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●フラー株式会社について教えてください
100万ダウンロードを超える数々のヒットアプリや、スマートフォンアプリ分析プラットフォーム「App Ape(アップエイプ)」を手掛け、創業当時からスマホアプリをドメインとして事業を展開するフラー株式会社。スマホアプリのスペシャリストである彼らに、スマホアプリの最新トレンドと、2017年1月にリリースされたばかりの新サービス「Joren(ジョーレン)」についてお話を聞いてきました。

まずは、自己紹介も踏まえて、フラー株式会社について教えてください。
渋谷さん(以下敬称略):フラー株式会社は2011年に茨城県つくば市で創業しました。創業当時からスマートフォンに事業ドメインを絞り、スマートフォンアプリ分析プラットフォームの「 App Ape 」 やWebサイトをアプリに変換する 「Joren」 を展開しています。
僕自身は高専でプログラミングを学んだ後に大学に編入し、4年生の頃にインターンをさせていただいた国内最大手インターネット企業にそのまま就職しました。そこで1年ほどマーケティング担当を務め、その後退職してから作ったのがフラー株式会社です。

藤原さん(以下敬称略):CTOの藤原です。全社の技術面を担当しています。渋谷の言うとおり、フラーはスマートフォンアプリ中心に事業を展開しており、自社アプリ開発、スマホアプリ分析、そして今はスマホアプリ開発支援のサービスを作っているところです。

岡本さん(以下敬称略):マーケティングを担当している岡本です。今プロモーションしている「Joren」というサービスは非エンジニア向けのサービスなので、社内の数少ない非エンジニアメンバーとして、その立場を活かしマーケティングをしています。

●存在感を増すブランド系アプリ
最近リリースされるアプリの傾向などはありますか?
渋谷: ネット専業ではない、一般的なサービスやブランドがアプリ展開をしているものが多く見受けられるようになりました。2015年から2016年にかけて、ストア上のアプリ数は3割程度増加(フラー株式会社調べ)しているのですが、増加したアプリを分類してみると、飲食やエンターテイメントなどネット専業以外の企業の自社アプリが目立っています。たとえば、丸亀製麺、ラウンドワン、コカコーラなどです。アプリ市場が、ネットやゲームの専業でない範囲まで広がってきていることが実感できます。フラーではその年を代表する、成長率の高かったアプリを表彰する「App Ape Award」というものを昨年開催しました。ゲーム部門とゲーム以外のアプリ部門の他に、そうしたアプリが多かったことから、ブランド部門というものも設けました。3年後には、ブランド部門をさらに細分化する必要が出てくると思います。

2017年のスマホアプリのトレンドを教えてください
渋谷:2017年は世の中にある様々なサービスのアプリシフトが進むと思います。それに伴い、これまで以上にスマホアプリを通した新しい体験が生まれ、それらを多くの人がキャッチアップして実際に使いだす、というのが大きな流れだと思います。実際にpaymoや、中国のアーリーペイなど、決済やNFC(※1)など新しい技術を活用したアプリがユーザー体験をどんどん変えていますよね。そういったスタートアップが開発した技術が、広く一般に広まっていくフェーズに突入しているのではないでしょうか。

また、動画ならAbemaTVやC CHANNEL、ECならメルカリといったように、元々世の中に存在したサービスがどんどんアプリにシフトしています。そうした動きは今後しばらくは続いて行くと思います。

そうしてあらゆるプレイヤーがアプリに参入してくると、突然変異のようなレアケースが起きたりします。例えば、GREEのプラットフォーム上で「ガチャ」が生まれた時のようにです。スマホにはまだ様々な使い方の可能性があって、「こんな使い方があったのか!」と核心をつくような新しい体験が生まれてくることは十分に考えられると思います。割と近いうちに、そうしたアプリがきっと出てきます。

※1:NFC(Near Field Communication)とは、「かざして通信」するための規格。 通信距離が10cm程度で、かざすだけで簡単にデータ通信が行える。

藤原:あらゆる既存のサービスがアプリシフトを遂げると、端的に、スマホがどんどん便利になると思います。回転寿司をチェーン展開するスシローのアプリがあるのですが、アプリから来店予約ができ、順番が近づくとプッシュ通知をしてくれます。アプリさえ使っていれば、もう店頭に並ばなくて良いのです。飲食店だけではなく、海外だと病院などもアプリシフトしていて、ユーザーは待ち時間を浪費せずに済むようになりました。これは大きなユーザー体験の変化だと思います。

渋谷:いずれ世の中のほとんどのサービスがアプリシフトして行くことは明確なのですが、私たちが提供する「Joren」によって、そのスピードをより早めていけると考えています。

●アプリ版WordPressを目指す
「Joren」とはどんなサービスなのですか?
渋谷:Webサイトのコンテンツ情報を元に、スマートフォンアプリを自動生成するサービスです。WebサイトのURLを指定し、「Joren」のダッシュボードからアプリのテンプレートやプライマリーカラーを選択し必要な項目を入力するだけ(※2)で、アプリのプレビュー確認ができます。

