は高速転送規格「UHS-II」にも対応します。

操作形態では、α7シリーズユーザーからの希望が多かったマルチセレクター(押し込めるジョイスティック)を背面上部に新しく搭載。さらにボタン類も整理されており「AF-ON」などが追加されています。

また隠れた特徴はLANの仕様。Wi-Fiは2.4GHz帯/11b/g/nまでですが、FTPファイル転送用の有線LANコネクタまでも装備します(速度は現時点で不明)。

本体はα7R IIと同じマグネシウム合金ベースに加え、レンズマウントは固定ネジ数をα7R IIの4本から6本に増加させて剛性を増すなど、実使用時での耐久性にも配慮された機構。もちろん高級機だけあり、防塵、防滴に配慮した構造。ボタンやダイアルの隙間にシーリングを施しています。

さらに三脚取り付け時用として、温度による自動停止条件を緩める(=通常より高温状態でもシャットダウンさせない)モードも用意。高速連写を継続した場合や、4K動画を長時間撮影した場合に起こる、発熱による強制シャットダウンを緩和します。




このようにα9は、α7IIシリーズのコンパクトさをほぼ変えずに、プロスポーツなどでも使えるレベルの高速連写や動体追随性能などを盛り込んだ設計。画素数こそα7R IIに譲りますが、基本性能などではモデル名の通り、α7シリーズよりも一段高いレベルを発揮する「全部入り」的仕様が魅力です。

ソニー側としてもかなりの自信があるらしく、キャッチコピーの中には『The dawn of the true digital age』(真のデジタル[カメラ]時代への夜明け)や『A dream meets Technology,and a new camera is born』(夢が技術と出会い、新しいカメラが生まれた)など、かなりの自信が見えるフレーズを打ち出しています。

価格的にはおいそれと手が出るものではありませんが、昨今のデジタルカメラの技術を追ってきた方からすれば一度試してみたい、ワクワクするモデルであることは間違いありません。