近年、災害への教訓として、防災用持ち出し袋を家庭にキープしている方も増えたと思います。ところが、一般規格の防災用持ち出し袋だけでは、年齢や性別、体の状態によっては不十分だったりします。

例えば、視力の矯正が必要な人は、絶対に眼鏡が欠かせませんし、腰や膝に不安のある人はサポーターなしでは歩行が厳しいでしょう。また、常備薬が必要な人も入れておかねばなりません。
あくまでも、自分の基準で、「これがなくなったら日常の行動が難しい」というものがある人は、スペアを防災用持ち出し袋に入れておくようにしましょう。特にメガネなどは視力の変化もありますし、薬品も使用期限がありますので、定期的にスペアを交換するのも忘れてはいけません。

しかし、ここまでやるのは、防災への備えとしてはごく当たり前のこと。大事なのは、日常生活の物選びでも防災への目線を常に忘れずにいることです。



例えば、「防災をもっとオシャレでわかりやすく」をコンセプトに、防災を広める団体として活動している「一般社団法人防災ガール」の代表理事・田中美咲さんによれば、「ヒールではなくスニーカーにすることも避難しやすくなるという意味では防災ですし、他にもシリコン製の電球やお皿も、割れにくいという点で防災。タンスも縦型ではなく横型で低いものにすることも、倒れてきにくくするという意味では防災です!」とのこと。

なるほど! 防災用品と名付けられた商品を買い込むことだけが防災ではないですよね。防災目線を持ち、その視点から日常の身の回りの品を選んでいく。そこが大事なのですね。

そして、「一般社団法人防災ガール」の公式サイトに掲載されたコラムによれば、なんと大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』にも、防災用品として優れ物のインテリアが登場しているのだとか……!
皆さん、どのインテリアだかわかりますか? 恋ダンスのVTRで、星野源さん演じる平匡さんが「営みの街が暮れたら色めき〜」で、ペラっとめくっている本型のランプです。
いかにもオシャレなこのアイテム、どう見ても防災とは無縁なデザイン性重視の商品に思えますが、「防災ガール」によれば、この正体は「Lumiosf(ルミオエスエフ)」という商品。本を開くと自動的に電源が入り、ライトが点灯。表紙を閉じれば消灯する仕組みで、フル充電で7〜8時間点灯が可能なんだとか。充電式なので、手軽に持ち運べて様々な場所で使うこともできるし、停電が起きても、ひと晩はつけっぱなしでも過ごせそう。「防災グッズになりうる仕様」とレコメンドされています。

「Lumiosf(ルミオエスエフ)」(アークトレーディング)



さらに、「Lumiosf(ルミオエスエフ)」より小型サイズなのに同じ機能を搭載しているのが「mini Lumio+(ミニ・ルミオプラス)」。なんとこちらは、スマートフォンへの充電まで出来るんだとか!

「mini Lumio+(ミニ・ルミオプラス)」(アークトレーディング)



目からウロコな感じがしますね。防災グッズ=機能性重視、デザイン性とかはあきらめなきゃ……と考えるのではなく、もっと柔軟に、「防災時にはこう使えるかな」と考えてみる発想の転換があれば、いざ被災時にも、色々な身の回りの品を使えるような気がします。

また、同コラムで紹介されている、被災女性の声から生まれた防災セット「小町」は、布ナプキンをはじめ、女性に必要な防災アイテムが10種類入っているという防災グッズ。
発災時に生理用品で苦労した女性たちについては一部で報道もされましたが、まだまだ男性の理解は低いので、こういう防災セットは女性にとっては心強いですね。また、後回しにされがちなメンタルケアを配慮したアイマスク(熟睡や精神の安定に効果的)が入っているのも細やかな思いやりを感じさせます。

女性の防災セット「小町」(ループラス)



防災用品と身構えずに、少しずつ家の中を防災仕様にしていくには、100円ショップも侮れません。
家具の転倒防止・破損防止用品はばっちり揃っていますし、使い捨てても惜しくない下着類も購入できます。100円の方位磁石やホイッスルなどは、家族でひとつずつ持っていても無駄にはなりません。
その他、軍手、ろうそく、頭から煙よけにかぶるビニール袋なども、防災用品として購入すると高めだったりしますが、品質の良いものをワンセット揃えつつも、何かの予備に100均で購入した物を持っていても損ではないでしょう。被災の状況によっては、非常用持ち出し袋を保管場所に取りに行けない状況になることもあるからです。複数の非常用持ち出し袋を2ヵ所に分けて置いておけば安心ですね。

「防災意識」と固く身構えることなく、防災への敷居を低くして、安く、手軽に、そしてオシャレに防災グッズを家庭に増やしていくことができれば、いざと言うときに自分の身を守ることになるのではないでしょうか。

文/ガンガーラ田津美

取材協力
一般社団法人防災ガール
http://bosai-girl.com/ http://bosai-girl.com/