※2: 現在提供されているのはクローズドベータ版。申し込み後アプリ化の可否を判断してから変換プロセスに移る。

藤原:「Joren」の裏側では入力されたWebサイトのURLを元に、クローラーでコンテンツの情報を取得して、選択されたテンプレートに沿ってネイティブアプリを自動生成しています。1時間に1回の頻度でWebサイトをクローリングし最新情報を取得するので、Webサイトを更新すればアプリも自動で更新される仕組みです。アプリの基本機能としてホームボタン、検索、閲覧履歴、記事のお気に入り登録があり、それらを付けるか付けないかを選択できます。1タブのみオプションで付けられるようにし、そのタブ内のコンテンツを自由に作って頂けるような機能も開発中です。そこにクーポンなど、アプリ独自のコンテンツを盛り込んでいけるようにとも考えています。また広告配信の仕組みも導入予定で、アプリでのマネタイズも支援していきます。

岡本:とても便利だと好評なのが、作成されたアプリのApp StoreやGoogle Playへの自動ストア申請機能です。ストアへの申請はストアごとに入力する内容が異なるため、慣れない人にとってはかなり手間がかかります。そこで「Joren」は、ストア申請のハードルを下げるため、URL入力から最短で30分でストア申請をできるようにしました。万が一審査に落ちた場合でも、理由を英語から日本語に翻訳してユーザーに伝え、必要な修正を行ってから再申請することができます。

どんな人をターゲットにしているのでしょうか?
渋谷:Webサイトの運営者が全てターゲットだと考えています。サービスを開発するにあたって、最初のターゲットは アプリシフトへのニーズが高かったニュースやブログ といったコンテンツを持っているWebサイトに絞りました。

岡本:「Joren」は日本に先行して2016年7月に海外でリリースしたのですが、 約70か国から数千件のプロモーションページ経由での問い合わせ がありました。そこに登録されたサイトを一つひとつ確認して、どんなユーザーにニーズがあるのか、どういったコンテンツであればアプリにした際に意味のあるものにできるのかを検討しました。

藤原:問い合わせがあったものだけでなく、開発当初はありとあらゆるサイトを調査し、ニュース、EC、店舗、イベント、ブランドの5タイプ に分類しました。この5タイプで 世の中のWebサイトの7~8割はカバーできる と考えています。その第一弾として、現在はニュースタイプに対応しています。今後残り4つのタイプも順次リリースしていきます。

競合との差別化ポイントを教えてください。
渋谷:Webサイトを元にアプリを作れることが「Joren」のオリジナリティです。つまりWebサイトさえあればエンジニアもデザイナーも必要なくアプリが作れることが差別化ポイントになります。他社サービスはゼロからアプリを作るエンジニアリングを自動化しているだけのものが多く、メディア側にデザインの知識が必要だったり、コンテンツを入れ込む作業が発生したりしますが、「Joren」はそうした手間を一切かけずにアプリ運用ができる設計になっています。そうした背景から、ストア申請のお手伝いもしています。本当の意味で、"誰でも簡単にネイティブアプリを作れる"というのが「Joren」の最大の魅力です。

藤原:また、出来上がるアプリのクオリティの高さと出来上がるまでのスピードにも自信があります。 完全なネイティブアプリ なので、コンテンツをサクサク読み込みますし、画面操作時のなめらかな動作、いわゆる「ヌルヌル感」も非常に好評です。それを自動で生成するので、ご相談を受けながらその場でプレビュー確認をしていただくとその速さにとても驚かれるお客様も多いです。

今後「Joren」が目指していることを教えてください
渋谷:「Joren」はアプリ版WordPressのような役割りを目指しています。現在Webサイトは世の中に数十億と存在していますが、2003年頃はまだ100万サイトほどしかありませんでした。その頃ちょうどWordPressなどが出始めたタイミングで、そこから急激にWebサイトの数が伸び始めています。WordPressの出現によって、Webサイトの制作・管理・運用のハードルが下がったため、デザイナーやエンジニア以外の多くの人がWebサイトを作り出すきっかけになったんです。

「Joren」の 「誰でもアプリが作れる」という「誰でも」とは、本当にありとりとあらゆる人を想定しています。たとえば企業の広報さんや、居酒屋の店長さん、はたまた子育て中の専業主婦の方でもいいでしょう。現状、スマホアプリは200万個ほどしかなく、2003年当時のWebサイトと同じ状況です。WebサイトにおけるWordPressのように、今後1000万、1億、とアプリの数を増やすきっかけを「Joren」が担っていくことで、世の中のあらゆるサービスのアプリシフトのハードルを下げて行きたいです。そうすることで、スマホをより便利にし、ユーザー体験をより向上させて行けると考えています。

具体的には2017年のうちに「Joren」で1万のアプリを生み出したいと思っています。多くの人が使うことでノウハウが共有されやすくなり、利用者が多い事がサービスの価値になるという側面もあるので。しかし、単に数を作れば良いとは思っていません。価値のあるアプリを多く生み出した上で、その中で一つでも大成功するアプリを出すことの方が重要だと思っています。例えば記録的なDL数をたたき出したり、メディアの収益を倍増させたりといったアプリを「Joren」経由で作り出すことが、今の目標ですね。

最後に、メッセージをお願いします
渋谷:フラーに興味を持っていただけた方はぜひご連絡いただきたいです。僕らは誰よりもアプリに詳しいという自負をもってやらせてもらっているので、一緒にサービスを開発していただける方はぜひご連絡ください!また、フラーとコラボレーションしてみたいという企業の方もご連絡頂きたいです。「Joren」自体もリリースしたばかりですし、「App Ape」もまだまだ開発したい機能が沢山あります。一緒に最高品質のサービスを世界に発信していきましょう!

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本稿は、fluct magazineに掲載された記事を転載したものです。